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砦部隊。それは世界不可侵と呼ばれる、最強の部隊。
4つの独立部隊から成るその部隊は、個々の力が大きすぎることから、小さな部隊だとしても国の軍隊と匹敵する…いや、それ以上の力を持つとされ、彼らがどこか1つの国に付いてしまえば確実に世界のパワーバランスが崩れてしまう。
そんな事態を恐れた国々は、世界共通の条約を結んだ。
一つ、双方何人も命令権を持たない
一つ、どの組織にも所属は認められない
一つ、世界における災厄が起こった場合のみ、出動を要する
一つ、不可侵を侵してはならない
「まぁ、簡単に言やぁ"どんなお偉いさんだろうと俺らにゃ命令できねぇし、その逆も同じ。
俺らは砦部隊っつー独立部隊でいられる代わりに、世界で起こる災厄には出動しなきゃいけねぇ。そんでもって俺らも国もこれを絶対破っちゃなんねぇ"って感じだな」
部屋に戻ると、ルドが少し難しそうな本を取り出して砦部隊のことを教えてくれた。
国のお貴族様が通うようないいとこの学園で使われている教科書らしい。へぇー、お貴族様の学園で砦部隊のこと習うんだ…。
ちなみに本の文字はスラスラ読めた。うわぁ、見たことない文字なのに頭の中で言葉として再生できるのすごいなぁ…!
ちょっぴり感動しつつ本に目を通していると、
砦部隊の中の4つの独立部隊の主な仕事、というページに差し掛かったので、とりあえず読んでみる。
「よっちゅのどくりちゅぶたいとは…」
「…ミツキ、これ読めんのか!?」
どうやら無意識に声に出して読んでいたみたいで、それを聞いたルドに物凄く驚かれた。
そういえば忘れてたけど、私の見た目は今3、4歳!どう考えても教科書なんて読めない!!いやむしろ文字読めるかすら危うい!?
うわっ、やらかした…!!
「えー、と…えっと…」
どう言い訳しようかと焦りながら口をもごもごしていると、ルドが柔らかく微笑んで頭を撫でてくれた。
「…すげぇな、ミツキ。さすが俺のカワイイさんだ」
「!」
優しい声に思わず俯いてしまう。
きっと何かあるとは思ってるけど、私の様子を見て聞かないでくれてるだけ。
…優しすぎるよ、ルドは…。あー、ほんっと男前だなぁ。
「でもま、こんなの読まなくても俺が直接説明するしな。つーか教科書なんぞ上っ面しか書いてねぇからな、内情詳しい俺から聞いた方が分かりやすいだろ」
「…うん!るどがおしぇてー!」
これ以上ボロ出すにはいかない!とちょっと意気込んだ私に、上手いこと助け舟を出してくれちゃうルド。
くそぅ、そういう気遣いできちゃうとこ愛してるよルドっ!
そんなわけでルドさんに教えてもらいました。
独立4部隊の主なお仕事ー!ぱちぱちー!
「まずはフェリスタードんとこの守衛塔部隊だな。」
「ふぇりのとこは…もんばんさん?」
「ま、あながち間違っちゃいねーな。主な仕事は砦の警備と医療だ。部隊長と副部隊長で受け持つ仕事が違うのが砦部隊の特徴だな」
「ふぇりがけいびで、しぇんしぇーがいりょー?」
「おー。ま、砦の盾役が守衛塔部隊だな」
ふむふむ、医療ってか治療も守りに入るし、守衛塔部隊は守り専門なんだね。
「次はエドイアんとこの魔法塔部隊だな。エドイアが魔法研究、オリュースが魔道具の作成が仕事だ」
「まどーぐ?」
「エドイアの研究した魔法陣を色々と活用して、便利な道具とか作ってんだよ。
砦部隊の魔道具は全部オリュースんとこの特製だな」
ほら、と指さされたのはスタンドライト。それから備え付けの冷蔵庫やエアコンも。
あ、これ魔道具だったんだ?普通に機械かと思ってた…!
へぇーこれ魔法使ってるんだ。なんだか不思議な感覚。
「りゅーしゅごいねぇ!」
「魔道具に関してならアイツの腕は世界一だからな。ま、難しい魔法の組み合わせを簡単に魔法陣に変えちまうエドイアもバケモン級だがな」
魔法塔部隊は全員もれなく魔法馬鹿だ、とルドが教えてくれたけど、反応に困ったのでとりあえず曖昧に笑っておいた。
「次は…」
「かんりとーぶちゃい?」
「正解。管理塔部隊は砦と部隊隊員たちの管理が仕事だな。
ラーナは食事や清掃、キースベルは服飾やら鍛冶やら大工やらの物作り全般が仕事だ。
基本的にゃなんでも作れるらしいからウチとしては助かってんだよ。キースベルなんかは偶にオリュースと組んで共同で魔道具開発してたりすっかんな」
あの単語会話のリューと、弾丸オネェトークのベルさんのタッグ…??
だめだ、全然想像できなさすぎる!!会話通じてるのかな??対照的すぎて頭が想像を拒否してくる!
「最後は今いる情報塔部隊だな。
副隊長にゃまだ会わせてねぇよな?今は用事頼んでっからいねぇんだが…まぁアイツはまた今度紹介するからいいか。
情報部隊の主な仕事はまぁ、まんま情報収集だな。
世界中から情報をかき集めんのが副部隊長のカエラリアってやつで、俺がその情報を元に偵察行ったり裏打ち行ったりすんだよ」
全部の部隊の仕事内容を聞きつつ、ちょっとだけ思考を巡らせる。
…あわよくば私にもできることがあれば、なんて考えてたけど…できること、あるのか??
いや、私魔力多いらしいからエドイアさんの研究手伝ったり!?って一瞬考えたけど、魔力感じれないのに手伝いもクソもないよなぁ…。
ウンウンと唸りつつ、今度ラーナさんにお掃除手伝わせてもらえるよう頼んでみようかな、なんて思った。




