スマイル05 オムライスとコロッケ
結局俺はアイツに無理矢理持たされた戦利品の御馳走を持ったまま、あちこち付き合わされた。
そんで、施設に帰って来た。戻ると、どっから沸いて来たんだよっつー位の数のガキがわらわらと現れて、俺達を取り囲んだ。
「お帰りなさーい!!」
一斉に挨拶された。
まるで、ヤ〇ザの親分の帰りを歓迎する舎弟の様だ。
「はーい、みんなただいま! 今日の特売、ちゃんと買えたよ!」ミューが俺には見せてくれた事も無い様な笑顔を湛えて言うと、ガキ共が、ヤッター、と大騒ぎ。
何だ?
俺が持たされてる戦利品とやらは、何が入っているんだ?
・・・・気になる。
「皆、お腹空いたでしょ? ゴメンねっ、すぐご飯にするから、お手伝いお願いね!」
ミューはアイツ等と共に施設の中に消えて行く。
「ちょっとー、アンタも来なさいよー!」声だけが施設から聞こえて来た。
何かガキ共より扱い悪くね?
俺様がガキ以下って事かよ!? ムカツクな!!
「お兄さん、早く早くー!」
ツインテールのガキと、坊ちゃん刈りのガキが俺を迎えに来た。
背中を押され、手を握られて拉致られる。
「ミュー先生、お兄さん連れて来たよー!」
「有難う」ミューが二人に向かって微笑んだ。「じゃあ、皆でスプーン用意してくれる? お兄さんから包み受け取って、こっちにお願い」
施設の食堂の椅子に案内され、座らされた。
「お兄さん、はい、どうぞ! お買い物手伝ってくれて、有難うございました」
スプーンを手渡され、ボッチャン刈りのガキに礼を言われた。「あ、あぁ、別に。アイツに無理矢理持たされてただけだし」
つーかさ。
何で俺、こんなトコに座ってんだ?
俺はコイツ等を追い払いに来たんだ!
「――オイっ、俺は・・・・」
立ち上がって話を続けようと思ったら、ミューや他のガキ共が皿を持ってやって来た。
皿の上には、オムライスとコロッケが乗っている。
手分けしてそれぞれ同じものが一斉に配られ、大きなテーブルはオムライスとコロッケの乗った皿で埋め尽くされた。
「さぁ、皆で食べましょう! もう、手は洗いましたか?」
「はーい!」
「それでは今日も、楽しく生きている事と美味しいご飯が食べられる事に感謝して・・・・いただききます」
「いただきまーす!!」
全員きちんと両手を揃えて、神様ありがとうございます、と一礼した後、おもむろに貧相な昼食を食べ始める。
「お兄さん、ちゃんと『いただきます』して、神様にお祈りしなきゃダメなんだよ」
天然パーマが掛かったチリチリ頭――サルみたいなガキが、黙ってこの場を見つめている俺に説教を始めた。「ミュー先生のオムライス、美味しいんだよ! お兄さんも一緒に食べよう。ご飯は皆で食べたら、もっともっと美味しいんだよ!」
「あ、ああ・・・・」
流石の俺も、ガキに向かって反論するのも気が引けたから、仕方なくあいつ等の真似をして祈るフリをした。
――ミュー、俺様に跪け、跪け×∞
そんで、俺のものになれ、なれ、なーれ×∞・・・・
神なんて信じた事も無いこの俺様が、神に向かって祈るワケない。
俺はミューに思念が届くように願いを込めた。
つーか、俺が神だ。
だから、他のモノに祈っても仕方ない。
全部実力と権力と金で何でも出来るんだ。
そういう世の中なんだからな。
「はい、よく出来ました。もう食べてもいいですよ」サルガキが俺にOKサインを出す。
オイ、なんでこの俺様が、お前に仕切られなきゃいけねーんだ。
この施設追い出したら、痛い目見させてやる。
それまでは我慢だ。
俺ってエライな。こんな屈辱、普通耐えらんねーぜ。
ガキがじっと見つめてるから、仕方なくオムライスを食べる事にする。
一口食べると、ふんわりとした半熟卵の優しい味と、それに絡み合うデミグラスソースの絶妙な味わいが、俺の舌を刺激した。
美味い。
「お兄さん、美味しいでしょ」
「ああ、美味いな。どこのシェフが作ったんだ?」
「シェフ? えーっと、作ったのは、ミュー先生だよ! 美味しいでしょ? 今日はコロッケの特売日だから、オムライスが食べれるんだ! ずっと楽しみにしてたんだ~! あぁ~、美味しいっ」
サルガキがオムライスのご飯粒を口にくっつけたまま、満面の笑みを零した。
うん、味はいい。
高級レストランで食べれるオムライスより、美味いかもしれない。
で、あとコロッケだな。
よし、そのコロッケとやらも食ってやろう。
そう思って皿のドコを見ても、俺の皿にコロッケは乗ってない。
っつーか、よく見ると他のガキ共のオムライスの皿にはコロッケ乗ってるのに、俺様の皿には乗ってねーじゃねーか!!
差別?
この俺様を?
あ・り・え・ね――――っ!!
「おい、ミュー。俺様の皿にコロッケがねーぞ」
別にコロッケなんかどーでもいいけど、差別された事に腹が立った。
普通、この俺が優先だろ?
「仕方ないでしょ。アンタがつまらない話を持ってきて私を足止めさせるから、子供たちの分しかコロッケ買えなかったのよ」
そういうミューの皿にもコロッケが乗ってない。
するとさっきのサルガキがコロッケを半分に切って、俺の皿に置いた。「お兄さん、僕の半分あげるよ」
するとミューの隣に座っていたツインテールのガキも「先生、私の半分あげる」と言って、ミューの皿に置いた。
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