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神様の愛し子  作者: 九稲
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閑話3〈ルドヴィック視点〉

カワイイさん=愛し子、という意味合いです。

愛し子という言葉もこの世界にはありますが、どちらかというと神聖な意味合いを含むので、一般的に愛おしむ時はカワイイさんという言葉が使われています。

響きが可愛いですよね、カワイイさん…。



「さて、どうやって連れ帰るかだが…まぁ、抱えて帰るしかねぇわなぁ」


とにかくさっさと砦に連れ帰って魔力封印を施さねぇと、ミツキの体に負担がかかる。

スピード重視っつったら、あいつになるわなぁ…

だがいくら速いっつっても性格に難があんだよな。

ミツキを怯えさせたくもねぇし…



「る、るど、わたしあるけりゅよ…!」



そんなことを悶々と考えていると、何を勘違いしたのかミツキが心配そうに声を上げた。

こいつは…俺が子供1人抱えたくらいでどうにかなるわけねぇのに、また変な気使いやがって。


「ちび、またなんかくだらねぇこと考えてんだろ。ったく、ガキがいらん心配すんなっつーに…

安心しろ、抱えはするが移動は徒歩じゃねぇよ」



不安は残るが、まぁ、なんかミツキなら平気な気がしてきたわ。そうと決まればさっさと呼びださねぇとな。


不思議そうに首をかしげるミツキを心の中で愛でつつ、魔力を高めて空を仰ぐ。









「来たれ神獣、我が名において神界の門を開け

召喚(サモン)、スレイプニル」









召喚口上を述べると同時に、木漏れ日の降り注ぐ空が俺の放出した魔力でどんどんと霞んで行く。

神界の門が開き、天から落ちてきた一筋の光が眼前の地面を貫いた。





「…おうましゃん?」





ミツキが目の前に現れた神獣を見て何かぼそりと呟いたが、その瞳に恐怖はない。むしろきらきらと嬉しそうに輝いていて…






あーー、天使。俺のちびマジ天使。カワイイさん。






しかし驚いた。神獣だからこそ気位の高いロゼリアがこんな反応するなんてな…何考えてんだ?害そうっていう気配は感じないが、いつもとは違うロゼリアに違和感を感じる。


そんな俺の微妙な視線をガン無視して、ロゼリアはミツキにゆっくりと近寄り覗き込むように首を下げた。



「おうましゃ、いいこ」



ミツキはニコニコと嬉しそうにロゼリアの頬を撫で、ロゼリアも幸せそうに目を細めた。

ミツキを見るロゼリアの目に慈愛の色が乗っているのが見えて、思わず口から言葉が漏れた。



「嘘だろ、ロゼリアが懐いた…!?」





…お前、ロゼリア。俺と初めて会った時は後ろ足で蹴飛ばそうとしてきたくせに、大違いじゃねぇか…

まぁ、ミツキは可愛いからな。気持ちはわからんでもないが…気位の高さはどこ行ったんだよ、神獣サマよぉ。









しばらくロゼリアの毛並みを堪能して満足したのか、ミツキがハッと俺の方を見上げてきた。



「るど、おうましゃんにのるの?」

「おうましゃ?…ああ、ロゼリアのことか。

こいつは神獣スレイプニルだ。普通の馬とはちと違ぇが、まぁそうだな。

ロゼリアに騎乗して砦に帰る」

「ろぜりあ、よろしくね!」


ミツキが嬉しそうにロゼリアに笑いかけると、ブルッと短く返事を返して、鼻の頭で柔らかなミツキの頬を撫でた。おいおい、お前本格的に母親化してねぇか…?




「…言いたいこたぁ色々あるが、暗くなる前に森を抜ける方が優先だ。ミツキ、しっかり掴まってろよ」


とにかく話は砦に帰ってからだ。ミツキを抱えたままロゼリアに跨り、落ちないように片手で支えつつ風除けと守りの結界を張る。

俺1人の時はこんなもん張らねぇが、強い風は小せぇミツキにはキツイだろうし、万が一落っこちないようにっつーのもある。



「うし、行くぞ」


声をかけるとロゼリアがゆっくりと駆け出す。いつもはすぐさま空へと最大スピードで駆け出すが、今回はミツキに気を使ってるらしく徐々にスピードが上がっていく。

どこまでもミツキを特別扱いするロゼリアに呆れりゃいいのか褒めりゃいいのか…主人に似たのか…?




「うぉー、はやーい!」


キャッキャとはしゃぐミツキに癒されていると、何かに気づいたミツキが慌てたような声を上げた。



「る、るど、るど!おそらとんでりゅの!?」

「あん?ちび、お前空中移動する騎獣に乗ったのは初めてなのか?

スレイプニルは空を駆ける。ま、周りに結界が張ってあるから落っこちゃしねぇよ」



はしゃいでいたミツキだったが、しばらくすると体から力が完全に抜けてくたりと寄りかかってきた。全体重をかけられてるはずなのに軽すぎる…子供っつーのはこんなに軽いもんなのか…!?

だめだ、心配だ。砦に帰ったらたらふく食べさせてやんねぇと…


じんわりと上がっていくミツキの体温を感じて、あぁ、眠いのかと1人納得する。



「我慢すんな、ミツキ。ついたら起こしてやるよ」





少しでも安心して寝られるように優しく背中を撫でると、瞼は完全に閉じきって、小せぇ寝息が聞こえた。











「おやすみ、俺のカワイイさん」









幸せそうに眠るミツキの顔を見て、どうかいい夢を、と願って小さく声をかけた。






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