悪夢の宴
夢あるある。へんな状況でも納得する
視界は歪み、だんだん意識が朦朧としていった。
はずだった。
覚醒は急だった。
突然、冷や水を浴びせられたように意識が戻った。
生きてる……生きてるぞ!
嘘だろ、あの状態から生き残ったのか。俺。
ここは……病院か?
誰だ助けてくれたのか?
最初はそんなことを考えたが目の前に広がるのはコンクリートとも石とも予想のつかないグレーの何かだった。
それが壁、床、天井を覆っている。
死体安置室か?
……まさか。
奥には薄暗い廊下が見えるそんな部屋にいた。
インテリアも何もない殺風景な部屋に一人いた。
「――URUUUOO……(なんだここ)」
不気味な唸り声が近くから聞こえた。
後ろを見るが何もいない。
だがさっきのように隠れているのかもしれない。
悍ましい化け物が出てきたらどうしよう。内心おずきながらも声を張り上げる。
「――GRRAAAA!!!(くそ!出て来いブチ殺してやる!!!」
脳裏に浮かぶあの不快な笑い声。苦しみ、怒り、痛み。その全てがマグマのように湧き上がり口からは獣のような声が出た。
怒りは収まらない何もかも壊してしまいたい。そんな衝動に駆られ壁を殴りつける。
いくら殴りつけても壊れない壁に怒りは増す。怒りの連鎖は憎しみに変わり身体からはドロドロとした何か吹き出した。
それは全身を覆い尽くす。
口はない。タール状の黒くてらてらとした半液体状の身体は泡がぽこぽこと湧き上がっていた。
それが恐ろしくはなかった。まるで元から自分がこのような姿だったかのように今の形に納得していた。
自らの姿を確認すると段々と湧き上がるぶつけようのない怒りは収まっていったがかわりに破壊したいという衝動に駆られた。
何か破壊できそうなものがある。
歩みを進めるたびにずりずりと何かをするような音が耳に届いた。だがそれは体がスライムのようなものに変わったからであり、おかしなことではない。と納得した。
先程の化け物のような声が自分の声だと気づき、急に勇ましく愛おしいように感じてきた。
ドアのない部屋の入り口から廊下へ出ると右と左に続いているようだった。
気配は感じない。だが何処かに何かがいるような気がした。
人間だった時に比べて重くなった体を引きずり進んで行く。どうなっているかわからないがとりあえず左から行ってみることにした。
廊下の角を曲がると部屋があった。
気配はない。中を覗くがないもない。
その隣にも部屋がある。だが同じく何もない。廊下は少し奥まであるようで次の曲がり角までに3部屋見えた。
だがいずれものぞいて見るが最初にいた部屋と変わらず何もない。
また角を曲がってみると今度は3部屋しかなかった。左から最初の廊下が1部屋、次が5部屋、その次が3部屋だ。
だが3部屋のうち手前の部屋には錆びた金属製の扉があった。
ドアノブはなく鍵穴と何かが廊下側あげようと殴ったような跡があった。
開かないのだろうか。少し探ってみよう。そう考えて手を伸ばそうとして自分には手がないことに気づいた。
「――ARUU……」
(破壊したい、粉々にしたい、バラバラにしたい)
気づいた時には身体から生えた無数の触手が棘のように鋭く硬化し分厚い金属の扉を穴だらけにしていた。
蝶番も壊れたのかギリギリと擦れる音がして扉が外れる。
中には武器があった。
沢山の武器と沢山の防具。そのどれもが人型の生き物ように作られているように見えた。
中はモゾモゾと動く影があった。
「ひっ……!?い、ぃいぃぃぃぃ!!!!!」
俺の姿を見てまるで怪物を見てしまった化のような反応をする人間。
なんて失礼なやつだろうか。
だから安心するような笑みを浮かべるが人間は転がり落ちるように奥へ逃げる。
――パンッ!パンッ!パンッ!
腰から取り出した拳銃を何度も打つ人間。反響して乾いたような音がした。
撃った6発の弾丸は狂いもなく体に撃ち込まれたがいずれもスライムのような体内にするりと取り込んだ。
鉛玉も悪くない。
つぶつぶしていて中々いい食感だ。
人間だったころには味わえない感覚だ。
せっかく人間がいたので話を聞こうと近づくとそいつは手当たり次第の武器を投げつけてきた。
全て体に刺さったが反対側から飛び出すことはなく体内に消えていった。
壁まで追い詰めた人間は何だかわからないがジタバタと暴れる。
少し鬱陶しいので押さえ込もうと身体から伸ばした触手で手を掴む。
「あ、ァ!熱い!寒い!焼ける!爛れる!苦しい!寒い!ああ!――ァあ、アアァああああ!!!!!」
叫びながら身体を激しく震わし、熱い、寒いと真逆のことを叫ぶ。
「ヤダ!ヤダャダやたぁぁああぁ!?パパ、だすけて、ママ怖いぁあァアああ!!」
40歳くらいに見えた人間は子供のように泣き叫んだ。
人間が悲鳴をあげる姿が無性に愉快で身体が不形態に揺れる。
「――僕が無くなる、嫌だよ、こんなの嫌だよぁ、神さま神さま神さま!助けて!神さま!!!!」
血走った目で神に祈りを捧げる人間はおかしなほど身体を揺らし口からは黒い液体がポタポタとこぼれ落ちてゆく。
「――パパ――――マ――」
その言葉を最後に人間は石のような見た目へ変わりそして灰のように突然型をぐしゃりと崩した。
人間を殺したというのに愉快だった。
悲鳴をもっと聞きたい。
次はもっと工夫できる。
人間を殺す。それは素晴らしいことだ。 そう納得し――
――ようとした瞬間、グイッと何かに手を引っ張られるような感覚とともに視界は白い光で満たされた。
雑談
評価やブクマありがとうございます。
☆5……うれしい。素直に嬉しい。
今まで書いてきた作品なんですけどね、だいたい5万文字くらい書くと☆4〜4.5くらいになるんですよ。つまり☆5をつけていた人は最初につけてくれていて☆4をつけた人は話が進むにつれつけているって事なんですよね……つまり、展開が☆5をつけられないような少し期待はずれだったってことですよね。
はぁ……難しいなあ。何がいけないんだろ(弱音)
誰かに身近な人に評価されたわけじゃないんですけど、毎回ブックマークはつくし評価も100ptくらいは余裕でつくので多分文書の内容は悪くないんだとは自己分析ができているんですがなんなんでしょうね?ストーリーが見えてこないとか、そういうことなんでしょうか……。
以前、一度もやったことのないレトロゲーをテーマに小説を書いた時に小さいweb賞ですけど、取れたんですよ。
その時に、内容は面白いけどここから話が終わるのが全く見えてこないと言われてしまって、それっきり更新してないんですよ……(笑)
ああ、特にこの話に落ちはなくて単なる雑談でした。
以上。
次回も更新します