6話 [死神の力]
刃と刃がぶつかり合う
片方の刃は、神殺しの魔獣フェンリルの牙で作られたブラッドファングセイバーもう片方は刀神の愛刀であったムラサメである
刀神は王牙が最初に殺した神である
当時、黙示録を倒せる力を求めていた王牙は刀の神である刀神を訪ねた、否、暗殺しに行った
だが、刀神の剣気は虫一匹近づける事も出来ないほどだった
殺伐とした空気の中、刀神と死神は一晩に渡り戦ったが、一方的に押されていた。
その頃の王牙は何の力もない名前だけの神だった、王牙はそんな自分を憎んだ力が欲しかった力だけを求めた。だから、刀神を殺した。
一瞬だった、油断した刀神は気を緩めたその隙に王牙は刀神の腸を龍化した腕で切り裂いた
頭を砕いた
心臓を突き破った
血が溢れ出る、噴水のように
「綺麗…」
刀神は最後にそう呟いたそうだ
刀神は王牙によって殺された
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「ムラサメさんの刀をてめぇが持つ資格なんかねぇ!ただの殺神者が!」
「知ラネェナ、モット面白イ事言エヨ」
龍化した王牙と帝鬼がぶつかり合っていた。
「龍神!来やがれ」
帝鬼の目の色が黒から青に変わり不気味に輝きを放った
「強い奴と戦うのは久しぶりだなぁ」
「龍神…カ?」
龍化した帝鬼と龍化した王牙が剣で拳で殴りあう
「クソッ、ツエーナ」
「…あぁ?」
王牙が険しい顔をした
それに帝鬼は違和感を感じ間合いを取る
「てめぇ、なんか企んでんだろ」
「アァ?龍神サマヨォ、アナタニナンカ勝テルワケ無イデスヨ」
「……あぁ、そういう事か」
「テヘペロ…」
「今までのは、遊びだった…か…」
王牙が満面の笑みを見せて血色の目を細めた
そして、周りが赤く染まり背中の骨を6本全てを突き出す
「龍神様ナンカガ、勝テルワケ無イダロォガ」
骨を帝鬼に向かって目に見えない速さで叩きつける
血が舞った
血が帝鬼の腕を貫き帝鬼の右腕が空高く飛んだ
「あぐわぁーぁあ?ぐふぁ」
さらに間合いが一瞬で詰められ帝鬼の顔に右拳が叩きつけられる
帝鬼の首から上が天に向かって飛ぶ
「ハハハハハハハハハハハハハハハ」
満足そうな顔で笑う王牙が見えたのが最後になり帝鬼の意識が薄れ、死んでもなお攻撃され続けた体が肉塊になった
満足した王牙は目の色が戻り龍化が解ける
「さぁて、イトリのとこへ向かうか」
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糸が張り巡らされたステージで
炎と音と双剣がぶつかる
「ちっ、勝てっこねぇな…」
「なんだ、そんなに強くないじゃない」
「口程にもない奴だな、イトリよ」
「うるせぇ」
真理亜にはその戦いは互角にも見えるが一方的にイトリが押されているのが疲れ方を見ればわかる、ステージの端っこでラファエルがあたふたしているのが見える
聞いたところによるとラファエルは癒し魔法しか使えないので戦闘には参戦していない
仲間の援護もこちらの援護もせずにあたふたしている事から戦わないと言ったのは事実なのであろう
「私は、何もできない…」
「ぐはぁっ」
イトリが吹き飛び壁にぶち当たる
「これで終わりよ」
「これで終わりだ」
「フレイムストライク」
「キル・メロディー」
炎と殺人音がイトリに襲いかかる
「もう…だめ…」
諦めた
そして炎が視界に広がった
「イザナミさんの炎です!」
ふざけ気味の声が聞こえて
目の前で起こっている事が理解できた
横から割り込んできた炎がラファエロの炎とガブリエルの音を焼いたのだ
「ねぇ?天使ちゃん達は何してるのかな?」
顔は笑っていても目は全然笑っていなかった
「王ちゃん…」
「あれが、王牙…」
「王牙、なのだな」
憤怒している王牙は黄泉の炎で自分の拳を焼きながらラファエロとガブリエルを睨みつけていた
「逃げるまで、時間をやろうカウントは10秒…10」
天使達は困惑した表情を見せて
ラファエルが逃げる事を勧める
「…9」
だが、戦って見なければわからないというガブリエル
「…8」
そこで、全員が疑問を抱いた…
「おい、帝鬼はどうした?」
「…7」
王牙は答えずにカウントを進める
体には傷一つない
「まさか…」
「…6」
「おい!王牙!帝鬼はどうしたと聞いているであろう」
「…5」
急に王牙の声が大きくなる
天使達は戸惑う
No.1の天使が何処ぞの死神に殺られるとは思えないだが、帝鬼が殺すと言っていた死神が無傷でここにいる。
導き出される答えは…
「…4」
「わかった、諦めよう、私達に勝ち目はない」
そう言って天使達去っていった
ラファエルだけが友好的に王牙に手を振った
王牙はやれやれといった表情で笑う
「なんで、あいつらがいたんだ?…」
「それはわからない…お前、あいつらと知り合いなの?ラファエルがお前の事をいたく気に入っている様子だったけど」
「ちょっとした幼馴染でな…」
真理亜は自分が何もできなかった無力さにがっかりしていた
王牙が来なければ確実にイトリはやられていた自分が助けられなかったから
自分じゃ助けられなかったから
「イトリ、お前、剣が…」
イトリの剣の刃にはヒビが入っていた
「あぁ、まぁ、安物だし当然か…」
真理亜は口を開く事は出来なかった
自分の無力さに失望していて王牙やイトリにどんな顔をして、どんな事を言えば良いのかわからなかった
「真理亜、気にすることはない。あいつらは天使の中でも最強クラスだ俺が殺した帝鬼もそろそろ生き返る頃だ」
「…でも、私は…」
「お前が何も出来ないのは仕方ないが、何か出来るように何とかするのがお前の目標になったはずだ」
「そんな事、言い訳みたいに言ってもかっこ悪いよ…」
「かっこ悪い」と言う言葉が正解だったのかはわからない、それに、それを考える事で更に自分に失望する事になる
「かっこ悪い?馬鹿か、かっこつける意味なんてないだろゼウスが正義なら、それに抗おうとする俺達は悪だからな!」
「悪…か」
「そう、だから神でも何でもないお前は邪道で戦えばいい、俺も邪道を使うしな」
「それ、励ましになってないよ…」
真理亜は俯いたまま答えた。
ここまで黙っていたイトリが口を開いた
「まぁ、何がともあれ天使達には勝ったみたいだし、ここでお前と戦っても勝ち目は無いことがわかった」
「イトリ…そう言えばお前、いつからこっち側についた?あいつらの正義を信じてただろ」
「あぁ、そーだな、…………あいつだったんだ」
さっきまで、普通にしていたイトリが少し暗い顔をして下を向いた
「帝鬼が、姉ちゃんを、シズクを…」
「そっか…あいつが直々に喋ったのか?」
「あぁ、丁寧に死に方まで教えてくれたよ。まぁ、龍化してたから龍の方だな性格がよろしいのは。それに、村を滅ぼした理由も…」
「それは、俺が」
「いや違う、赤城都市はゼウスにとって邪魔な都市だったんだ、科学が発達していたから…」
「そっか…」
王牙はそこまで話し、自分の家へ行こうと提案し王牙家へ行く事になった