勇者として
勇者として旅をして半年がたった。最初は戦いやこの世界の俗世に疎かった俺もしっかり慣れてきていた。
今日、俺たちのパーティーは依頼達成の祝いに近くの酒場にきていた。
「ナオキ様、先ほどの依頼でケガをされたようですが大丈夫でしょうか?何でしたら私の回復魔法で治療いたしますが?」
俺を心配そうに覗きこんできたこの娘は我がパーティーのマジックキャスターのルナだ。
彼女は俺が勇者として旅に出てすぐの町で出会った教会の孤児だった。
その町の教会では将来子供たちが一人でも生きていけるように魔法の訓練や剣術、武術の他に魔法工学など様々な教訓を行ってた。
そしてある事件をきっかけに彼女は俺のパーティーのメンバーとして一緒に旅をする事なったのだ。
パーティーメンバーとしては一番古い付き合いになる。
「大丈夫だよ。このくらいかすり傷だし1日に制約のある貴重な回復魔法をこんな事で使っていられなよ。」
俺はルナの申し出に断りをいれた。
「しっかし勇者に選ばれたのに魔法適正がからっきしなんてお前、ホントに世界を救う勇者かよ!」
「仕方ないだろう。使えないものは使えないんだから!」
「剣の腕だって俺が鍛えてやるまでド素人だし身体能力も対して高くない、最初にお前を見たときは何の冗談だと笑ったもんだ」
俺に辛口の評価を突きつけるガタイのいいこのデカ男は俺のパーティーのガーディアンナイト アルベルト=スミス。
俺の剣術の師匠でもあり元帝国騎士団第7師団の団長でもある。ルナと旅をしてる時にパーティーメンバーを募集している所に絡んできて俺と決闘をし、見事に俺を半殺しにしてくれた苦い思い出もある。けどボロボロになっても何度でも向かってくるバカな俺を気にいってくれたらしく俺に剣術の指南をしてくれながら俺のパーティーメンバーに加わってくれた血の気が多いけどいいやつである。
「けど、この前はついにお前との模擬戦で勝ったけどな!」
「あんなのはマグレに決まってんだろーが!何だったらこのあともう一戦やってみるかコラ!」
「上等!もはや俺の方が強いってことわからせてやる!」
「あんたらーせっかくの祝いの場なんだからー仲良くしなよー」
「ウルセェ!引っ込んでろ弓女」
弓女とアルベルトに呼ばれている彼女はアマンダ=ファン=エルデウッド。
人間とエルフのハーフつまりハーフエルフである。半端ものとして扱われるハーフエルフはこの世界ではやはり不当な差別を受けていた。けれど彼女はその能天気さもあってか全く気にした様子はない。彼女と出会ったのは最近だが酒場で酒を飲んでいた彼女にアルベルトが勝負をふかっけたのが出会いだった。彼女はその華奢な見た目に反してかなりの酒好きでアルベルトとのの見比べで圧勝するほどに酒が強い。
ハーフエルフだからとしり込みしない俺たちのパーティーが居心地がいいという理由でパーティーメンバーに加わった。余談だが弓の腕はメンバー全員が一目でわかるほどの超一流の名手である。
「どーどーそんなに怒らないー怒らないーお酒が不味くなるよ!アル」
「その呼びかたやめろつってんだろうが!」
「いいじゃんーかーわーいーいーから」
「よくねぇ!」
「お二人とも本当に仲良しですね」
「よくねぇーーーー」
「でしょーーーーー」
ルナの言葉に全く逆の返答でアルベルトとアマンダの声が鳴り響いた
勇者としての実力はまだまだだが、いつか他の勇者たちと一緒に戦えるようにならなければと強く思う。幸い俺は仲間には誰よりも恵まれていると自負している
「お前らはしゃぐのはいいけど二日酔いで明日のクエストにいけないとか勘弁してくれよ」
「ダイジョーブ!私はお酒いくら飲んでもーよーワーナーいかーら
」
「すでに酔ってんじゃねーーか弓女!」
滑舌が少しまわらなくなってきたアマンダをアルベルトが叱っていた。
「ナオト様、明日の依頼は確か国王様から直属の依頼でしたよね」
「あぁ、俺が勇者になって初めての王からの依頼だ。絶対にやり遂げないとな」
「そうですね。では明日に備えて早めにお休みしましょう」
「そうだな。そうするか、アルベルトとアマンダもあの調子じゃ長引きそうだしな」
ルナの提案を受け入れ俺とルナは先に自分達の部屋で休むことにした。