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お久しぶりです。投稿をお休みしている間もじわじわと評価やブックマークが増えていて、驚きと喜びを隠せません…!
投稿頻度を上げるのは難しいですが、これからもゆっくりと投稿していきますので、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
「んもーー、そんな怖い顔してもただ絵になるだけよ?今の貴方、その辺の国のお姫様すら堕とせそうな色男になっちゃってるもの」
不機嫌さを隠そうともせずに鋭い眼光で隊員さんたちを睨むルドに対して、ベルさんはこてんと可愛らしく首を傾げて唇を尖らせた。
あ、ベルさんの一連の仕草でルドの眉間の皺がますます深くなっちゃった…そんなルドを見てもベルさんはどこ吹く風だけど。
「るど、しゅっっごくかっこいーね!!
いちゅもかっこいーけどね、あのね、いまのるどはおひめしゃまをまもるきししゃんみたいね!」
2人のやりとりを見てちょっと我に返った私もルドのこの姿には大大大満足なので、ベルさんに続いて全力で思いの丈をルドにぶつけた。
「騎士…?あぁ、なるほどな。」
私の言葉にちょっとだけ笑ってくれたルドは、何を思ったのか私の正面で片膝をつき、真剣な表情で私の顔を覗き込んだ。
「ひょ!?」
「ま、姫さんが喜んでくれるってんならこの格好も悪かぁねぇな」
一瞬何が起きたのか分からなくて混乱している私の耳に小さく笑うルドの声が聞こえたかと思うと、そっと手を取られ、右手の甲に柔らかな熱が落ちた。
「我が愛しき姫君に忠誠を」
じわじわと右手の甲から熱が伝わって、身体中の体温を上げていく。
「ミツキも最高に似合ってんぜ、俺のお姫さん」
そう言って目を細めたルドは、悪戯が成功した子供のように楽しそうに笑った。
「ひぁ…」
「……ぶっ、ふっ…あっはっは!!顔がリンゴみたいだぜ、ミツキ」
金魚みたいに口をパクパクするしかできない私を見てルドが耐えきれずに声をあげたけれど、私としてはそれどころじゃなくてですね!?
っていうか今のなんですかねルドさんや!?反則じゃありませんこと!!??
かっこよさ天元突破して一瞬宇宙が見えましたけど!!????
「…あらやだ、珍しいもの見ちゃったわぁ。ルドヴィックってばそんな顔もできたの?いつもの粗暴さのその字もなかったじゃない」
「騎士っつったら大体あんな感じだろ。自分でやって寒気したが…ま、姫さんは気にいってくれたみてぇだな」
「ぅぐ…もーしにゃくていいでしゅ…」
「うふふ、ミツキちゃんにはちょっと刺激が強かったみたいね」
優しく笑ってくれるベルさんの後ろにとりあえず隠れながら、ぱたぱたと顔を仰いで体の熱を下げる。
ギャップ萌えどころの話じゃないんですわ…はーー、ただでさえ顔面偏差値の暴力なのに追加要素与えてくるのはダメじゃないですかね!そこんとこどうですか、審判!?
「るどはちゅみなおとこだね…」
「ぶはっ!!!」
遠い目をしてボソリと呟けば、私が盾にしていたベルさんが吹き出した。なぜだ。
そのままツボに入ったのか笑い続けるベルさんをよそに、隊員さんたちが満足げな顔で着替えの手伝いを申し出てくれたのですぐさまお願いした。
元のワイルドなルドに戻っておくれ!私の精神のために!!
着替えも終わり私の精神も安定したところで、まだちょっと笑いすぎて涙目なベルさんがお茶を用意してくれた。
柑橘系の香りがふわりと鼻をくすぐる。ここのお茶ってどれも美味しいなぁ…あっ、今回のお菓子はアーモンドクッキーなんですね!!?わーい、これも管理塔部隊さん達のお手製かなぁ??
「はー、久々にこんなに笑ったわ」
「どうでもいいが、お前仕事はいいのか?ラーナがスランプがどうだの言ってたが」
「あら、聞いたの?そうなのよねぇ、スランプとはちょっと違うんだけど…」
頬に手を当てて色っぽいため息を吐いたベルさんは、ちょっと困ったようにルドを見た。
そんな姿も様になるってすごいなぁ、なんて思いつつクッキーをぱくり。ふぉっ、美味しい!
ちょっとルドに呆れた目線を送られたけど気づかないふり!
「正確には、作りたいものがありすぎて仕事に身が入らない、ってとこね」
「あ?どういうことだ?」
「それが…」
少し俯いたベルさんの瞳に、横に流した髪の一房がはらりと堕ちた。少し影になった表情が見えづらくて、怪訝そうに聞いていたルドの表情も固くなる。
「ミツキちゃんの服のアイデアが止まらないのよぉ!仕事中にもぽんぽん出てくるものだから、アタシも自分の才能に困っちゃって」
てへっ♡なんて擬音がつきそうなくらい軽い感じで笑うベルさんを見て、ルドは無言で立ち上がると私を抱えてドアへと向かった。
えっ、3枚目に手を出そうとしたから怒っちゃった!?
「あーーん呆れないでぇ!?」
「うるせぇ帰る。人を着せ替え人形にする暇があんなら仕事しやがれ」
「わかってるわよぉ。ひとまず今回で製作欲は満たされたし、ちゃんと仕事もするわ。
だからまた遊びに来てくれてもいいのよ〜!」
「誰が来るか!…ったく、人騒がせな野郎だな」
…と思ったら、ベルさんに呆れただけだったみたいで、仕事しろと釘を刺しながら服飾部屋を後にした。
ぶつぶつと文句を言いながらもどこかほっとしたような顔をしてるルドを見て、やっぱり砦のみんなは仲良しだなぁ、なんてちょっと嬉しくなったのは内緒。
ちなみに帰る時にベルさんがクッキーの残りを包んで渡してくれたけど、夕飯入らなくなんぞってルドに没収をくらいました。やっぱり3枚は許されなかった!




