4話『千里の力』
突然の展開ですがついて来ていますか?おかしな所があれば報告お願いします!
「はぁ…はぁ…どこ行ったんだ雪…」
食堂から飛び出した千里は王城の中を駆け回っていた。
驚く兵士や使用人に謝りながら走っていると、大きな扉が付いた部屋の前まで来た。
(ここは…?いかにも怪しい扉だな)
千里は基本的に臆病者だ。
触らぬ神に祟りなし、面倒ごとや危険なことに近づかない性格なのだ。
しかし、今の状況。
泣いている雪を追い、異世界という不安に満ちた世界で生きている。
様々な要因が重なって、本来の千里なら絶対に開けないであろう大きな扉を開けて、部屋の中に入っていく。
「暗いな…ん?」
どうやらこの部屋は書斎のようだ。
壁に沿って置かれた本棚には数え切れないほどの量の本が置かれている。
「うわ…全く読めない…」
適当な本を開くがこの世界の文字で書いてあって読めなかった。
「ここには用はないかな…」
持っていた本を本棚に戻す。
その時、戻した本を少し奥に押しすぎてしまった。
「おっと……おぉ?」
ゴゴゴゴゴゴ…
まるで漫画のように本棚が動き、地下室へ続く階段が姿を現した。
「嘘だろ…ベタ過ぎないかこれ?」
さすがの千里もこれには警戒した。
こういう隠し通路は危険な武器や禁忌の魔法の書が隠されていたりするのだ。
(いや…でも……気になる…)
やはり異世界の影響か、臆病者の千里でもこの状況下で隠し通路を降りない…という選択肢は無かったようだ。
警戒心マックスで階段を降りていく。
(暗っ、暗すぎ!前がほとんど見えない!)
それでも、ここまで来たら後には引けない。
隠し通路の奥の方になにやら光るものが見えた。
「ん?なんだあれ」
光る物体に近づき、それに手を伸ばす。
「っ!?…な…にが……ぉ…きて………」
突然、千里の意識が遠のいていく。
千里の目の前が真っ暗になる瞬間に、光る物体がとてつもない光を放った。
千里は意識を失ってその場に倒れるのだった。
「ほれ、目を覚まさんか」
「うぅ……ここは?」
全てが真っ白な世界で目を覚ました千里。
目の前には白ひげを蓄えた優しそうなおじいさんがいた。
「えっと…貴方は?」
「ワシは全能神ゼウス。高良千里君、君に伝えたいことがあって神の世界に魂を呼ばせてもらったぞ」
「全能神?…神?」
理解が追いつかない千里にさらに話しかけるゼウス。
「いいか千里君。君は必然的にあの世界に召喚されたのだ。しかし、他の5人はとても強い力を持っているのに対し君だけがただの一般人なのは、おかしい話だろ?」
「そう…ですね。…やっぱり他の5人は普通じゃないよな。雪は動物と話せるって言ってたし…」
これで納得がいく。
召喚された時に自分だけが狼狽えていたのだからおかしいと思わない方がおかしい。
「それで、えーと…千里君、君は一般人だ。それは間違いない。神に誓って間違いないのだ」
「神は貴方でしょ…」
「そうだったな。それでな、君は一般人なのだが、しかし一つだけ一般的ではない力が君の中にある」
神妙な顔で話すゼウスを見て思わず息をのむ千里。
「雪が言っていたのは本当だったのか。…そ、それで…俺の力って?」
「君の力は、超無限成長だ」
「超無限成長ぉ?どういうことですか?」
全く見当がつかない。
もっと凄い力があると期待していた千里はガッカリしてしまった。
「超無限成長…そのままの意味だ。君の成長は止まる事がない。君は私生活の中で、あれ?俺こんなにできたっけ?と思ったことはないか?」
ゼウスにそう聞かれて確かにと思う千里。
「そういえば…昔から少しかじったくらいである程度なんでも出来ましたね。でも超無限成長っていうほど成長してませんよ?」
「それはそうだ。ワシがその力を千分の一に制御しておったからな」
「千分の一!?制御しすぎでしょ!」
「しかし、それでも君は苦手なことがないだろ?」
「あ…」
「それほど強力な能力なのだ」
千分の一も制御されているこの状態。
昔、サッカーを数分やっただけでプロのスカウトが来たことがある。学校の授業で歌を歌っていたら周りの人が思わず聴き入ってしまう程上手くなっていた。勉強も少し集中すれば一回の授業だけでなんでも覚えることができた。
これが…全部俺の能力が影響していたなんて。
「そして、君はあの世界に召喚されてしまった。こうなってはもう制御などしている場合ではない。出し惜しみすれば魔王には勝てない所か、途中で死んでしまうだろう」
「ま、マジですか!?死ぬんですか俺!」
「だから、ワシが制御を解除するのだ。それを伝えるために今日はここに呼んだのだ」
「それじゃあ、あの書斎の奥にあった隠し通路は…?」
「ワシが瞬間的に作った部屋じゃな。書斎はもともとあそこにはないぞ」
つまり、最初から全部ゼウスの手の上だったというわけだ。
「…そうですか、教えてくれてありがとうございました」
「礼には及ばない。そろそろあっちの世界に帰すぞ?」
「あぁ、はい。いつでも良いですよ」
「…一つ忠告だ千里君。他の勇者は絶対に死なせるな。一人でも死ねば……」
ゼウスの話の途中で意識が朦朧とし始める。
(ちょ…まっ…なんて…言った…んだ…?)
次第に意識は薄れ、プツリと途絶えた。
ゼウス…白髪白ひげの優しいおじいさん。
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