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「おら、冷めねぇうちに食べんぞー」
席に着いたところで目の前に料理の乗っているお盆を置かれ、パッと目を輝かせて丁寧に盛り付けされた料理たちを見る。
うわぁ、すごい美味しそう…!!
真っ白なパンにサニーレタスのような葉物と卵が挟まれたものと、少し紫がかった玉ねぎかな?と豚肉のようなお肉をパリッと焼いたものにソースをかけて挟んだサンドイッチが、1つずつちょこんとお皿に盛ってある。
ちゃんと子供の私にも食べれるような大きさに切ってあるし、彩もすごく可愛い。
サンドイッチが乗ったお皿の横にはマグカップが置いてあり、覗き込むとクリーム色のトロッとしたスープが入っていた。
フワンと香る美味しそうな誘惑に、私のお腹は速やかに白旗を差し出した。
ぐぎゅるるるる〜〜!!
「ぶはっ!!」
先ほどの応接室で鳴らしたお腹の音よりも一段と大きい音が食堂に響き渡り、隣に座っていたルドが思わずと言うように吹き出した。
んぁあああ!またやった!!私のバカ!!
うぅ、でもこんなに美味しそうなご飯を目の前に置かれたら、飢えた私が一瞬にしてノックアウトされちゃうのも無理ないと思うの!!
「っくく、素直な腹の虫だな?ミツキ」
「ぐぅ…ふかこうりょくなの…」
「…難しい言葉知ってんな。ほら、手ェ出せ。拭いてやるから」
片頬をぷくっと膨らませて拗ねていると、ニヤニヤと口の端を釣り上げるルドの人差し指にブスッと突かれてぷしゅうと間抜けな音を立てた。
くそー!ニヤニヤしちゃってさ!ニヒルな笑みがまたイケオジ感を増幅させてるし!
イケメンは何してもイケメンだな!
さながらお母さんのように私の手を丁寧に濡れタオルで拭いてるくせに!
「おし、まぁ綺麗になったろ。後で風呂もはいんねぇとな…」
私の手を拭き終わったルドがぼそりと呟いた言葉に思わず反応する。
お風呂…!!森の中を歩き回ったり、木の根っこで寝てたりしたから私の体は結構汚れていたりする。
目立つ泥とか汚れは一応ルドが濡れたタオルで落としてくれたのだけど、やっぱりお湯に浸かってサッパリしたい。
「目がキラキラしてんぞ、カワイイさん?
風呂が嬉しいのはわかったが、その前にそのちいせぇ腹のなかの虫に餌をやらねぇとだろ。」
そうだった!まずはこの空腹と誘惑をなんとかせねば。
もう一度視線を料理へと戻し、顔の前で手を合わせる。
「いたらきましゅ!」
食前の挨拶を終えた瞬間、待ちきれないとばかりにサンドイッチに手を伸ばした。
まずは卵のサンドイッチを口いっぱいに頬張る。
…すごい!パンが焼きたてかってくらいにフワッフワで甘い!!
サニーレタスも新鮮で、卵はマヨネーズであえてあって、少しの酸味とほんのりとした甘みを感じた。
これ、きっとハチミツが入ってる…。
子供の舌にはこの甘さがたまらなくて、口を精一杯もぐもぐと動かしながら嬉々とした顔でルドを見上げる。
この美味しさを表現したくて興奮している私がペシペシとルドの綺麗な筋肉のついた腕を叩けば、ルドからもものすごくいい笑顔が返ってきた。
とろけるような笑顔ってこう言うのを言うんだろうね…唐突なイケメンの笑顔は卑怯だよ!!
「おーおー、今までで一番目ぇキラッキラさせて…気に入ったか?よかったな、カワイイさん。
だがそんな一気に頬張ると喉に詰まるぜ?足りなかったらまたもらってきてやっから、ゆっくり食いな」
ものすごく優しげに目を細めて頭を撫でてくるルドの手をしばし堪能しつつ、口の中のサンドイッチを飲み込み、次のサンドイッチへと手を伸ばした。
豚肉?にソースをかけたものと紫玉ねぎを一緒に挟み込んだサンドイッチももちろんそれはそれは美味でした。
カリッと焼いたお肉はそれでも柔らかくて、シャキシャキの玉ねぎと相性は抜群で。
ソースは焼肉のたれに似た味だったけれど、それもまた頬が落ちるどころか溶けるんじゃないかってくらい美味しかった。
マグカップに入ったスープはビシソワーズでした。程よい甘さと塩気がこれまた絶妙で、思わずまたルドの腕に興奮をぶつけてしまって笑われた。
「ごちしょさまでした!」
綺麗に平らげられて空になった食器たちを前に、私は満面の笑みで食後の挨拶をした。
いやー満足!ものすごく幸せな時間でした!
こんなに美味しいものを作れるなんて管理塔部隊の方は神様なのかな??一生ついていきます。
「…もういいのか?言えば作ってくれんだ、遠慮すんなよ?」
「してにゃいよー?もうはいんにゃいの…
すっごくおいしかったぁ!しあわせよー!」
私が遠慮していると思ったのか心配そうに眉を下げて聞いてくるルドに、にぱっと笑って返す。
たしかにお皿に山盛りに盛られたサンドイッチをペロリと平らげちゃったルドには足りなさそうに見えるだろうけど…
小さいからね、そんなにいっぱい入んないのですわ。小さく切られたサンドイッチ2つとスープで満腹です。
「そうか…そんじゃ、食器返却してくるから待ってろ」
そう言ってルドが立ち上がろうとしたので、私は慌てて引き止めた。




