第4話~二条咲
第4話です
(このまえの金髪のやつ……)
ドアをくぐってきたのは、壮馬が刺されたときに助けた金髪の女子だ。
「やっぱ美人だよな……っとそろそろ時間だわ。また遊びに来るからよ」
須賀が手を振って壮馬の席を離れる。それと入れ替わりに金髪の女子が俺の席に鞄を下ろした。
(えー後ろの席かよ……)
……俺も不愛想かもしれないが、この女子もなかなか不愛想に見える。見たところ、他の女子におはようと言われても挨拶を返すだけでニコリともしない、心なしか彼女の周りに冷たいオーラまで漂って見える。氷だ。
(やべっ……)
金髪の女子がちらちらとこちらを見ている。
もし今話しかけられたら一気に教室中の視線を浴びることになる。せっかく誰も自分のことに気が付いていないのに全部が無駄になってしまう。
しれっとした感じで体を前に向けて筆記用具を準備する。
「そんじゃあ席についてー。出席とんぞー」
鐘がなるとほぼ同じくらいに黒縁の眼鏡をかけた女の先生が入ってきた。
後ろからの物音も消えたし、なんかうまい具合にごまかせたみたいだ。
「青井楓……一式純一……」
廊下側の列から出席番号順に名前が呼ばれていく。
「成神壮馬」
「はい」
次は……。
「二条咲」
「はい」
自分に続いて、後ろの金髪女子が返事をする。
(二条咲……か)
見た目はギャルみたいだがキャピキャピした様子は見られない。それどころか静かで落ち着いたような印象だ。
「それじゃあプリントを回してくれー」
一通り出席確認が終わると、座席が前の人からプリントを配られた。
プリントを貰い、そのまま体を翻す。
「……はい」
プリントを渡すと、二条はこちらを見向きもせず、何も言わず、不愛想に受け取った。
(あ、これ普通に気づいていないやつだ)
それはそれで少し寂しいが、これで静かな日々が確立したのは確かだ。
入学式の日、厄介なことに巻き込まれて平穏な日々が過ぎ去ったと思われたが、神様は俺に一匹狼でいるという選択肢を照らしてくれているようだ。
「そーうーま君、一緒にかーえーろー」
「げ……」
授業が終わり、帰りのホームルームを終えた壮馬は足早に下駄箱へと向かった。
なぜ一目散に教室を飛び出したか。答えは二つ。一つは早く帰りたいから。二つ目はこいつ。
「げってなんだよげぇって」
「そもそも俺に近づかないでって言ったじゃん」
「なら俺も壮馬に興味があるって言ったじゃん」
「あのなー……」
一体何なんだこいつは。今までの人生で、こんなに自分に寄って来る奴はいなかったからどう接していいのかわからない。
「だって、一週間前女子高生を守ってケガしたってやつ、壮馬だろ?」
想定外のことを言われてドキッとする。
「なにそれ知らねーな」
「とぼけんなって。俺結構目はいいんだよねー色んな意味で」
クラスのやつらは気づいている感じはなかったのに。そういえば俺が教室に入ってから一番最初に声をかけてきたのも須賀だった。
「ちょっと眼鏡借りるぜ」
「あ、ちょっと」
須賀が近づいてきて一瞬にして眼鏡を奪われる。
「そんで前髪を上げて……っと。ほら、やっぱりイケメンだ。目ぇ怖えけど」
「なっ……」
慌てて須賀の手を振り払って咄嗟に目を隠す。
「なんで目隠すん? そういえば、話すときも中々顔見てくんないよな。しかもこれよく見たら伊達眼鏡だし」
……人のコンプレックスをこいつはベラベラと。
「ちょっと今日は早く帰んないといけないから!」
「あっ、ちょ、待てっ!」
伊達眼鏡を奪い返し全速力のダッシュで校門を抜ける。
(なんなんだあいつは)
今の感情が俺にはわからない。好意的に話しかけられて戸惑っている気持ち、はたまた嬉しい気持ちなのか。
いや、冷静に考えればわかるだろ。迷惑な気持ちだ。
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