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スマイル08 ケーキ作りに挑戦





「あ――――っ、痛ってぇ!! この俺様をブッ叩くとか、マジありえねー女だな、お前!」





 結局ブツブツ言いながら、また商店街の買出しにつき合わされている、俺。

 何でこんなに振り回されてんだよ!


 絶対絶対、ぜ――ったい、手に入れてやるからな!


 メッチャメチャのグッチャグチャにして、王雅様赦して下さいって、ヒーヒー言わせてやる!


 あー、それにしても左頬、マジ痛ぇ。

 コイツ、握力一万はあるな。女じゃねえよ。


「今日はアンタに、ケーキの役割っていうのを教えてあげる。・・・・今日ね、リョウ君が五歳の誕生日なの。施設のお金のやりくりじゃ、どうしてもプレゼントを買う余裕が無いから、クラブで少しでも働いて、貰ったお給料でラジコンのひとつでも買ってあげたかったんだけど・・・・クラブの仕事はやっぱり私には向いてなくて、結局すぐ辞めちゃったわ。でも、良く考えたら、アンタのせいよね。災難だったわ」


「俺も災難だ」


 水はかけられるわ、ビンタされるわ、振り回されるわ、散々だ!

 

「でも、アンタって義理堅いのね。リョウ君に貰ったコロッケの恩、しっかり感じてるし、お金持ちのクセに、庶民のコロッケ美味しいって食べるし」


 そう言って、ミューは嬉しそうに笑った。






 ドキン






――な、何だ?



 ドキン?

 オイオイ!

 ドキンドキンしてるぞ、俺の心臓!


 俺はどうも、コイツのコロッケ笑顔に弱いらしい。

 何故か胸がきゅーってなって、今すぐ押し倒したくなるから、意味が解らん。

 昨日食べたコロッケに、実は何かの毒が入ってたんじゃねーのか、とさえ疑いたくなる。


「それより王様、手が空いてるならコレ持ってよ」


「王雅でいーよ」


「呼び名、大王の方がしっくりくるわね」


「ハアっ!? 何で大王なんだよ!! やめろよ、その呼び方!」


 王様はまだしも、大王とかいうと、カメハメ大王とか言うヤツを思い出す。


 ん? ハメハメだったか?


 ハメでもカメでもいーけど、ま、どうせならハメだな。

 この女を、俺の×××にハメる。


 よし。



 って、違うっつーの!!



「じゃ、王雅って呼んであげるから、コレ持って」


 さっき買ったばかりの、パンパンに物が詰まったスーパーの袋を手渡された。

 ずしん、と重みが右腕に落ちる。


「うわっ、重!! 俺、箸より重いもの持ったことねーんだけどっ! こんなの召使の仕事だろっ!!」


「じゃ、大王って呼ぶけど?」


「う・・・・わ、解ったよ! 持てばいーんだろっ、持てば!!」



 本当にありえねーくらい王雅様使いが荒い女だな!

 信じられん。

 しかもこの俺様が、肝心の施設立ち退き話が出来ないなんて・・・・相当手強いヤツだな。 初めてだ。こんなのは。

 何とか良い方法を考えねば。




 結局重い荷物を施設まで運ばされ、ヒマなら子供達と遊んでて、とキッチンを追い出された。

 ヒマじゃねーっつーの!!

 お前が俺の話を聞かねーから、帰るに帰れねーんだよっ、ボケ!!


 


「お兄さん、お兄さん」



 ツインテールのガキ(えっと、名前は確かリカだ)が俺を手招きしている。「ちょっとお手伝いして欲しいの。リョウ君に内緒で」


「あぁ? 手伝い?」


 ココのヤツ等は、王雅様使いの荒い連中ばっかりだな!

 ミュー仕込みか?


「ウン。飾りつけしたいんだけど、私達小さいから届かなくて困っているの。お兄さん背が高いし、上まで手が届くよね? お願い、手伝って下さい」


 礼儀正しく頭を下げられたので、仕方なくリカから飾り付けを受け取ると、食堂まで引っ張ってこられた。そして、折り紙で作ったカラフルなチェーンを壁に貼り付けるよう言われたので、その通りしてやった。「コレでいいか?」


「有難う、お兄さん!」


 リカは嬉しそうに笑って、ボッチャン刈りのガキの方へ走っていった。「ガックン、出来たよ! お兄さんが手伝ってくれたの!!」


 ガックンとやらが俺の方にやって来た。「お兄さん、このお花も一緒に飾ってもらっていいですか?」


 全く次から次へと!

 結局ガキ共にいいように使われて、部屋の飾り付けを全部やってしまった、俺。

 何でこんなに俺様がコキ使われなきゃいけねーんだ!!

 人を使うことはあっても、使われる事なんて、今まで一度だってなかったんだぞ!!




 あ――――――――ッ、クソっっ!!




 メチャクチャ腹立ってきた!!




 一触即発、という時に、ミューが俺を呼んでいるからキッチンに来て欲しい、とガキに言われた。



 ミュー!!

 もう絶対赦さねーからな!!



 キッチンにずかずか入っていくと、ふんわりケーキの甘い匂いが漂っている。そして笑顔のミューが居た。「あ、ハイこれ。折角だからアンタもやってみなさいよ。そこでちゃんと手を洗ってからね」


 生クリームが入った大きなボウルを手渡された。


「ナンだよ、コレ」


「見て解るでしょ。生クリームよ」


「俺にどーしろってんだよ」


「そこのスポンジケーキに塗って。綺麗にお願いね。見本、見せてあげる」


 ミューは慣れた手つきで、ケーキベラでスポンジに綺麗に生クリームを塗りつけていく。



「何だ、そんなの。俺様にだって簡単にできるっつーの。見てろ。天才が手ほどきを見せてやる」


 手を洗ってボウルを受け取り、生クリームをたっぷりヘラに乗せて、ミューの真似をしてベチャリとケーキに塗りつけた。



 ・・・・あれ?



 っかしーな。


 何か思ってたより上手く塗れねーぞ。

 スポンジの上でクリームがあちこちボコボコ山を作っている。

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


次の更新は、7/1 18時です。

毎日0時・12時・18時更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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