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「ミツキ、君の魔力は特別だ」
魔力研修も終わって無事魔力が引き出せたことを確認した後、ウキウキと魔法の授業が始まるのを待っていた私にエドさんはその綺麗な顔に少しの困惑を乗せ、告げた。
「…とくべつ?」
どういうことだろうと首を傾げれば、リューにヒョイっと抱えられ、ソファへと運ばれて座らされる。
そして目の前にお茶とお菓子が。ふわりと香る紅茶の香りが鼻をくすぐる。
…至れり尽くせりぃ…。
そのまま私の横にリューが座り、対面にエドさんが腰を下ろした。
「ミツキ、魔力とは本来、魔力研修によって引き出された後ではないと周囲に影響を及ぼすことはできない。
ミツキは確かに魔力の引き出しはされていなかったし、魔素の循環も不安定な状態だった。
つまり、今の今まで魔力研修は受けたことはないはずだ」
「…えっと、うん」
ここまではいいか?と聞かれ、とりあえずは理解できたと頷く。
この体がここまで成長してきた期間の記憶は私にはないから、絶対受けてないなんて言えないけど…でも、引き出されてなかったってことは受けてないってことだよね?
「しかしミツキの魔力は、引き出す前の状態で周囲に影響を及ぼしていた」
あれぇ。
そういえば、総部隊長さんへの報告の時にルドがそんなこと言ってた気が…森の急成長とか、魔物の進化とか。
でも私の魔力は今引き出されたばっかりのはず。
というか引き出す前に封印もされちゃってるんですが、それは…?
「えどしゃん、まりょくふーいんは?ひきだすまえにしちゃったけど…」
疑問を口にしてみれば、エドさんが小さく頷きつつ紅茶のカップを口へと運ぶ。
その一挙一動がとても様になっておりますね、一枚の絵かな???
美しすぎるわ!
「ミツキの魔力が多すぎて、引き出す前からすでに漏れ出ていたということは説明したな?
奥底に眠っているはずの魔力が、容量の制限を超えて体外へと漏れ出す事例はごく稀にある。
その漏れ出た過剰な魔力を圧縮し、再び奥底へと封印するために行ったのが魔力封印だ。
そして今回の魔力研修で、封印しなかった魔力を引き出し、魔法の使用を可能にした」
エドさんの説明をふんふんと聞きつつ、お茶菓子のクッキーをパクリ。
おっ、バニラ味!はちゃめちゃにうますぎでは、、、、!
ここのお茶菓子もやっぱりラーナさんや管理塔部隊員さんたちのお手製なのかな??
すっごく美味しいし、レシピ聞いたら教えてくれたりしないかなぁ…
ほろほろサクッとな口触りのクッキーを堪能していると、ちょっとエドさんにジト目で見られた。夢中になりすぎていたみたい、反省。
「…まぁ、我々もなぜ魔力を引き出す前の君の魔力が周囲に影響を及ぼせたのかはわからない。
愛し子だからか、はたまた別の理由か…
それはまた調べてみるが、今はミツキの魔力は特別だ、と言うことだけは覚えておいてほしい」
若干呆れつつもそう言い終えると、エドさんは再び紅茶を口に含んで喉を潤す。
まさかの魔法塔部隊長であるエドさんにすらわからない私の魔力…えぇ、これから魔法使うのによくわかんないままなの??
もし、もしも…私の魔法が誰かを傷つけたら、なんて考えたら背筋がゾッとした。
やっぱり魔法、使わないほうがいいのかな…?
確かに楽しみにしてたけど、ここにいるみんなを傷つけちゃうくらいならそんな力いらない。
もともと持ってなかったしね、使えなくったって問題はない。
ちょっと不安が顔に出てしまったのか、私を見たエドさんが少し困ったように苦笑し、優しい手つきで頬を撫でてくれる。
「大丈夫だ、不思議とミツキの魔力から嫌な感覚はしないからな。きっと誰かを傷つけることもない。
私の勘は当たる、信じろ」
「…是。我、守護」
「えどしゃん…りゅーも、ありがと、でしゅ」
2人して優しい瞳で笑ってくれるものだから、不安なんてどっかに飛んでっちゃった私はなんて現金なんでしょう。
でも、なんの根拠のない言葉だったとしても…すごく嬉しかったから。
2人の優しさに癒されてへらりと笑い返したら、安心したようにまた笑い返してくれた。
美形お二人の微笑み、プライスレスです。




