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3-11 降る星の剣

 

 

 トワの発情期が終わり、ダンジョン生活へと戻ろうと思ったが、忘れていた用事を思い出した。

 

 

「あ!ネジャロさんの武器!」

 

 

 そう。現在もネジャロの武器は、トワが作った石の大槌と棍棒。

 

 第一ダンジョンと、トワがいない間、男子だけで潜っていた第四ダンジョンでは通用するが、第三ダンジョンの巨大魔物には通用しない。

 

 

 ダンジョンの稼ぎも十分なため、本当ならもっと前に購入する予定だった。

 

 ただ、それはトワの発情期が始まってしまったため、すっかり忘れられていたのだ。

 

 

 というわけで、今日は四人全員で鍛冶屋に来ている。

 

 

「てな訳でな、第三のどデカいヤツらをぶった切れる、どデカい剣が欲しいんだよ」

 

「…………」

 

 

 ネジャロが欲しい剣の要望を伝えたおじちゃんは、とても無口だ。

 

 売り場から適当な大剣を数本持ってくると、ネジャロに渡し、振ってみろと言う。

 

 

「ダメだな、軽すぎる。こんなんじゃライオネルスネークの鱗すら剥げねぇよ」

 

 

 試しにトワも振ってみようとするが、持ち上げるだけで腕がプルプルするくらい重かった。

 

 ――そういえば、大槌もいつの間にか片手で振り回してるし、旅の間でどんだけ強くなったのこの人……

 

 

 旅の間やダンジョンでの戦闘。

 

 これらを経て、ネジャロは、出会った当初からは比べ物にならないほどに力をつけているのだ。

 

 

 渡される剣はどんどんと重くなってゆき、遂に鍛冶屋のおじちゃんの手元から剣が無くなる。

 

 

 ちなみに、トワは二本目から持ち上げることすらできなかった。

 

 

「……来い」

 

 

 無口なおじちゃんに、店の奥へと通される。

 

 そこには、真っ黒な刃の、二メートル程もある一振のどデカい剣が置かれていた。

 

 

「……持ってみろ」

 

 

 そう言うおじちゃんは、その剣に触れることはなく、振ってみろではなく、持ってみろと言った。

 

 

 床に置かれた剣の柄を握る。

 

 初めは片手で。

 

 しかし、その重量に気づいたネジャロは、ハッとした顔になり、両腕に力を込めて持ち上げた。

 

 

「重い……!すっげー重い!」

 

 

 それでも、しっかりとした姿勢で振ることができている。

 

 

「……合格だ。その剣をやる。

 材質は星。俺の師匠が鍛えてから、ずっとここで埃をかぶってたものだ。

 金は要らん」

 

 

 初めて長文を喋ってくれたおじちゃんに詳しく聞いてみる。

 

 曰く、剣の素材は降ってきた星。

 

 70年ほど前に、おじちゃんの師匠が何人もの鍛冶師と合同で鍛え上げたが、重すぎて、使いこなせるものが誰一人いなかったらしい。

 

 

「銘は〈流星剣・シュヴァルツ〉。

 その剣で、頂きまで上り詰めてほしい」

 

「ハッ任せろ!すぐにでも伝説を創ってきてやる」

 

 

 無愛想だった鍛冶屋のおじちゃんは、店を出る時には笑みを浮かべていた。

 

 

「よし!早速ダンジョンに行こうぜ!」

 

「それじゃあ、僕とベルテは留守番だ。気をつけて行っておいで」

 

 

 アランは目標に定めた橙銀級となり、ダンジョンからは退くことになっている。

 

 ダンジョン貴族として、下級貴族と同程度の扱いを受けられるようになったので満足みたいだ。

 

 

「お嬢様、お気をつけて」

 

 

 いつも通り、ただダンジョンに行くだけなのに、何故か強く抱きしめられた。

 

 

「大丈夫ですよ。魔物共は私に触れることすらできませんから」

 

「それでも!何かあったら、とても辛いです……」

 

 

 無限に生み出される異界の護り(アナザーバリア)を破れる魔物はいないと思うが、それでも心配なようだ。

 

 気をつけるから大丈夫と抱きしめ返してやり、ようやく離してくれた。

 

 

 ――ベルテさん、こんなに心配性だったかな?

