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4話 猫の道案内

「あら、かわいい!」


「ほんと!かわいいわね!」


「おお!モフネコがぁっ!」


「おおー、よしよし!!」


 店を追い出され、少し歩くと、あっという間に人垣に囲まれた。


「ボクの頭を勝手に触るな!」


「お?コイツ、威嚇してるぜ?」


「お前は動物によく嫌われるよなぁ」


 どっと笑いが上がる中、ボクの心情はかなり沸騰していた。


「だから、こんなのやりたくなかったんだ!」


 怒りの矛先は、こんな目に会わせたご主人に向けられる。


「くっそ〜っ!!…かっ!あ!あふぅ…!」


 怒りを顕にすると、急に力が抜けた。


「ほらほら、ここか?ここがええのんか?」


「この子、喉をこしょこしょしたら急にうっとりしちゃった」


 さらに笑いが吹き上がった。


「くっ…!喉は…!の、喉は…!や、やめ!やめて〜ッ!!」


「あははは!喉鳴らして、気持ち良さそう!」


 くそっ!コイツらボクの言う事聞かねぇ!


 そもそも、なんでこのボクが、人間如き下等生物に懐柔されてるんだ?


 あぁ〜もう、早くこの場から離れないと!


 ボクは人々の手の隙きをついて、ササッと抜け出す。


「ああ、ネコちゃん!」


 ネコちゃんじゃない!


 ボクはモスだ!


 お前らなんか、一瞬で消し炭にして…!?


 魔法を使うためにエナを練り上げようとした時。


「あら?このネコちゃん、よく見たら看板ぶら下げてるじゃない?」


「あ、ホントだ!」


「アリアファーマ?」


「ああ、2週間くらい前に開店した道具屋さんね!」


「ああ、この先の!」


「え?そんなとこあんの?」


「どこどこ?」


「こんなかわいいネコが居るなら、今度、ちょっと行ってみるか?」


「そうだな!」


 ちっ!


 コイツらもご主人の客になるのか。


 命拾いしたな、人間風情が。


 それにしても、人語が話せないのは、めちゃくちゃ歯痒い。


 いい加減、ご主人に盟約の条件を少し緩めてもらおう。


 だけと、この先も同じ事を繰り返すのが見え見えだよね。


 …


 …


 …


 …そうだ。


 コイツら連れて、一旦店に戻ろう。


 少しでも時間稼ぎして、なるべく街を歩かない方向で。


 コイツらを案内して来たと言えば、ご主人もボクの御手柄として認めてくれるんじゃないかな?


「にや〜お」


 人間にはこんな声にしか聞こえないだろうけど、本当は「お前らボクに付き従え」って言ってるんだよね。


「お?コイツ、なんか訴えてるみたいだぜ?」


 おい、「コイツ」じゃねぇよ。モス様と呼べよ。


「付いて来てって言ってるみたい!」


 ちっ!言葉が通じない!


「あたし、まだ時間があるから、せっかくだから付いて行こうかな?」


 …ま、結果オーライかな?


「わたしも、わたしも!」


「じゃあおれも行こっかな!」


 おっ?


 結構な数じゃん。


 これなら本当に御手柄だよね。


 じゃ、ボクが連れてってやるか。


「おー、歩き出したぞ?」


「かわいい!」


「行こ行こ!」


 …7人か。


 魔物の世界では不吉な数字だな。


 でも、ボクはそんな迷信は信じない。


 これで、今晩のご飯はゲットだね!


 ふん、ふふ〜ん♪





「おお〜、ここかぁ!」


「なんかお洒落だね〜」


「雰囲気良いじゃん!」


「おれ、マジで知らなかったわー」


「こんなトコにこんな店ができてたなんてなぁ」


 お店の外装や内装は、ご主人がかなり気合い入れてこだわってたからなぁ。


 これだけ褒められたら、ご主人も喜ぶな。


「よし、じゃあ入って見るか?」


 男がそう言った時だった。


 バンッ!!


 カラカラカランカランッ!


 扉が勢い良く開いて、中から目を輝かせたご主人が。


「いらっしゃいませ!!」


 万遍の笑顔で迎え入れた。


「さあ、どうぞどうぞ!」


 手で中へ催促するご主人。


「きやー!かわいい!!」


「おおーーーっ!!」


「えっ!?」


 あーらら。


 ご主人もかわいいとか言われて、顔を赤くしてるよ。


「店主の娘さんかなぁ?」


「店主さんって、もしかしてカッコいいおじ様!?」


 女子達の輝く目。


 期待度はかなり上がってるね。


「い、いえ、この店はあたしがやってるんです」


 なに!?


 その恥じらいはなに!?


 ご主人、そんなかわいい所、ボクには微塵も見せないじゃない!?


「えーっ!?すごーい!」


「こんな、私達と同じくらいの歳で、一人でお店を経営してるの!?」


「すげーな!」


「き、キミ!名前は!?」


 ご主人の人気がとてつもなく跳ね上がっていく。


 店の中は見なくていいのかな?


「あたし、こう見えて歳は結構上なんですよ」


 ニコニコと話すご主人。


 けど、周りの客達は、凍りついていた。


 風が一吹き通り抜ける。


 今、男子の何人かは、「年増かーっ!」って残念がってるんだろうなぁ。


「あれ?皆さん?」


「あ、ああ!そ、そうだ、店の中を見させてもらおう!」


「あー、そっか!そうだよな!」


「でも、店長さん、すごく若く見えてステキ!」


 中にはこんな女子も居るよね。


「店長さん…」


 年上に恋心開いちゃう男子も。


 兎にも角にも、この日に顧客が増えたのは確かだった。



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