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ほのぼのとした空気の中、なんだか嬉しくなって体がポカポカしてきたのがわかった。
そしてお腹がなりそうなことも…。
「ミツキ?どうした、腹なんかおさえて…さっきもおさえてたし、やっぱ腹痛いのか?」
なんとかお腹が鳴るのを抑えようと手を当てて力を入れていると、腹痛と勘違いしたのかルドが心配そうに私を抱き寄せた。
エドイアさんのお膝の上もいい香りがして落ち着いたけど、やっぱりルドの腕の中が一番安心する。
無意識に力を抜いて体重を預けた後で、私はしまったと眉を寄せた。
ぐ〜〜きゅるきゅる…
あぁ、やってしまった…花も恥じらう乙女だというのに、部屋中に響き渡るくらいの大音量で…
「…ぶ、あっはっはっは!!なんだミツキ、腹減ってたのか?」
「っふふ、いい音したねぇー」
「くっ、ふ…笑ったら可哀想だろう…」
私のお腹の音はお三方のツボに入ったようで。
えぇ、えぇ。もう存分に笑ってくださいよ…
はぁーー、ルドの胸筋は今日もいいむちむち加減ですね!!
ルドの胸に顔を埋めて現実逃避していると、未だに笑いが込み上げているのか、少し震えた手でルドが背中を撫でてきた。
「悪かったよカワイイさん、そんなに拗ねんなって。
腹が減ったんなら食堂になんか食べに行くか?」
「…しょくどう?ありゅの?」
「おう。ここは森ん中だからな、周りに食べ物屋がない代わりに食堂があんだよ。
今の時間なら空いてんだろ。管理塔部隊の作る飯はウメェぞ」
管理塔部隊が何かはわからないけど、とにかく美味しいのなら食べてみたいなぁ。
こっちの世界のご飯ってどんなのか想像もつかないけど…お腹の空きには耐えられない…っ!
「あぁ、ならば丁度いい。食事をしている間に封印紋の準備をしておくから、終わったら魔法塔に来い」
「おう、了解。フェリスタードはどうする?」
「んー、僕もミツキとご飯食べたいけど…そろそろランティス様が帰ってくる時間だからねー、面倒だけど門番してなきゃ。
どうせ封印施したら報告会議あるでしょ?
その時にまた会おうね、ミツキ」
「お前少しは真面目に門番しろよな…」
ルドがフェリに呆れた視線を投げつつ、そんじゃ頼んだと一言告げて立ち上がる。
封印って何するんだろう?分からないけど、痛いことじゃないといいなぁ…なんてことを考えながら、部屋を出る時にルドの肩越しから2人に手を振ってお別れした。
2人とも微笑みながら手を振り返してくれたので私はとてもハッピーです。
「ほぁー、ひろいねぇ」
管理塔という名前の塔に移動した私は、食堂に入るなり感嘆の声を上げた。
食堂は広々としていて、多分100人は余裕で座れるぐらいの机と椅子が設置されている。
床や壁が黒の石だからか、机や椅子は明るめの茶色を使っていてなんだかすごくおしゃれな空間って感じ。
食事はセルフサービスらしく、お盆を持って厨房のカウンターへ行けば、隊員さんがよそって渡してくれるみたい。
しかも日替わりでメニューが変わるらしく、とりあえず2人分の食事をルドに持ってもらって席に着いた。
ごめんよルド、私の小ささだとお盆すら持つのも危ういんだ…
昼時をだいぶ過ぎてるから人も少ないし、席もがらがら。ただやっぱりというか、すれ違う隊員さんや食事を渡してくれた隊員さん?に物凄くガン見され、酷い時は3度見された。
あと時々口元を押さえて苦しそうにする人がいたけど、大丈夫なのかな…?
一応声をかけたら物凄く笑顔でサムズアップされたから大丈夫だと思いたい。
でもまぁ、私みたいな子供がこんなとこにいたらそりゃ驚くよねぇ…
敵じゃないですよールドに懐いてますよーってアピールするためにニコニコ笑顔で案の定手を振りまくったら、皆さん理解してくれたのか笑って振り返してくれたけど。
ただルドの機嫌が急降下したから途中からは笑うだけにしといた。
食堂に行くまでの道すがら、ルドがこの砦と砦部隊について簡単に教えてくれた。
砦を囲む4つの塔のそれぞれ1つずつに独立部隊が入っていて、真ん中の砦の部隊も合わせて5つの部隊で砦部隊は成り立っているらしい。
正門の右横の塔がフェリが部隊長を務めてる守衛塔部隊で、左横の塔が情報塔部隊。
そんで守衛塔の奥の今私たちがいる塔が管理塔部隊で、その左横の塔がエドさんが部隊長を務めてる魔法塔部隊なんだって。
この4つの塔部隊を纏めてるのが真ん中の砦部隊。ちなみに砦部隊は部隊長じゃなくて総部隊長って言うらしい。
言うなれば、塔部隊の部隊長さんたちが四天王で、総部隊長さんが魔王的な立ち位置?
各部隊の詳しい説明もまた今度してくれるって聞いて、柄にもなくワクワクしてしまった。
だってルドたちがどんな仕事をしてるのか気になるし、私にできることを見つけられたりしないかな、とも密かに思ったりね。
あと、話のついでみたいにルドが情報塔部隊の部隊長だってことも教えてもらったけど、部隊長って凄い人だよね??
フェリもエドさんもルドもサラッと言い過ぎじゃないかなぁ…?
「ここにいる限りはどんな国も手出しできないから安心しろ」って言われて、なんだか凄いところに来ちゃったなぁと思わず遠い目をしてしまった私は悪くないと思う…




