2話 [無情の終焉]
静かな朝からその1日は始まった。
特に何か変わったことはなかったし、
星占いなんかも、不幸になる的なことは言っていなかったと思う。
しかし、今日…
8月16日という悪夢が静かに近づいて来ていた。
明日に希望を抱く者に絶望を、
今日に絶望を抱く者に希望を、今日はいつもより早くに終わり、明日は来ない
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朝から生徒達の元気な声が校内を響かせていた。
「真理亜!昨日のニュース見た?」
「ん?なにそれ?どんなニュース?」
「なんか、最近、でっかい機械?ロボット?見たいのを見たって目撃情報が多いらしいよ、なんか、黒くて所々白く光ってて、たくさんある足で歩くんだって」
「どうせ、デマでしょ、平和だねぇ」
そんな、ありえない話がニュースになるほど日本は今平和なんだと苦笑した。
「はーい!皆さん今日は転校生が来てます!入って来てください!」
先生が言うと、ざわついている教室の扉が物静かに開き、灰色の髪をした暗い雰囲気の少年が入って来た。
「詩紙王牙です。よろしく…」
少年は簡単にそう言うと、先生が
「席は〜、そうね、天津さんの隣で!」
先生が支持した私の隣の席に詩紙王牙が腰をかけ、休み時間になるとクラスメイトに囲まれていた。
「どこから来たのー?」
「どこに住んでるのー?」
「趣味は〜?」
などと質問攻めにされていたが、すぐに適当に返し隣に座っていた私に話しかけた。
「あの、えっと、天津さん?だっけ?」
「そうだよ、天津真理亜。どうかしたの?」
詩紙王牙は一瞬考えるような動作を行ったがよろしくとだけ真理亜に言った。
真理亜は不思議いつつも特に聞く必要もないと思い、聞かなかった。
時計が12:02に変わった。
詩紙王牙は誰にも聞こえない小さな声で「来たか」とつぶやいた。
すると、視界が真っ暗闇に包まれた。
「え?なにこれ?」
「まだ昼なのになんで暗いの?どうしたの?」
窓の外から巨大な機械音が響いた。
それは、徐々に近づいてくる。
まるで足跡のような音だった。
一瞬だった。
教室は白い光に包まれて…
気づくとクラスメイトは一人もおらず代わりに骨が1個2個3個4個5個6個7個8個9個10個11個……
目に映っているものが何かわからなかった
頭の中が真っ白になり、気づくと笑っていた。
目の前の光景が全然信じられない。
夢だとも思ったが少し体が痺れる感覚があり、絶望した。
「っ!?やっぱり、生き残ったのか!」
突然、聞き覚えのある声が聞こえた。
恐る恐る振り返ると、灰色の髪で黒瞳の少年
詩紙王牙が立っていた。
「詩紙くん?…」
「あぁ、まぁな」
「どういう…」
少年は目の前にいる機械を睨みつける。
機械の周りを不気味な白く光る球体が飛んでいる。
何本かの首?のような物をうねらせて首のような物の先端にある筒から光を放つ、おそらく先ほどクラスメイトを屍にした光だろう。
その機械の外見を表すならヤマタノオロチが一番適切だろう、しかし、首はヤマタノオロチよりも多く、生物では無いことは明らかだ。
「俺があいつをぶっ飛ばす、お前は死なないように頑張れ」
「ぁ?え?そんなこと…」
止めようとしたが、王牙はメカヤマタノオロチに向かって文字通り飛んでいった。
王牙の背中から歪な形の翼の骨格が背中の皮膚を突き破り飛び出した。
どういう原理で飛べているのかはさっぱりわからないが、王牙の背中に生えたものは確かに右と左に1つづつ生えた翼の骨格だった。
「消えろ…ゴミ…」
王牙がそう呟くと、背中の6本の骨がメカヤマタノオロチに向かって伸び、そのまま突き刺さった。
「これで最後か…」
そう言ったとほぼ同時にメカヤマタノオロチは光をなくし動かなくなった。
「これは、何なの?機械みたいだけど」
教室に戻って来た王牙は骨の翼を背中に戻しながら答えた。
シュルシュルと戻っていって気持ち悪かった。
「あれは 黙示録 だ…」
「黙示録……なにそれ、何のために、誰が?」
「神が、この世界を終わらせる為だ。終焉と神は呼んでたな」
「…終焉…なんで、私だけ…」
「それは、お前がこの世界の人間じゃないからだ…もしくは、人間ですらないかだな」
王牙の言葉の意味がわからない。
黙示録?神?世界を終わらせる?終焉?
自分がこの世界の人間じゃない?
もしくは、人間ですらない?
「ふざけないで!!」
「ふざけてなんてない…お前の気持ちは分かるつもりだ、俺もあいつに住んでる世界を終わらされたからな…」
「えっ…?」
「それと、さっきので分かったと思うが、俺は人間じゃない。まぁ、死神とドラゴンのハーフってとこだ」
「死神とドラゴン??」
「あぁ、さっきの翼はドラゴンの能力だな、うちのドラゴンは不完全だから、骨しかねぇ屍龍なんだけどな…」
虚言だと思いたいのが本心だが、先程の黙示録との戦いを見たから、虚言だとは思えない。
でも…
「…そんな事はどうでもいいの、私はこれからどうすれば…みんな死んじゃったし、多分この世界にはもう……誰も」
「俺と付いてくるか、死ぬかのどちらかだ」
「!?…あなたはどこへ行くの?」
「神と天使をぶっ殺しに行く、天界へ」
「神と天使…天界か…」
「あぁ、結局、その世界に行っても死ぬ可能性はあるし、決して強制はしない…」
「わかった、なら、行く、ここにいても死ぬんでしょ…」
「まぁ、そうだな」
「行くしか、無いじゃない」
「…死神王牙だ、しにがみの死神と王の牙で死神王牙」
「詩紙大和って偽名だったんだ…」
王牙が黒いカードを取り出して呪文的なのを唱えると、いかにもな感じの天界への門が開かれた。
「おし、行くぞ」
「う、うん、わかった」
門の向こうが全く見えない事を不安に思いながら、王牙について行く。
門に入った瞬間、宙に浮くような感覚があった。
そこからはあまり覚えていない。
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「おい!真理亜!起きろ」
目を覚ますと真っ先に王牙の顔が視界に入った。そして、徐々に目が慣れてくると、赤い空が見えた。
「空が赤い…」
「あぁ、場所がちょっとばかし悪かった…敵対してる奴らの陣地の中だ」
「あーー、ん?え?今なんて言ったの?まさかだけど、敵対してる奴らの陣地の中とか言わなかった?」
「全くその通りだ」
「ワープから出てくる場所って指定できたりは…」
「しない」
「マジですか…」
「あぁ、」
起き上がると、そこには凄まじい殺気を放った幼女がこちらを睨みつけていた。