スマイル07 俺の話を聞け!
次の日。
俺はまた、例のマサキ施設にやって来た。
大体この俺様が負けっぱなしでいるわけにはいかねぇ。
何としても、この施設を潰す!
そしてミューに土下座して謝らせる。
処女も、貰う。
それに、昨日はサルガキ(リョウって名前だったよーな気がする)に恵んで貰ったコロッケの恩がある。
俺は、借りは作らない主義だ。貸しは作りまくって、何倍にもして返して欲しいタイプだからな。
だから、特別にプロの菓子職人に作らせた、デラックススーパー・シェリーノエルを持ってきた。
ブラックチェリーをふんだんに使い、チョコレートでコーティングした、オトナなケーキ。
超高級品で、マダムも大絶賛!
貧乏人にはとても買えない、目玉が飛び出るくらいの値段がついたケーキだ。有難く思え。
俺が施設の門から中を覗くと、遊具で遊んでいたサルガキと目があった。「あっ、お兄さんだぁ!」
ヤツは大声で叫び、俺の方に向かってやって来た。
「いらっしゃい、お兄さん! ミュー先生にご用ですか?」
「ああ。昨日のコロッケの礼だ。お前にやる」
サルガキにケーキを渡すと、うわーっ、すごーい、お兄さんありがとう、とメチャクチャ喜んで俺の手を掴み、一目散に施設の中に走っていった。
「ミュー先生っ、ミュー先生!! お兄さんがお土産くれたよーっ!!」
仕事部屋で書類の整理をしていたミューが顔を上げた。「リョウ君、どうしたの? あら、貴方・・・・」
俺の顔を見て、嫌そうな顔をするミュー。
オイ!!
人の顔を見てイキナリ嫌そうな顔をするな!!
「リョウ君、良かったね。お兄さんにちゃんとお礼、言った?」
「ウン! 言った!! 先生、開けてもいい?」
「いいわよ。後でみんなで分けて食べようね」
サルガキ――リョウに微笑みかけるミューは本当にカワイイのに、どうして俺様を見る時だけあからさまに嫌そうな顔になるんだよっ!
腹立つ――――!!
「あれーっ、ミュー先生・・・・」
リョウが残念そうな顔をしてケーキの箱の中を覗き込んだ。「コレじゃ小さくて、みんなと分けれないよ・・・・」
リョウはうーん、と考えて、ケーキの箱をミューに差し出した。「先生にあげる! 僕はいいよ。みんなで食べれないなら、僕はいい。でも、何時も先生は僕達の為にいっぱい我慢してくれてるから、コレ食べて! みんなには内緒だよっ」
リョウは、お兄さん有難うございました、と丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。
ミューは俺の方を見て、はあ、とため息をついた。
「お土産は有難いけど、皆で食べれなきゃ意味無いわ。返す」
「バカヤロー! そのケーキ幾らすると思ってんだ!! それに、それは・・・・そう、リョウってヤツに貰ったコロッケの礼だ! あんな庶民の食べ物を恵んで貰ったとなれば、櫻井グループの次期社長の名誉にも関わる。だからだな・・・・」
「それで? 今日は何の用? あと、コレ折角だけど返しておくわ。子供達が食べないのに、私だけ食べれないから」
また話を途中で遮られた上、俺様が折角用意してやった高級ケーキをつき返された。
この・・・・クソアマ。
絶対赦さん!!
「用事無いの? 無いなら帰ってよね」更に、冷たくあしらわれた。
「用事はある! 施設立ち退き・・・・」
「しつこい男、キライなの」
「だーっ!! 俺の話を聞けっ!!」
そういや、俺の話を聞けー 二分だけでもいいー、なんて歌、あったな。
クレイジーケンバンドの、タイガー&ドラゴンが俺の頭でBGMと化した。
いや、そんなことはどうでもいいんだ。
言っとくけど、俺の話は二分じゃすまねえぞ。
何せここではとても言えないような、×××や×××でお仕置きだからな。
「もー、煩い。それより、ヒマなら一緒に買出しにでも行く? つき合わせてあげてもいいわよ」
「誰が行くか!!」
しかも上から目線で、俺様に向かってものを言うな!
「あっそう。じゃ、帰ってよね。これからケーキ焼かなきゃいけないんだから、私忙しいの」
「ケーキならココにあるじゃねーか! この俺様がわざわざ持ってきてやったんだ!! 有難く受け取って、食え!」
「バカじゃないの。こんな量じゃ足りないって言ってんのよ! 子供達大勢居るのに、そんな事も解んないの?」
「バッ・・・・」
バカ、だと?
この俺様を、バカ、だと?
もう赦せねぇ!!
「お前、あんまナメた口きいてると、ホンキでシメるぞ」
ミューの身体を押さえつけ、強引に唇を奪おうとした俺の左頬に強烈なビンタが飛んできたのは、言うまでも無い。
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