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「あーー、話がずれたな。ま、ミツキが獣人差別をしねぇのはいいことだ。この砦にゃ亜人種の方が多いからなー。
愛し子って事も別に悪い事じゃねぇ。ちっと周りがうるさくなるだけで、砦にいる限りは安全だからな」
「…では遅くなってしまいましたが今回の報告会議を始めても?」
「おー、詳しいこたぁ全体会議で話せばいいからな。とりあえず取り急ぎの報告よろしくー」
総部隊長さんがそう言って手をヒラリと降れば、立ちっぱなしだった面々もソファへとかけていく。
あ、総部隊長さんにど突かれてフェリがやっと起きた。
ちなみに私はルドに回収されてお膝の上に座っております。
その一連の流れを総部隊長さんがものすっごくニヤニヤしながら見てたものだから、ルドの眉間にゴッツイ皺が刻まれている。
イケオジの眉間の皺ってなんかカッコいいけどね、でもちょっと怖いな!!
「―――…と言うわけで、魔力封印は問題なく終えた。ミツキの魔力は私よりも桁違いに多いが、封印を施した今は魔法塔部隊の隊員と同等レベルまで落ち着いたな」
「封印状態でも魔力バカと同等とか恐ろしいわね…貴方よりも多いって時点で驚きだけど、ほんとにミツキちゃんて並外れてるのねぇ」
すごいわぁ、と頬に手を当てて感心しているベルさんだけど、いや、魔力バカて…。
私は未だに自分の魔力を感じることができていないから、多いと言われても全くわからないのだけど…それについてはエドさんとリューが魔力研修を行ってくれるらしい。
魔法塔部隊のツートップが先生とか豪華だなぁ…。
でも魔法が使えると聞いて年甲斐もなくちょっとワクワクしてしまう。
これぞファンタジーって感じがするよね!
「管理塔部隊からの報告も特にないですわね。
食事は気に入ってくれたようだけれど、あまり量は取れないようだからそこは少量でも栄養を取れるようなメニューを考えますわ。キースベル、ミツキちゃんの服の方は?」
「アタシの部下に今も制作を頼んでるわよ〜!今着てる1着だけじゃ全然足りないもの!
みんな可愛い服を作れるって大興奮だから、すぐ数が揃うと思うわ。
寝間着の方を優先して作らせてるから後で渡すわね」
「…ふーん、なるほどねぇ」
ある程度の報告が終わると、総部隊長さんが何かを考えるように顎に手を当てて目を伏せた。
オズワルドさんも報告書を書き終えたのか手を止め、総部隊長さんへと視線を送っている。
「…ミツキ、お前の口からルドヴィックに出会うまでの経緯を聞きたい。いいか?」
真剣な眼差しでそう問われ、私は小さく頷いた。
と言っても、ルドに出会うまでの経緯なんてそう長いものじゃない。
「…きづいたらね、もりにいたの。どこかわかんにゃかったから、ありゅいて…とちゅうでおにゃかがしゅいたから、くだものたべたの。
それから、きづいたらおっきなきのねっこでねてた…。
おきてくだものたべたら、うなりごえがきこえて…それからるどにたしゅけてもらったんだよ」
「…森に来る前のことは?」
「…わかんにゃい」
この小さな体が生きてきた今までのことは私の記憶には残っていない。あるのはぼんやりとした私の前世の記憶だけ。
弱々しく首を振ると、頭の上に手が乗って、優しく撫でられた。
…ルドの手はいつでもあったかいなぁ。
「そうか…ん、わかった。ありがとな、ミツキ」
総部隊長さんにも優しく微笑まれ、私はまた小さく頷いた。
ごめんね、あんまり役に立たなくて…
「んな顔すんなよミツキ。おら、もう夜も遅い。お前も疲れたろー?今日はもう休みな。
部屋は…まぁルドヴィックの部屋でいいだろ。
フェリスタード、リョシュアに連絡して明日の午前中の予定抑えといてくれ」
「ん〜、健康診断ですか〜?」
「おー。一応みといたほうがいいだろ。
ルドヴィック、明日の予定は?」
「報告書の作成と情報の整理だけです。どちらも午後に回せますが」
「じゃ午前はミツキとリョシュアんとこな。
そのまま昼食ったらエドイアにバトンタッチ」
「…了解です」
「不満そうな顔すんなよなー!ミツキと離れるのが嫌ならさっさと仕事終わらせな。
ラーナは終わったらリョシュアに結果聞きに行って今後のミツキの食事面相談しとけよ。
キースベルはミツキ用の家具やら生活用品やら揃えてやってくれ」
「「了解」」
流れるように明日の予定が決まり、解散の言葉がかかると皆んなが一斉に立ち上がる。
お約束のごとくルドに抱っこされたまま会議室を出ると、これまでの緊張が解けたのか、それとも疲れが出たのか…どっと眠気が押し寄せて、ぐしぐしと閉じそうな瞼をこすった。
「あら、ミツキちゃん。擦っちゃうと真っ赤になっちゃうわ?
眠たいなら寝ていいのよ。寝間着はキースベルにルドヴィックの部屋に届けさせるから、あとはぜーんぶルドヴィックに任せちゃいなさい!」
「そうだな、眠いんなら寝ちまえミツキ。無理に起きてる必要はねぇよ」
ラーナさんに優しく諭され、ルドには甘い声で囁かれ…
あぁ、ダメだよそんな…そんな風に言われたら…。
とうとう押し寄せてくる眠気に逆らえなくなって、包み込む体温の心地よさに私は呆気なく意識を手放した。




