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9話『ほっこり第五小隊』

今日はこれで最後の更新です。


次の日、千里は第五小隊が早朝訓練を行うソフェルト王国外周辺にある森林に来ていた。

ちなみに、ソフェルト王国が千里達を召喚した国である。



「…あの、ユフィさん」


「なによ千里!」


「なんで第五小隊の早朝訓練は森の中なんですか?」


「そんなのうちが弱小小隊だからに決まってるでしょ!考えてよね!」


「すいません…」



圧倒的理不尽を前に謝ることしかできない千里。

昨日廊下ですれ違った赤毛ツインテールの美少女——名はユフィと言う。



ユフィはソフェルト王国の第二王女、つまり王族な訳だが何故か第五小隊の隊長を任されている。

そして現在、森林の中で訓練を行っているせいか若干不機嫌で、千里に八つ当たりのように怒鳴っているのは気のせいではない。



「みっともないですよユフィ様。新人に八つ当たりするなんて隊長らしからぬ行為です」


「だってカナリハ…!まさかこの弱そうな男が私たちの小隊に来たのよ!?そりゃ八つ当たりもしたくなるわよ!」


「ユフィ様。実際、私たちは弱いですよ」


「ぐぬぬっ…」



ユフィを宥めている女性は緑髪を腰まで伸ばした綺麗な美女——名はカナリハと言う。

お姉さんのような存在の彼女がこの第五小隊のストッパーであると、昨日の時点で千里は気づいていた。



「すいません千里君。ユフィ様は少し世間知らずでして…」


「大丈夫ですよカナリハさん。昨日の時点で察してます」


「ちょっと!どういうことよ!」



突っかかってくるユフィをサラリと避けていると、後ろから何者かに羽交い締めにされた。

その際に背中に柔らかな二つの山が当たり、千里は顔を赤くした。



「やっちゃえユフィ様!!」


「ちょっ、クラミィさん!?や、やめてください!」


「おっ、なかなか強いな!でも離さないぜ!」



男口調で行動まで男っぽい茶髪ショートカットの巨乳美少女——名はクラミィと言う。



カナリハ同様、ユフィとは昔からの友人で今はカナリハと共にユフィの所属する第五小隊に属している。第五小隊や聖王国騎士団のムードメーカーだったりする。



「良くやったわクラミィ!食らいなさい千里!ユフィパンチ!」


「ぬぐっ!?……あれ?痛くない」


「嘘よ!?私の渾身のユフィパンチが…」



羽交い締めにされている千里の顔面に拳を叩き込んだユフィだったが、もともとユフィは魔法使いで筋力などは貧弱なので、千里は痛くも痒くもなかった。



「この!このっ!」



何度も千里の顔を殴るが、全く効く様子は無くユフィがどんどん疲れていく。



「はぁ…はぁ…もういい…」


「はいよー!大丈夫千里?」


「大丈夫です。って言うか、もう俺にくっつかないでくださいよクラミィさん!本当に洒落にならないですよ!」


「にひひ、ごめんごめん。ほら第五小隊ってウチら女子三人だけだったし、男子がいるとテンションあがるじゃん?」


「上がらないですよ…」


「よし!クラミィも来たことだし訓練を始めるわよ!」



切り替えの早い王女様に呆れる千里。

しかし、不思議と嫌いにはなれない雰囲気を醸し出している。

これがユフィという少女の魅力なのかもしれない。



「まずは走るわよ!騎士団は体力が命!」



ユフィの掛け声に三人で手を挙げてオォォ!と叫ぶと訓練が始まった。



「はっ…はっ…いつもこんな事してるんですか!」


「そうですね。だいたいこんな感じですよ」


「そしていつもの通りだと…」



クラミィが前を指さす。

前には元気よく走り出したユフィが居るはずなのだが…。



「はぁ…はぁ……きゅ、きゅうけーい…!」



なんと既に膝に手を置いて立ち止まっていた。走り始めて五分程度しか経っていなかった。



「えっ!?早くないですか!?」


「ユフィ様は魔法の天才なんだけどな、体力が無さすぎて魔法を連発で使えないんだ。だから第五小隊にいるんだよ」


「そ、そんな理由が…」



第五小隊の隊長が第二王女。

理由は分かったがどうして騎士団に入ったのかが分からない。



「そこまでして騎士団に入る意味あったんですか?第二王女だったらわざわざ入らなくても…」


「それよ!第二王女第二王女って…!私はユフィ!第二王女って名前じゃないのよ!」


「え?」


「私は皆に私という存在を証明したいの!お父様にもお姉様にも、この国の人々にも!第二王女は第一王女よりも劣ってるなんて二度と言わせないわ!」



そう言うとユフィは一人で走って行ってしまった。



「私が追いかけますね」



すかさずカナリハが追いかけて行く。



「えっと…」


「分かっただろ?ユフィ様はいつも第一王女と比べられて、劣ってると言われてきた。だから見返すんだって、騎士団に入ったんだよ」



クラミィが感慨深そうに言う。



「そうだったんですか…すいません俺…余計なこと言っちゃいましたね」


「大丈夫だって!ユフィ様はああ見えて責任感はあるんだから!」



クラミィがそう言うと向こう側から何が近づいてくる音が聞こえてきた。

草を掻き分けて出てきたのはユフィだった。



「千里!サボってないで私について来なさい!あんたは私の後輩で部下なんだから!」


「ちょっ、待ってくださいって!」



手を強引に掴まれて走り出す千里。



第五小隊…居心地は悪くないかな…と千里は心の中で思うのだった。

読んでいただきありがとうございます!



ユフィ…赤髪ツインテールの王女様(並)

カナリハ…緑髪ロングヘアーのお姉さん(並)

クラミィ…茶髪ショートカットの男勝り(巨)

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