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6話『ユリエスVSディラン』

戦闘シーンは苦手です。

伝わり難いかも知れませんが暖かい目で見守って下さい。

「まずはお前達の実力が見たい。腕試しという事でディランと模擬戦をしてもらう」



グラディアスがそう告げると、早速反発が起こった。



「待ってくれないか。僕はディランさんよりも強い自信がある、相手はグラディアスさんに頼みたいな」


「いや、言っておくがディランはこの国で俺の次に強いぞ?舐めていると痛い目に遭うぞユリエス」



流石のユリエスもグラディアスの次に強いと言われて口が塞がったようだ。



「…分かったよ。それじゃあまずは僕から行かせてもらうよ」


「めんどくせぇけど相手してやるよ、ガキでも勇者だからな、手加減はできないぜ?」


「問題ないね」


「俺らは観戦席で見学だ」



グラディアス、ネメリアと共に訓練場に設けられた観戦席に座る。

その際、千里は雪の隣に座れるように動いた。



「…雪?」


「あ…ご、ごめんね千里君…さっきはいきなり逃げちゃって…」


「いや、俺はいいけど……雪は大丈夫なのか?」


「う、うん…大丈夫…だよ」



雪は明らかに大丈夫そうではないが、千里は深く聞くのを躊躇った。



(ガットさんも言ってたよな。今はまだ隣にいてやるだけでいいって…)



今はユリエスとディランの模擬戦だ。

そこに集中しよう。



千里は真正面を見た。

そこでは、ユリエスとディランが睨み合いをしている所だった。



(俺は何もできないただの高校生だ。なら、ここですることはただ一つ。あいつらの動きを見て学ぶことだ)



千里は注意深く、それこそ些細な動きまで見逃さないように観察した。



「行くよディランさん。ハァ!!!」


「っ!?」



先に動いたのはユリエスだった。

手に持っていた片手剣を縦に振るだけでその剣先から光の刃が放たれた。



これにはディランも驚いた様子だ。



「すげぇなソレ!いい飛び道具だ」


「そう言いながら軽々と避けるディランさんに僕は驚いてるよ」



内心本当に驚いていたのはユリエスだった。

前の世界ではこの技『一閃』を使えば大抵の相手は一撃で葬れたのだ。

しかし、ディランは『一閃』を何事もなかったかのように避けたのだ。



「最初に驚いたのはフリだったのか…。ふふっ」



つい、口角を上げてしまう。

前の世界ではユリエスと対等に戦える相手はいなかったのだ。

そのせいで毎日を退屈に過ごしていた。

しかし、この世界に来て既に二人目だ。

ユリエスは戦う喜びを思い出し始めていた。その表情はまるで、おもちゃを与えられた子供のようだった。



「あははっ!いいねいいね!」


「っ…ちっ、あの飛び道具は面倒だな」



ディランは『一閃』を放ちまくるユリエスに牽制した。



「我が身に宿れ『ブースト』」



これまで回避に徹底していたディランが突然スピードを上げた。まるで消えたようにその場から移動し、ユリエスの目の前に立った。



「なっ…!?」


「チェックメイトだ勇者のガキ」


「くっ!?」



そしてディランは、どこからともなく大斧を取り出してユリエスに斬りかかった。

ユリエスは片手剣で防いだが大斧の勢いに負け訓練場の端まで飛ばされてしまった。



「はっ、どうした?これで終わりか?」



モクモクと立ち込める砂煙。

その中から一際輝くユリエスが現れた。

その姿は覚醒した勇者のように神々しかった。



「やるじゃないかディランさん。僕も少し本気を出させてもらうよ」


「へぇ…まだ動けたか」


「あの程度でやられる程勇者の肩書きは軽くないんだよ…!秘剣飛雷術『十閃』!」



吠えたユリエスは片手剣を先ほど同様に縦に振り下ろした。すると、剣先から十本もの光の刃が飛び出した。一閃よりも大きく、速かった。



「雷迅よ我が身を守れ『サンダーシールド』はぁぁぁ!!!」



素早く詠唱したディランは自分の身体の周りに雷のシールドを展開した。

『十閃』を全て受けきると、シールドはパリンッと音を立てて砕けた。



「うわ…ディラン団長のシールドが壊れたの始めて見ました…」


「あぁ、ユリエスは相当の腕を持っている。あいつなら第一大隊でも活躍できるだろうな」


「そうですね、私もそう思います」



ネメリアとグラディアスの会話を聞いていた千里が話に割って入った。



「あの…第一大隊って、なんですか?」


「まだ言ってなかったな。聖王国騎士団には大隊、中隊、小隊があるんだ。その中で第一大隊が一番上の隊になる。一番下は第五小隊だな」


「つまり、ユリエスは一番上の隊に入るってことですか?」


「まあそうなるな。この模擬戦は隊への振り分けを見定めるものでもあるんだ」



予想外の展開に開いた口が塞がらない千里。



(…俺、絶対に第五小隊になるんだろうな)



千里が放心していた頃、ユリエスとディランの戦いは終盤に差し掛かっていた。



「ハァァァァ!!!」


「ちっ…さすがに…キツイな…」



ユリエスから放たれる無数の『十閃』。

ディランは徐々に押され始め、今は防戦一方になっていた。

そして、この状態を生んだ原因は魔力の量だった。



ディランの魔力は多い。一般の兵士とは比べ物にならない程の量はある。

しかし、それ以上にユリエスが多かった。

前の世界で勇者をやっていたこともあり、その魔力量は底を知らない。



「…我が身に宿れ『オーバーブースト』」



ディランが再び詠唱する。

ユリエスの放った『十閃』を全て避けて、間合いを詰める。



「ふっ、僕が飛び道具だけだと思わないことだね」


「オラァ!!!」



ガキンッと大斧と片手剣がぶつかり合う。

この時、ニヤリと顔を歪めたのはディランだった。



「なにを…っ!?」


「わが身に宿る力を今解き放て『インパクト』!」


「ぐっ…かはっ…!」



ディランの武器はどこにも触れていないのに、ユリエスは身体に凄まじい衝撃が走った。

ユリエスはその場に倒れると少しだけ頭を動かしてディランを見上げた。



「…衝撃波か…やられたよ…僕の負けだ…」



ユリエスが負けを認めると、観戦席からグラディアスがやって来た。



「いい戦いだった。この模擬戦はディランの勝ちだな。今から衛生兵を呼ぶ、ユリエスには医務室に行ってもらうぞ」


「…あぁ」



ユリエスは負けた。

初めての敗北だった。

しかし、何故か怒りや憎悪などはなかった。

あったのは興奮と悔しさ、そして好敵手の出現に対する喜びだけだった。


無属性魔法『ブースト』身体能力を上昇させる効果


無属性『オーバーブースト』身体能力を大幅に上昇させる効果


雷属性『サンダーシールド』雷の薄い膜で攻撃を防ぐ。水に強く土に弱い


無属性『インパクト』相手に強力な衝撃波を与える

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