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神様の愛し子  作者: 九稲
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「それではいまから、きんきゅうかいぎをおこないましゅ!わーぱちぱちぱち!」


静かな森の中に舌ったらずなソプラノボイスとちっちゃな拍手の音が響く。

我ながら寂しいことしてるなぁ、とは思うけど、とりあえず現状を理解するためです。

周りに誰もいないもん、恥ずかしくなんてないよ!


「えっと、とりあえずここはどこかだけど…」


もう一度辺りをよく見渡す。

生えている木や植物は、まったくもって見たことのないものばかりだった。

成っている実もショッキングピンクに赤の斑点模様や濃い水色に黄色の縞模様など、どう見たって日本…いや地球には絶対ないようなものばかり。

そして…



ギャア ギャア ギャア



なんだか不吉な鳴き声とともに、私のいる場所に大きな影がさした。




「…わぁお、ふぁんたじぃ…」



そろりと上を見上げると、どう見たって既視感のある、だけど絶対実物など見れるはずもない生物が優雅に空を飛行していた。

知ってるよ…本で見たことあるもん…



「あれぜったいワイバーンだよぉ…」



私は自分の呟きに思わず頭を抱えた。



小さい頃から本を読むのが好きだった。

自分の知らない世界を、知識を、感情を知るのが楽しくて。

ジャンル問わずなんでも読んだ。

その中にはもちろんファンタジーものや異世界モノだってあったし、ラノベだって読んでいたから、この状況もなんとなーく予測できてしまう。




「いせかいにきちゃったのかぁ…」



認めたくないけどね。まだ半分夢かなー?って期待もってるけどね。



「しかもこんなにちぃちゃくなっちゃって」



自分の手や体を見るに、おそらく歳は3、4歳くらいになっちゃってると思う。

てか服!私が今着てる服!

一枚の布を体に巻きつけました〜!みたいな感じじゃん…

しかも布はボロボロであちこち穴が空いてるから、防御力なんてゼロを通り越してマイナスだ。

でも、うーん…ないよりはマシ、かな?


自分の顔は鏡になるものがないから今は後回し。

さて、残る問題は…



ここはたぶん異世界で、私は何故か小さくなっている。

目覚める前の記憶が曖昧すぎて判断しづらいけれど…たぶんこれは、異世界転生…なんだろうなぁ。

誰かの体に意識だけが憑依したとも考えられるけれど、もしそうだとしても、これだけはハッキリ言える。




「…そっかぁ、わたし、しんじゃったんだ」




記憶が曖昧なのに、自分が死んだことだけははっきりと分かった。

どうやって死んだのかも全然覚えてないけど。

自分が死んでいたことに対して、そうなんだ〜と思う以外に感情が湧かないのは、今こうして生まれ変わってるからなのかな?

悲しいとは思わない。だけど、思い出せないことが少し寂しく思えた。



「ん〜、まえのわたしについてはわかったけど…もんだいは、いまのわたしだよね」


そう、今の私。なんでこんな森に1人でいるんだろう?親は?いないのかな?

周囲に人の気配を感じられないし、もしかして捨てられたのかな…。

見知らぬ森の中なんて、今はまだ明るいからいいけれど、暗くなってしまったらどうにもならない。

森を出るにしたって食料も水もなしで、この小さな体で出れるなんて到底思えないし。


「ごはんとおみず、さがさないと…!」


とにかく当面の生きる糧だよ。

それがなかったら始まらないもの。

私は気合を入れつつ歩き出した。








「うーー、おなかしゅいたぁ…」


結構歩いたけれど、歩けど歩けどずーっと木!

分かってはいたけど人っ子ひとりいない…村なんてあるはずもないし。

魔物のようなものにはまだ出会ってないのが幸いだけど…



一応食料らしき実?果物?を取ったのはいいものの、怖くて食べれないでいる。

だって異世界の食べ物だよ!?毒とかあるかもじゃん!怖いじゃん!

だけどお腹空きすぎて、なんだかだんだん気持ち悪くなってきた…




ぐぅ〜〜きゅるるるるる




くっ、お腹が催促してくる…!




「お、おんなはどきょう…っ!」


我慢しきれず、一番見た目的に平気そうなオレンジ色の果物を恐る恐る手に取った。

形はキウイのようで、固い皮をグイッと剥くと、中には黄色がかったクリーム色の果肉が詰まっていた。

覚悟を決めて一思いに齧り付くと、シャクっという軽い音とともに、みずみずしい甘い果汁と、柔らかな果肉が口内に入ってくる。

食感はリンゴに近いけれど、味は…なんだろう、スイカ?

水分が多めだから水がなくても平気かもしれない。

思った以上に美味しくて、夢中で食べてしまった…。


食べ終わるとお腹も膨れ、歩き疲れたのもあって睡魔が襲ってきた。

この体は今ものすごく睡眠を欲している…


「んむぅ、みちばたでねちゃだめ…だめだけど…ねむ…」


眠い目をこすりながら近くにあった大きな木の根っこの窪みまでなんとかたどり着くと、その窪みにすっぽり体を埋めた。

なんだか安心するこの狭さ…


「おやしゅみなしゃ…」



気付いた時には私の思考はプツリと途絶え、柔らかな睡眠へと落ちていった。

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