プロローグ
俺は『最弱』だ。
そんなことは、全世界共通認識だった。
しかし、七歳の頃、俺は唐突にこう思った。
『俺って強いんじゃね?』
なぜそう思ったかはわからない。
だが、調子に乗った俺は、当時ガキ大将的な存在だった男の子に、喧嘩を売った。
ボコボコにされた。
しかも、ガキ大将本人ではなく、いつも隣にいるあのよくわからない立ち位置のやつにだ。
そんな奴にボコボコにされた。
いや、ボコられたくらいならまだよかった。
俺はボコられた挙げ句、服を脱がされ全裸で馬車の後ろに巻き付けられた。
馬車は走り出し、俺のスモールマグナムが村中に公開された。
周囲からは、笑いや哀れみの目が向けられた。
しばらく馬車は走り、俺を拘束していた縄が解け、俺は地面に落ちた。
仰向けで涙を浮かべる俺の顔を、同い年くらいの少女が覗き込んだ。
いや、当時はまだ幼女か。
短い黒髪に綺麗な青い瞳をした彼女は、俺に手を伸ばし『大丈夫?』と、問いかけた。
プライドの高かった俺は、自力で立ち上がった。
「私の服貸してあげるから」
「いらねーよ、そんなの」
「でも、そのままだと──」
「いらねーつってんだろーが!」
俺は彼女に殴りかかったが、いとも簡単に受け止められ、返しのビンタを食らった。
「もー、そんなんだからダメなんだよ!」
幼女に力で負け、俺は自分が最弱だということを、改めて認識した。
その事実に、プライドはズタズタになり、思わず号泣してしまった。
その出来事をきっかけに、俺はプライドを捨て、『最強のスキル』を使うことにした。
今までは、どこか卑怯な感じがして使わなかった。
だが、プライドを捨てた俺に、そんなことは関係ない。
この力で、あんなことやこんなことを、ぐへへへへ。
最強と言っても、誰が使っても最強というわけではない。
俺が、最弱である俺が使うからこそ最強なのだ。
固有スキル『運命の叛逆者』。
それが俺の持つスキルだ。
その能力は、不可能を可能に、可能を不可能にする力。
弱ければ弱いほど強くなり、勝率が低ければ低いほど高くなる。
そして、『最弱』の俺は『最強』になる。
俺はその力を使い、ガキ大将どもをボコボコにしてやろうとした。
が、アミに止められた。
アミというのは、俺にビンタをかまし、路上で全裸で人目のある中で俺を号泣させた張本人だ。
あれから何だかんだ仲良くなり、お互い親のいない同士共同生活を送っていた。
まぁ、親がいないのは、この村じゃよくあることだ。
治安も悪く、貧乏人が集っただけの村だからな。
だが、そんな環境の中アミは逞しく生きていた。
物を盗むことしかできなかった俺らとは違い、自分で何かを作って売っり、野菜を育てたりして、生活していた。
とても子供のできる芸当とは思えなかった。
どこか大人っぽく、逞しく思えた。
見た目は子供、頭脳は大人! みたいな。
そして、十年たった今、ようやく体に大人っぽさが馴染んできた。
短かった髪は長く伸び、まな板だった胸もボン! と成長した。
白髪の俺とは違い、見た目も地味で目立たなく、大人しい性格をしている。
そのため、あまり人前に立つことを好まなかった。
だから、そんなアミが『王選』に出ると言ったときは驚いた。
まだ十七だというのに王選なんて⋯⋯。
動機を聞いたところ、
「私も異世界人の端くれだから、主人公らしいことしないとね!」
と、わけのわからない供述をしていた。
そもそも、王選なんてものは貴族の出るもので、俺らみたいな貧乏人が出ても、権力で握り潰されるだけだ。
誰もがそう思った。
しかし、アミはどこから得たのかもわからない、農業や畜産業の知識で、絶大な支持を得た。
一部の貴族もアミの見方をし出し、貧乏人たちも強くアミを推した。
なんと驚くことに、アミは本当に『王』になった。
そして、俺は王のコネを使い、聖騎士になった。
本当にアミ様様だ。
アミ様ありがとうございます!
一生ついて行きます!
靴も舐めます!
踏まれても文句言いません!
そして、ここからようやく話が進む。