ニートの旅立ち
初投稿です。
拙い文章でしょうが、よろしくお願いします!
俺の名前は湊 海兎。俗に言う、ニートと呼ばれる生き物である。
ニートとは、労働意欲がなく、通学や家事を行っていない者を指す(つまり今の俺だな…)。
そんなダメなニートにも朝はやってくる。
晴れきった朝の陽射しが、部屋のカーテンの隙間からこぼれてきた。
普通のサラリーマンや学生は朝起きて身支度をし、学校や仕事先に向かう時間だ。
――そろそろ起きよう。
まずベッドから起きて顔を洗い、母親が作り置きしてくれた朝食を食べる。そこからいつもならテレビを見たり、ゲームをしたり、スマホで小説を読んだりとダメダメな1日のサイクルが始まるわけだが、、、
「いい加減外に出て働かないとまずいよなぁ〜」
朝食のサラダを食べながら、ついそんな独り言が出てしまう。
海兎は今年で20になる。いや…今日誕生日を迎えたので20歳になった。なってしまった…
そんな20歳になった彼も、別に最初から家に引きこもってニートをしていた訳ではない。彼は小学校、中学校、高校と順当に進学し、その中で友達も沢山できたし勉強もそれなりに出来た。
充実した学生生活だったと言えるだろう。
しかし、高校3年生の時、彼の人生の分岐点がやってくる。
進学か就職か、決めなければいけない。
教師からはいつも「そろそろ進路は決まったのか?」、「まだ決まってないのはお前だけだぞ?」と言われ、学校から帰宅しても両親が帰って来たら教師と同じ様な事を言われる毎日だ。
――もううんざりだ、聞きたくない。早く進路を決めて楽になりたい。
そして海兎は悩み抜いた末に、就職する事を決意した。なぜ進学ではなく就職を選んだのかというと、「その方が楽そうだから」全く、、、ふざけた考えである。
そんな彼も就職先を決め内定を貰い、高校を卒業した。
そして初出社の日、清々しい気持ちで会社に行った彼は、新入社員として皆から歓迎される事になる。
ある1人を除いて……
入社してから1ヶ月を過ぎた頃、それは起こった。
とある同僚の、そうだなぁ、名前は仮にTさんとしておこう。
そのTさんはデスクワークをしている俺の横の椅子に座り、別の上司の悪口を俺に話しだした。
Tさんとは偶に休憩所で挨拶をするくらいの仲でしかないのだが、海兎は突然の事態に動揺し「は、はい…そうですね」と返答する事しか出来なかった。
その日以降、Tさんは暇な時に来て上司の愚痴を言うようになり、その光景を見ていた同僚などから噂が広がり始めた。
「海兎さんとTさんって新入社員の癖に上司の悪口を言ってるよ。」
最初は同僚の間でしか広がっていなかった噂が、時が経つにつれ上司達にまで伝わった。
それからしばらくして、海兎とTさんは 社長に呼び出され、もう会社に来なくてもいいと告げられる。
後から、何故上司の陰口を俺に話しかけたのかTさんに尋ねると
「俺さぁ、この会社最初から合わなかったんだよね。で、辞めようと思ったけど1人で辞めるのは何となく嫌だったから、気の弱そうなお前を道連れにしようと思ったって訳。」
Tさんは最後に俺に手を振り雑踏の中へ消えて行った…………
――そんな俺は、仕事もクビになり、再就職先を決めるのもどうでもよくなり今では立派なニートだ。
だけどもうお酒もタバコも吸える年齢になってしまった。
人間、いつまでも子供のままで遊んでいられるかと問われれば、NOと答えるだろう。
外に出よう。まずはそこからスタートだ。
寝巻きからロング丈のTシャツ、下は黒のスキニーパンツに着替えて玄関まで向かう。
1年半ぶりの外出に、ドアノブに手をかけた彼の右手は震えている。(中二病ではない)
大丈夫だ。誰も自分の事なんか気にしない。だから早く静まれよ、俺の右手ーーー!!!
ガチャッ
「うわっ・・・」
突然、今まで微動だにしなかった扉が独りでに開き、マヌケな声を出してしまった。
「ねぇ、そこで何してんの?」
扉の向こうにいたのは、妹の湊 空、高校2年生だ。
――それにしてもどうして家に帰ってきたんだ?
「ねぇ、そろそろそこ、どいて欲しいんだけど。ドアの前に立たれると入れないし。」
海兎は言われた通り、扉の前から退けたあと、
「ああ、ごめん。それよりなんで帰ってきたんだ?具合でも悪いのか…?」
「ちょっと忘れ物してね。ていうか兄貴は玄関で何してんの?」
「いやさ、今日で俺も20歳になるわけだろ?だから先ずは外に出ようかなって思ってさ。」
空はつまらなそうに、「ふーん」と呟いた後忘れ物を取りに二階にある自室まで走って行ってしまった。
…………
さぁ、扉は開かれた。家から出よう。
海兎は家から1歩2歩と踏み出し、1年半ぶりに外に出た。
キュィィィィィ!!!!!! ダンッ!!!!
外に出てから約20秒後、居眠り運転していた車に撥ねられ、湊 海兎の20年に及ぶ生涯の幕は閉じるのだった………