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神様の愛し子  作者: 九稲
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「ごちしょ、さまでした!ごはんとってもおいしかったです!!」



1人で食器を返却しに行こうとしたルドを引き止めて、私も一緒に返しに行きたいと後ろをついていき厨房にいた隊員さん達に最大限の感謝を伝えた。

いきなり来た得体の知れない私みたいな子供にも、心を傾けて美味しい料理を作ってくれた。食べやすいような量とサイズもすごく考えてくれていてとても嬉しかったから、ありがとうって伝えたかったんだ。


ニコニコ笑顔で隊員さんにお礼を言ったら、皆さん嬉しそうにおいしかったか?とか腹の虫治ってよかったな!とかたくさんの言葉を返してくれた。

いいなぁ、すごく暖かい。


「すげぇ目ぇキラッキラさせて食ってたからな、よほど気に入ったんだろ。

頬なんかパンパンでリスみたいだったぜ?」

「あら、それはとっても光栄なことね!」


横でルドが食器を返却しながら隊員さん達にそう言うと、厨房の奥の方から鈴を転がしたような綺麗な声が聞こえた。

声のする方に目を向けると、涼しげな空色の髪をなびかせ、黒地に青の刺繍の入った軍服に身を包んだ目鼻立ちのくっきりした女性が、目尻をふわりと下げながらこちらに向かってきていた。透き通るような白い肌に黒地の服はなんとも言えない神秘的さを醸し出している。


背の高いナイスバディなお姉さんは確かにキリッとした顔立ちだから強気な感じが出ているけれど、嬉しそうに笑うその顔は花が咲いたように鮮やかで可愛らしかった。


そして、そんなお姉さんの一部分に私の視線は物凄く釘付けだった。

だって、だって…明らかに普通の人間とは違う、横方向に長いとんがったお耳。

これってやっぱり…



「えるふしゃん…!」



ポツリとこぼした言葉に、周りの人たちの纏う空気が少しだけ変わった気がした。

険しい顔をして何かを考えるルドに、驚いたようにピンクゴールドの目を見開いたお姉さんがちらりと視線を送る。

その視線に気づいたルドがお姉さんに視線を返すと、お姉さんはパッと表情を変えて私の前にしゃがみ込んだ。



「初めまして、お姫様?私はラーナ。管理塔部隊の部隊長を務めているわ。

お姫様のお名前はなんて言うのかしら?」


出てきた時と同じようにふんわりと笑いかけてくれたラーナさんの言葉で、少しぎこちなかった周りの空気は離散し、私はほっと安堵の息をついた。


「みちゅきでしゅ。ごはんすっごくおいしかったです、らーなしゃん!」

「うふ、喜んでもらえたようでよかったわ。量は足りた?あのサンドイッチ、私の特製なの。

ミツキちゃんがすっごく美味しそうに食べてくれてるの見て嬉しくなっちゃった」



案の定噛んだ私の言葉を正確に読み取ってくれたラーナさんは、本当に嬉しそうに顔を綻ばせて私に手を伸ばした。


そっと頬に触れられるその手に、優しいその声に、ふわりと香る微かな花の香りに…

どうしたって私の頭から既視感が離れてくれなくて、心がギュッと掴まれたように痛くなる。

いろんな感情が絡まって、思わず泣き笑いのような顔でラーナさんを見上げて、すごく幸せな時間だったと伝えた。



「…そう、じゃあ明日の朝ごはんも腕によりをかけて作らなくっちゃ!もちろん、お昼ご飯も夜ご飯も。

ミツキちゃんがずっと幸せでいられるように…ね?」

「ありがとござましゅ、らーなしゃん…」



優しい腕に抱き込まれて思わずすり、と肩に頬を寄せる。



…柔らかい。いや、どこがって、全体がなんですけど…なんと言うか、ふわふわであったかい。

あと、服の上からでもわかるラーナさんのナイスバディは触れた瞬間想像を超えたナイスバディということがわかりました…なんてね。


どこかしんみりとしてしまった自分が恥ずかしくて、ちょっとラーナさんの胸元に顔を埋めた。

窒息しそうだったのですぐ顔あげたけど。


その時に目があったルドがすごく複雑そうな顔でどこか落ち込んでいたから、ラーナさんから離れてルドに向けて腕を広げた。


「!」


私の行動に気づいたルドがすぐに抱き上げてくれる。

鍛え上げられて筋肉の付いているルドの腕の中は、私にとってどの場所よりも安心できる場所だった。

行動も言動も幼児退行してる気がするけど、気にしない!

安心して欲しくてルドの首に両手を回してギューっと抱きついたあと、その真紅の瞳を見つめてニコッと笑う。



そんな顔しないで、ルド。大丈夫だから。




「…はは、まさかミツキに慰められちまうとは…」


かっこ悪りぃ、と小さく呟いたルドの声は抱きしめられた私には聞こえてしまったけど、聞こえなかったふりをしてルドの腕の中を堪能した。

そんな私たちを周りの人たちは優しげな視線で見つめていたことには気づかなかった。











「あらいけない。大事なこと忘れてたわ。」


我に返ったように声を上げるラーナさんに顔を向けると、 ゴソゴソとポケットからメジャーを取り出した。

何をするんだろう?と見ていると、ちょっとミツキちゃんそこに立ってくれる?とお願いされたので床に降ろしてもらい、ラーナさんを見上げた。


「ミツキちゃんの服をどうにかしないといけないから、ちょっとサイズを計らせてもらいたいの」

「っと、そうだった。それも頼もうと思ってたんだ。

ラーナ、とりあえずキースベルに何着か制作頼んでいいか?

今からエドイアんとこ行ったあと総隊長殿のとこにも行くから、そんときの会議までには1着欲しいんだが」

「言われなくても最優先で作らせるわ!いつまでもそんな格好させておけないもの。

とびっきり可愛いの作らせるから、待っててねミツキちゃん」


ラーナさんはルドと会話をしながらも、手は素早く私の体を採寸していてなんだか職人さんみたいだな…なんて思った。

そしてラーナさんの言葉で自分の体を見下ろす。

服…そうだった。私今ボロ切れみたいな布を巻きつけただけの服とも呼べないものを身につけてたんだった。

総隊長さんってこの砦のトップだよね…うわぁ、確かにこんな格好で会いにいけないよ!



「ルドヴィック、エドイアのところに行くってことは研究室よね?だったら用事が終わったらすぐにお風呂に入れてあげて。

わざわざ大浴場に行かなくてもエドイアの研究室なら風呂場あるんだし、それくらいの時間ならあるでしょ」

「まぁ…そうだな。いくら拭いたとはいえ、まだ汚れは残ってっしな。」

「それじゃ、服は研究室に届けさせるわね。」


あれよあれよと予定が決まり、採寸を終えたラーナさんがよし、と立ち上がる。

それと同時にルドに抱き上げられ、見送ってくれる隊員さん達に手を振って私たちはエドイアさんの元へと向かった。


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