 

 

 アランと、いつもと様子が違うベルテと別れ、トワとネジャロは第三ダンジョンへと向かって行った。

 

 

 

 ◇◆◇

 

「こりゃサイコーだな!」

 

 

 石の大槌では、なかなかダメージを与えられず苦戦していたが、シュヴァルツを振るえば一撃だ。

 

 巨大だろうと頑丈な骨だろうと、ツルツルとした鱗だろうと、その重すぎる刃は止められない。

 

 

 シュヴァルツを握ったネジャロは、生き生きと巨大魔物を屠っている。

 

 

「ふー、狩った狩った。お嬢は何してんだ?」

 

 

 ネジャロが暴れている一方、トワは第三ダンジョンにいる先客の様子を観ていた。

 

 

「いえ、珍しく冒険者、というかどこかの国の騎士たちがいるんですよ」

 

 

 知らない紋章が刻まれた、八人の人族、魔族の混成騎士団。

 

 せっかくなので、国を護る騎士たちがどの程度なのか見ておこうというわけだ。

 

 

 騎士たちの目指す先の部屋には、一体のトロル。

 

 トロルを発見した騎士たちは、一斉に散開し、ぐるりと周りを取り囲む。

 

 

 360度、全てが敵となったトロルは、取り敢えず目の前の騎士を攻撃しようとするが、背後から一撃を受け、体制を崩した。

 

 今度は攻撃してきた騎士に反撃しようとするが、また背後から攻撃を食らう。

 

 ―― 一撃の威力は弱いけど、チームワークはなかなかかな。

 

 

 騎士たちは取り囲んだトロルを、常に背後から攻撃し続ける。

 

 何人か反撃を受け、負傷するも、幸い死ぬことはなく、五分にもなる戦いは騎士たちの勝利で終わった。

 

 

 こんなものなのかと、立ち上がり、尚も暴れているネジャロと合流する。

 

 

「お、どうだったんだ?他国の騎士の力は?」

 

「んー。微妙ですね。

 何人か魔法を使っていましたが、それさえ気をつければ、ネジャロ一人でも勝てると思いますよ」

 

 

 そう。チームワーク以前に、一人一人が大して強くない。

 

 今のネジャロなら一撃で倒せるトロルを、八人で五分以上かけているのだ。

 

 

 本気じゃないという可能性もあるが、例えば二匹を相手にするなら、全滅するんじゃなかろうか。

 

 ――そうそう二匹とかはねー。ん?

 

 

 負傷者を治療し終わった騎士たちは、奥に進んでゆく。

 

 その先では、ライオネルスネークとジャイアントシューヴァが、縄張り争い的なことをしていた。

 

 

「さっきの騎士たちが、二匹の魔物と戦うことになりそうですね」

 

「勝てんのか?トロル相手に苦戦してんだろ?」

 

「んー……」

 

 

 騎士たちは斥候も出さずにダンジョンを進んでいる。

 

 このまま行けば間違いなく、全員で突っ込むことになるだろう。

 

 

 ひとまず、様子をみることにする。

 

 そして、予想通りに二体の魔物とかち合った。

 

 

 どうやって戦うのかと思って見ているが、選んだのは逃走のようだ。

 

 しかし、ジャイアントシューヴァの水撃を受け、何人かの騎士が吹っ飛ばされる。

 

 

「あー、これはダメそうですね。助けに行ってあげましょうか」

 

「任せろ!オレの相手は飛んでない奴な」

 

 

 ネジャロがライオネルスネーク。

 

 トワがジャイアントシューヴァを狩ると分担し、騎士たちの近くの通路に転移(テレポート)した。

 

 

 

 

小さい頃、地元の博物館で隕石を触りましたが、小さいのに持ち上げられないほど重かったです。


宇宙って凄いなと思いました。(๑•̀ω-)و。*

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