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あの後、暴走しかけた隊員さんたちをルドとラーナさんが力技で黙らせるという事態に陥ったりしたけど、なんとか無事?にラーナさん特製の朝ごはんを食べ終え、いざ守衛塔へ!
ちなみに今日の朝ごはんはふわふわの白パンにお好みでフルーツジャムを付けたものと、フルーツたっぷりヨーグルト、それにミックスジュースでフルーツ尽くしでした!とても美味しかった!!
この世界の食べ物は見た目は変でも味は知ってるものだったり、見た目も味も日本のものと変わらないものがあったりと結構チグハグなのだ。
まぁ私の場合は美味しく食べられればいいのでそんなの関係ないよ!!って感じなんですけどね。
美味しいご飯でパンパンになったお腹をさすりながら幸せオーラを振りまいていると、守衛塔の入り口にもたれかかるようにして安眠しているフェリが見えた。
え、嘘でしょ。その体制でも寝ちゃうのかね、君。
「おいこらフェリスタード、起きろ!!
毎回毎回寝てんじゃねぇよ、仕事しろ」
「…ん〜〜?あれぇ、ルドヴィック…と、ミツキ〜。おはよう、はやいねぇ?」
「早くねぇよもう朝飯も終わった時間帯だ。
お前ずっとここで寝てたのかよ」
「いやぁー、迎えに行くのに遅刻したら僕の布団燃やすってリョシュアに言われちゃってさぁー。しょうがないから遅刻しないよう早朝にこっちに来て寝てたんだよね」
おっきな口を開けて欠伸をしてノロノロと立ち上がったフェリが入り口で寝てた理由を教えてくれたけど…いや、普通に寝ないで待ってなよ…。
私と同じことを思ったのか、ルドの眉間のシワが益々深くなる。
でも、フェリは布団を燃やされても普通にどこでも寝れそうだけどなぁ、なんて思ったらどうやら顔に出てたらしく、
「あの布団は厳選に厳選を重ねた僕の最高寝具だから、燃やされたらほんとに死んじゃうんだよねぇー。あれがないと安眠できない…」
って少し落ち込み気味に返された。
うっ、なんだかフェリの頭と耳にションボリと垂れた犬耳と尻尾が見える…!!
でもそのリョシュアさんって人もフェリの扱いわかってるなぁ。脅し文句が的確に急所を突いている。お見事。
「それじゃー、リョシュアも待ってると思うし医療室向かおっかー。
あそこのベットも中々寝心地いいからおすすめだよー?」
「お前はまず睡眠から離れやがれ」
フェリの案内に素直についていこうとしたけど、ちょっと一言余計だったね。
若干キレ気味のルドに頭チョップを食らったフェリが暴力反対〜!とか言ってたけど、私は甘んじて受けるべきだと思うよフェリ君や…。
守衛塔の内部もやっぱり他の塔と一緒で真っ黒だったけど、案内された医療室だけは唯一白かった。
魔法塔の封印部屋?もそうだけど、真っ黒の塔の中に1つだけある白い部屋って、なんだか雰囲気がガラッと変わるよねぇ。
医療室は学校の保健室を思い出すような作りではあったけど、それは入ってすぐの部屋だけで、奥の方に見える部屋は本格的な器具や薬品が置いてある棚や治療に必要な道具などが揃っているのが見えて、ちょっとだけ尻込みしてしまった。
前世の私はきっと病弱だったのかな?病院のような作りの部屋にいると不思議と馴染んでいる感じがする。
でも器具や薬を見ると物凄く苦い何かが胸のあたりにじんわりと広がって、すごく嫌な気持ちになって…
「ミツキ?どうした、さっきから不安そうな顔してんぞ」
ルドの声に反応して上を見上げれば、心配そうな顔をしたルドが私を覗き込んでいた。
うわ、ごめんね!!ちょっと前世をぼんやりと思い出して?ただけだから!不安とかないよ別に!!
「だいじょぶなのー」
とりあえず安心させるようにニパッと笑えば、ルドは若干首を傾げながら、そうか、と引いてくれた。
うーん、考え事に集中する癖直さないとなぁ。
別に前世とか今となっては関係ないんだから、考えなければいいだけなんだけどね。
でもなんでだろう、ぼんやりと浮かんでくる私の前世のカケラたちが事あるごとに砦のどこかに引っかかるんだよね。
まぁ考えても仕方ないか!なんか思い出した時にまた考えればいいよね!
とりあえず自分の思考を切り替えて、フェリの後をついていくとそのまま診察室のような場所へと通された。
「リョシュアー、連れてきたよぉー」
「フェリスタードさん、ありがとうございます。今回はきちんと遅刻せず来れましたね?
…おや、これまた小さいお客さんですね。君が噂のミツキちゃんかな?」
「あ、い…?」
ノックの音とフェリの声に反応したリョシュアさんが顔を上げると、死んだ魚の目のような濁った金の瞳と目があった。
いや、死んだ魚の目っていうか。リョシュアさん、身体中に明らかに人体にはできないような突起物?が大量にあるんだけど、あれってどう考えても…魚の鱗、だよね…!?
リョシュアさんは見た目は20前半?ぐらいのおっとりした青年で、お顔の造形は確かに素晴らしく綺麗なのだけど…いかんせん目の下には濃ーい隈があるしツヤの消えたオークル色のウルフカットヘアはボッサボサ。
黒縁の大きめメガネで死んだ魚みたいな瞳が若干隠れてはいるものの、むしろ目の光を消していて死魚度が増している。
フェリと同じ軍服を身につけているけど、上着は脱いでいて代わりにお医者さんみたいに白衣を羽織っていて、その白衣もヨレヨレのシワシワでどう考えても残業続きのサラリーマンにしか見えない…
リョシュアさんについて、もしかして魚人さんかな?とか、その肌についてる鱗どうなってるの!?とか、やっぱエラ呼吸とかあるのかな…!とか、聞きたいことはいろいろあるけれど…それでも。
そんなことなどどうでも良くなるくらいには今のリョシュアさんの状態が酷すぎる!!診察受ける私よりお医者さんの方がボロボロってどうなんですかね!!?
これ絶対フェリよりリョシュアさんの方が睡眠必要だよね!!??




