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愛しい子、可愛い可愛い私の愛し子。
どうか幸せになってね。
うんと誰かに愛されて、
溢れるくらい幸せになって、
ずっと笑っていてちょうだいな。
……ああ、なぁに?
優しい声が聞こえる。
知っているような、知らないような、心がじんわりとあったかくなる…そんな声が。
でもごめんね、私とっても眠くて…目を開けていられなさそう…
少ししたら起きるから、だから今は寝かせてね………
ふわりとした浮遊感に包まれて、なんだか幸せだなぁ、なんて思いながら私の脳は緩やかに覚醒した。
「…ふぁ〜、もうあさぁ?」
大きな口を開けて欠伸をしつつ、うーんと腕を上に挙げる。
…なんだか声がすごく高かった気がするぞ?
気のせいかなぁ、寝ぼけてるのかも。
欠伸のせいで目尻に涙が溜まったので、ぐしぐしと手でこすった。
あれぇ、私の手ってこんなにプニプニしてたっけぇ…
そんなことを思いつつ、辺りを見渡した瞬間、私はビシリと固まった。
眠気でボンヤリしていた視界がどんどんクリアになるにつれ、私の心臓はどくどくと早くなっていく。
眠気なんて一気に吹っ飛んだ。
あれ?あれあれ?なんで?
なんで私…
「もりにいるのぉ…?」
落ち着いて深呼吸して、もう一度辺りを見渡しても見える景色は変わらない。
目の前には木、木、木…
見える範囲は全て見知らぬ植物で覆われていて、上を見上げるとキラキラと木漏れ日が降り注いでいた。
「えーっと、ゆめ…では、にゃい……?」
お約束かな?って思ってほっぺを思いっきりつねってみた。
痛い。
しかもものすごくプニプニしている…!
いや、私が太ってるからとかじゃなく、こう、子供特有のプニッともちっとしたあの感触というか…!
…子供特有……?
「まちゃかっ!」
ものすごく嫌な予感がして、思わず自分の手を眼前に持ってきた。
そこにあったのは、小さな小さな子供の手。
あるはずの私の大人の手なんかどこにもなかった。
自分の手であろうその小さな手をじっと見つめて、思わず呆然とつぶやいた。
「ちぃちゃく、なってる…?」
朝霞 光希、23歳。
目が覚めたら森にいて、しかもちいさな子供になっていました。
…なんて、信じられるわけ…ない、よねぇ?