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突然ですが質問です!
いきなり知らない人に拉致られた場合の対処法は何ですか!
…なんて、うん。ただいま現在進行形で拉致られてます。何故だ。
「やー、こうも簡単に奪われるとかあいつらなまってんじゃない?鍛錬の見直し必要かもしんねぇな〜!な、ちびすけもそう思うっしょ?」
「えぇ…?うん…?」
状況が理解できなさすぎて掛けられた言葉にも生返事しかできない。
そもそもなんでこんなことになってるんだっけ…?
ベル特製の服を着たあと、みんなでぞろぞろと砦にある会議室へ向かって、砦の中に入った瞬間にルドに抱っこされていたはずの私はなぜか知らない男の人の腕の中にいて。
一瞬のことすぎてルド達も反応できなかったのか、気づいた時には男の人は私を抱えたまま走り出していた。
走り出してたんだよ…そりゃもう全速力で。
下手したらロゼリアとおんなじくらい早いんじゃない?ってレベルの速さだった…。
拉致られた時チラッと背中越しに見えたルドが絶望的な顔してたのが物凄く印象に残ったのだけど…心配してるかなぁ、してるよね、きっと。
でもこんな状況でも私の危機感が仕事しないのはなぜなのか…
「にしても驚いたわー!あの堅物ルドヴィックがちんまい子どもを抱っこしてんだもんな!
一瞬白昼夢でも見てんのかと思ったぜ!」
そう言って心底楽しそうに笑うその人の顔は目尻に小さくシワが寄っていて、私の警戒心を解くのには十分すぎるくらいに優しい顔つきだった。
「るど、かたくないよ?しゅっごくやしゃしーの。でもときどきかほごなのー」
「ブハッッ!過保護!?ルドヴィックが!?
まじかー、ちょっ、偵察行かせた間になにがあったんだよ!めちゃめちゃ気になるー!」
ゲラゲラと笑うお兄さんを見てると、なんだか私まで楽しくなってきてしまう。
笑いって伝染するんだよね。
お兄さんはいまだに全速力で走行中だし、とりあえずお兄さん観察でもしようかな。
風になびいて揺れる髪の毛は光を反射して艶めいていて、墨汁をこぼしたみたいな真っ黒の髪はポニーテールにしてあるけれど、あれはきっと下ろすと太ももあたりまであるんじゃないかな。
瞳も髪の毛と同じ黒色。何気に黒色を持つ人にこの世界では初めて出会った気がする。
砦にいる人たちはみんなカラフルな色合いだったけど、唯一黒だけは誰もいなかったから。
ただ、私の前世は日本人だから…だからこそこの配色は懐かしくて、それでいてすごく安心する。
身長は多分ルドと同じか、少し小さいぐらいだと思う。筋肉はルドよりも少ない感じがするけど、それでもしっかりとついてる。
服装はルド達と同じように軍服に似た服なのだけど、右肩の宝石でできた宝飾部分に赤いマントがとめてあって、凄くかっこいい。
お待ちかねのお顔ですけれど…まぁ期待を裏切らずトンデモ美形ですよね。多分この世で一番美しい造形。
神と言われても疑えない、もはや貴方が神か。
切れ長の瞳に高い鼻と薄い唇は全て絶対的な配置に位置しているし、表情の乗っていない顔は儚さが滲み出たような神秘的さを醸し出しているくせに、笑うと一気に親しみが出てくる。
…神様、ちょっと造形に本気出しすぎとちゃいます?
思わず心の中でツッコミを入れていると、全力疾走していたお兄さんがピタッと急停止した。
「ハイとうちゃーーく」
「う?」
なんの説明も受けず、流れるように目の前の部屋に一緒に入る。というか、抱えられてるから連れ込まれたっていう方が正しいのか?
「ただーいまー!噂のちびっこ拉致してきたんだけどさぁー、ルドヴィックの反応、あれ何!?めちゃくちゃ面白かったんだけど!」
「おかえんなさい〜。いきなり飛び出してったと思ったらやっぱミツキのこと拉致しに行ってたのー?どうせ待ってたらここにくるのに」
「えぇー、だってそっちのが面白そうだったからさ」
部屋の中は高級そうなふかふかマットに大きなテーブルが1つと、テーブルを囲うようにソファが鎮座していた。
そのうちの1つにフェリが座っていて、私達を見るなり呆れたような溜息をついていた。
ってか、え?待ってたらくるってことは、ここが私たちが向かってた会議室なのかな?
首をひねっていると、お兄さんが私を抱えたまま1人がけ用のソファにボスンと腰を落とした。
向かい合うようにして膝の上に降ろされたのだけど、いや!顔近っ!そんな整った顔近距離で向けないでくださいます!?
「…なにやってんの?」
お兄さんの美しさが眩しすぎて目を両手で覆っていると、心底不思議そうに首を傾げられた。
「おにーしゃん、きれーだからまぶしーの」
だからちょっとあっちのソファ座らせてもらえます?
指の隙間を少し広げてチラ見しつつ答えると、「フェリスタードの方が眩しそうだけどなー、髪の毛とかめちゃくちゃ光反射しそうだし。」と返されてしまった。
いや、私的にはどっちもおんなじくらい眩しいからね。造形美的な意味で!
「ってか、俺黒持ちなのに綺麗なの?」
「くろもち?」
って、なんぞや?お餅?いや違うよね、多分。
「黒持ち、知らない?俺みたいな髪と目の色を持ってる生き物。黒は禁忌の色だから、罵られはしても綺麗とか言われたことねぇんだよなー」
軽ーい感じでものすごく重い話をされてしまった。
え、何禁忌って。あれか?昔の日本が黒を良くない色ってしてたのとおんなじ感じ?黒猫とかカラスとか。
「まっくろ、きれーよ?おにーしゃんのくろは、とりでのいろね」
悪いが現代を生きてた私には禁忌の色とかわからん!っていうか色に禁忌とかないから!それを生まれ持ってた人をそのまま禁忌にするのも意味わからん!
何がダメなの?と私も首を傾げると、お兄さんは真っ黒の瞳が零れ落ちそうになるぐらい目を見開いた。
「…おまえ、」
お兄さんが何か言おうとした瞬間、部屋の扉が荒々しく開いて、どこか禍々しいオーラを放っているルド達がぞろぞろと中に入ってきた。
「おっ、思ったより早かったな〜!ここまでくんのにもうちっとかかると思ってたわー!」
「何のつもりですか、総部隊長!!」
…え?
「ええっ!!??」




