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神様の愛し子  作者: 九稲
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3

おはようございます!

やっぱり森です!

そして小さいです!



「まあ、しょうだよねぇ…」



夢オチ期待したんだけどなぁ。





とりあえず起き抜けに昨日の残りの果物をカプリ。

うーん、美味しい。


さて、今日も今日とて歩こうと思います。

とにかく人に会いたいんだよぅ!

自分以外の誰かに会って安心したいんだよぅ!


精神がだんだん体の年齢に引っ張られてるのか、寂しさや不安で今にも泣き出してしまいそうになるのを必死に堪える。

おかしいなぁ、私我慢は得意だったはずなんだけど。

じんわりと目尻に涙が浮かぶけど、泣かない。

泣かないったら、泣かないんだから!


「っ、ふぅ…なか、ないもん…」


声に出して自分を叱咤するけど、涙はとまってくれなくて。

大きな雫が目からこぼれ落ちそうになった時だった。



ガサガサッ



「ひゃっ!?」


脇の茂みが揺れ、音にびっくりして体が跳ねた。



「な、ふぇ…なぁに…?だ、れか…いりゅの?」


震える声で問いかけるも、返事は返ってこない。

それでも揺れ続ける茂みから、獣のような唸り声が聞こえた。

どう考えたって友好的じゃない雰囲気に、ガタガタと体が震えだす。



怖い、怖い、怖い怖い怖い!



ガサリ、と茂みをかき分け姿を現したのは、鋭い牙からよだれを滴らせた灰色の狼だった。

真っ赤な目がジッとこちらを見つめ、爛々と輝いている。


「ひぇ…、こ、こんにちはぁ?」


だいぶ頭が混乱していたせいか、狼さんに挨拶をしてしまった。返事?返ってくるわけないじゃんね!

いや、唸られたから一応返ってはきたのかな?

ああダメだ。怖すぎて意味わかんないこと考えてる自覚ある…!


ジリジリと後ずさりながらも、目は狼から離せない。

目を離した瞬間に襲われる、そんな感じがとてもする!


「わ、わたし、たべてもおいしくないでしゅ!」


なんてね!そんなこと言ってみたけど、私今プニプニでもちもちの子供だからね!さぞ美味しそうでしょうよ!


狼はそんな私の言葉なんてガン無視でゆっくりと距離を詰めてくる。

完璧に獲物認定されておりますね、これ。

あんな牙で噛まれたら、柔らかいこの体なんてイチコロだ。

転生したと思ったらすぐ死亡フラグとか!

神様ってばどれだけ私のこといじめたいの!?


距離を詰めてきていた狼が口を大きく開け、こちらに飛びかかろうと身を低くしたのを見て、喉の奥が引きつった。



「やっ…!だれか、たしゅけて…っ!」



どうしようもなくなって、恐怖でギュと目を瞑って叫んだ時だった。



「動くな!!」



一際大きな声が響いたのと同時に、突然突風が背中側から押し寄せてきて、思わず転びそうになる。


「ふぉおっ?」


…ちょっと間抜けな声が出たけど、聞かなかったことにしてほしい…。

ぎゅっとその場で身を固くしていたけど、くるはずの衝撃がいつまで経っても来ない。

それに、さっきの声…

突風もいつの間にか止んでいたので、そっと目を開けると





「…大丈夫か?」





狼がいたはずの場所には、いつの間にか大きな男の人が立っていた。




真っ赤な髪を後ろでくくっていて、少し短めだからかぴょこっと尻尾のようになっている。

ジッとこちらを見つめる瞳も髪と同じ真紅の瞳で、まるでルビーのようだ。

体つきはがっしりしていて、服装は…軍服に近い、かな。

黒に金の刺繍が入った、とてもシンプルなものだ。

だからこそ最大限にこの人の魅力を引き出してる気がするけど。



それにしても…この人のお顔の造形、整いすぎでは…??

美形というか、ワイルド系のイケおじ感が半端じゃないんだけど…!

しかも軍服て!軍服て!!最高ですやん!!!????

いやー、これは目の保養ですわぁ。

イケメンもここまでくると最早神様だよねぇ…恋愛対象?いやいや、イケメンは遠くから見て楽しむものだから!



「おい?どうした、どっか痛むのか?」

「っ!」


おっと、いけないいけない。

稀に見る美形さんだったので思わずまじまじと観察してしまったよ。

っていうか声まで低くて心地いい声してますのねん…

とりあえず心配してくれてるみたいだし、何か言わないと!




「ぅあ、だ、いじょうっ…」



大丈夫、そう言おうとしたのだけど。

助かったことに安堵したと同時に、恐怖から固まっていた体から力が抜けて、へたりとその場に座り込んでしまった。


怖かった、怖かったんだ。すごく。


今更おっきな恐怖が追ってきて、今までの不安も重なって瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。

あ、だめだ、とまんない。



「お、おい、泣くな!やっぱりどっか痛えのか?どこだ?見た感じでけぇ傷はねぇけど…

ああ、泣くなって!そんな泣いたらその綺麗な目ん玉おっこっちまうぞ」

「…ん、ふふ」

「っ!」


際限なく涙をこぼす私に焦る男の人がなんだか可笑しくて、思わず笑ってしまった。

笑った私を見てひとまずは安心したらしい。

男の人にふわりと抱き上げられて、顔を覗き込まれた。


「お前さん、なんでこんな森の中にいるんだ?親はどうした」


うーん、それは私が聞きたいよ?


「…わかんにゃ、い」


小さくこぼした言葉と一緒に、また大粒の涙がポロリと落ちた。

ほんとにね、私はなんでこんなとこにいるんだろうね…

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