第二話【フェア-ウェル】
結局なんだかんだあって文集は書き終え、それから早くも四ヶ月が経った。
朝七時頃、亮誠は起床した。起床後すぐに二階にある自分の部屋を出て、朝食の準備をした。現在、家には亮誠一人しかいないため、朝食はすぐに作り終わり、食べ始めた。
朝食を食べ終えると、登校の準備をして、八時過ぎなに荷物を持って家を出た。
「行ってきます」
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学校に着くと、校門には「卒業式」と書かれた紙が貼られていた。
教室に入ると「3-A卒業おめでとう」の文字と、その周りには早くに登校してきた人たちの寄せ書きが書かれていた。そして、黒板から机に目を移すと、そこには卒業アルバムと卒業文集がそれぞれの机に置かれていた。
卒業アルバムをざっと見た後、卒業文集に目をやった。目次は、最初に校長先生から、そしてその後からは出席番号順に並んでいる。それぞれの夢について書かれた文集。そして十人十色の夢。たしかになりそうという人もいれば、意外だと思う人もいる。
さらにページを捲ると「星野亮誠」と書かれたページがあった。そこに書かれていた字は汚く、慌てていたのが見て取れた。それは自分でも汚いと思う程だった。
「あ、星野君も寄せ書き書いてよ」
黒板で寄せ書きを書いていた一人の女子が亮誠に書くよう言った。
「うん。分かった」
読んでいた文集を後にして黒板に向かう亮誠。開かれたページには亮誠の夢について書かれていた。
小学五年までサッカーをしていたこと。医者を目指していたことなどが書かれていた。そして最後にはこう書かれていた。
~僕には夢が無い~と。
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卒業式は思ったよりも早く終わり、式からの退場後、泣いている人が多くいる中、亮誠は悠馬に声をかけられた。
「いやあ、泣いちゃうよ。もう卒業なんてね」
悠馬は目を擦りながら言った。
「嘘つくなよ。まあ俺は受験で受かって報われたっていうのを改めて思って泣きそうだわ」
亮誠は笑いながら答えた。
「そういや、高校どこだっけ。俺はスポーツ推薦で受かったサッカー強豪校だけど」
その質問に対して亮誠は「すぐそこ」と一言で答えた。
「あらそう。てことは、これでバラバラだな」
悠馬は適当に返し、寂しげに続けた。
それを聞いて亮誠も無性に悲しくなった。