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神様の愛し子  作者: 九稲
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「まぁぶっちゃけここにいる奴らは自由気ままに生きてっから、仕事さえすりゃあ何してても基本自由だ」

「じゆー…」

「それが俺たちにとって一番大事なことだからな。種族だのなんだの言われる場所よりかは断然生きやすいんだよ、ここは」


そう言って目を細めたルドは、なんだか少しだけ誇らしげだった。

きっと砦部隊のことが大好きなんだろうな。

そう思うと私もすごく嬉しくなった。




「わたしもとりでぶたい、しゅきよー」



私みたいなちびっ子をあったかく受け入れてくれたみんなが大好きだよ!

そう言ってニパッと笑えば、ルドが嬉しそうに頭を撫でてくれた。

むふ、もっと撫でてくれても構わんよ?

気持ちよくて自分からもルドの手に頭を押し付ければ、頭上からルドの楽しそうな笑い声が聞こえた。




「…そろそろ昼飯の時間だな。食堂行って飯食ったら、次は魔法塔行くぞ」

「ごはんー!」



壁に掛けてある時計を見ると、いい感じにお昼の時間。

やったー、ラーナさんのご飯だー!って意気揚々と万歳した瞬間、それに合わせたかのようにお腹も喜びの声を上げた。




ぐぎゅーー!!





「……」

「…っ、ふ、くく」





スッと万歳した両手を静かにおろして喜びの声を上げたお腹を抑えると、後ろの方で篭ったような堪えた声が聞こえた。


もう思いっきり笑えばいいじゃん…。

真顔を作ろうとして失敗してるから変な顔になってるし、肩震えてるの見えてるし…!




「るどのばか…」

「あーー、悪かった!俺が悪かったから、な?機嫌直せってミツキ〜!

おら、ダッシュで食堂向かってやっからな?今日の昼飯はなんだろなァ?」



ボソリと恨みがましく呟けば、慌てたルドが私を抱きかかえて甘い声であやしてきた。

ふんだ!そんな風にご機嫌とりしたって今更遅いんだかんね!



プイッとそっぽを向いた私だったけど、足早に向かった食堂から漂う美味しそうな匂いにすぐさま敗北した。

ちょろいと罵ってくれて構わない!この美味しそうな匂いの前では私は無力だ!!




「お、昼飯はミルク煮か。美味そうな匂いすんな」

「ごはんー!」

「機嫌直ったか?持ってきてやっから座って待ってな」



ルドに床に降ろされて机の方を指されたので、おとなしく頷く。

おっけー席取りは任せろ!美味しいミルク煮待ってます!!




てこてこと角の方の席へと向かうけど、お昼時なのでとにかく人がすごい。

あっ、足元失礼しま〜す!ちっこいの通りますよ〜踏まないでね!!


隊員さん達の足を掻き分けながらもようやく席へとたどり着き、椅子へよじ登るとはふぅと無意識に詰めていた息を吐いた。


はぁーー、踏み潰されるかと思った。

砦の隊員さんたちは基本ガタイがいい人が多いというか、背が高い人が多いというか…ちびには優しくない世界だよ…!





「あれぇ、ミツキだぁ。1人なの?ルドヴィックはー?」


突然上から降ってきた声に驚いて視線を上げれば、キラキラ王子様フェイスが眼前にあった。


「っ、ふぇり!…びっくりしたぁ」



不意打ちのキラキラは駄目でしょ!?

こっちはいまだにここの高級顔面偏差値に慣れてないんだから!

ドアップとか心臓止まるわ!



「ごめんごめんー、ミツキが1人だったから気になっちゃって」

「るどはごはんとりにいったのー」

「あ、そっか。ミツキじゃ持てないもんねぇ」


こぼしそうだよね、なんて笑いながらフェリが私の前の席に腰掛ける。

お昼時なのにフェリは手ぶらだ。あれ?フェリはご飯食べないのかな?


ご飯は?って聞こうとした時、フェリと私の隣の席に人影ができ、4人分の食事の乗ったお盆が机に置かれた。



「すみません、お待たせしました。途中でルドヴィックさんに会ったのでご一緒にと思って誘ったんですが、お2人とも一緒にいたんですね」

「フェリスタードと待ってたのか」


リョシュア先生とルドが私達を見て合流する手間が省けたと頷き、私達は私達で置かれた食事に釘付けだった。


「腹減ってんだろ?さっさと食おうぜ」

「そうですね、冷める前にいただきましょう」



2人が席に着いたのを確認してから、私はウキウキで手を合わせた。


「いちゃだきましゅ!」


やったーご飯だー!私用に食べやすいよう小さく切られた野菜やお肉達がゴロゴロとはいった具沢山のミルク煮。

ふんわり香るミルクの香りもたまりませんなぁ!

一口頬張るごとに、美味しすぎて思わず頬を抑えて悶えてしまう。

美味しいよー、幸せだよー!

幸せに浸りながら一心不乱に頬張っていると、ものすごく視線を感じることに気づいた。



顔を上げると、フェリや先生やルド、それに周りにいた隊員さん達にまでガン見されていた。


…えっ!?なんでみんなそんなこっち見てんの!?

もしかして食べ方汚かったとか!?ご、ごめんよ、小さい手だとうまくスプーン扱えないんだよ!

これでも頑張って綺麗に食べるよう心がけてる方なんだけど…



「…め?」


駄目でした?って恐る恐る首を傾けて小さく見上げたら、一斉に視線をそらされてみんな机に突っ伏してしまった。


そこまで!?そこまで駄目でした!!?

あっ、いやこれ笑ってる!?肩震えてるしもしかして変な顔して食べてたとかか!?

ちょっ、だとしてもそこまで笑わなくてもよくない!?


オロオロしながら様子を見てたけど、一向にみんな顔を上げてくれなかったので仕方なく食事を再開した。







結局私が食べ終わるまで誰も顔を上げてくれませんでした。なんでだ。



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