番外編。魔女と悪魔の理由8
昼にギルドから男2人がやって来た。名前はジェイとザック、なんでもレイラを口説き落とすライバル同士らしい。え、ただ邪魔だったんじゃ…?とも思ったけどレイラに限ってそれは無いと信じたい。ただ言えるのは、きっとレイラは今頃仕事が捗っている事だろう…。
彼らの乗って来た船は屋根付きの小さく無い物だったがボロかった。この島に船は持ち込めないのを知って造船所からギリギリ乗れるものを譲って貰ったという。帰りは職人と帰るから壊してもいいと言っていたが中はまだギリギリ人が住めそうな環境だったため、密猟者含め全員で森の手前まで引き上げてとりあえず二人はそこで暮らしてもらう事になった。
「今日もお疲れ様でした。はい、これ夕飯ね。ジェイとザックもありがとう」
島へ帰ってきてから4日目。密猟者達は目の前にある魚と芋のスープを見て思っていたよりも待遇のいい労働に思考が付いていかないようだった。なんせ粗末といえど三食しっかり出てくる、その上2日に一度はジェイとザックに連れられて水浴びもさせてくれる。その為初日のような怒声を上げることは無かった。
「スタンリーさんお疲れ様です。予定通りスタンバっときます」
「えぇ、お願いね」
私の読みではそろそろ次の密猟者が来るはずだ。というか、そうじゃないと困る。円滑な作業のために職人達が来るまでに材料を少しでも多く集めたいのだ。
数人纏まって来るだろうと予想して昼の間にチェイス交え4人で計画を立てていた。基本は海岸にいる2人に捕まえてもらう予定だが、取り逃がした場合は森の中のチェイスの出番。私は…残念ながら出番なしだ。チェイスが許してくれなかった。
ジェイとザックに手を振り私たちは家へと戻った。彼等には家の詳細を教えていない。レイラは信用しているけど他人を易々と信用する訳にはいかない。それにチェイスと真に信頼し合わなければ結局はただの穴の空いた大木にしか見えないだろう。
「ねぇ…チェイスは何か武器とか持たないの?」
向かい合って夕飯の煮込みを食べながら聞く。今までチェイスが戦うところを見たことのない私は防御性ゼロな一枚の布に素手で戦う彼の姿を想像しただけで冷たい汗が流れそうになる。
「…持っても銛か」
「それ魚獲るやつじゃない…」
「銛は殺傷が容易くなるから出来るだけ持たないでいたい。…蔦と一番の武器は兄弟か、素手でも困っていないから大丈夫だ」
「兄弟は頼りになるけど…蔦って」
「丈夫で案外いい武器になる」
そう言って干し肉をワイルドに噛みちぎりながら咀嚼する彼を見て自分の物差しで計ってはいけないと自身に言い聞かせた。
「私も何か手伝いたいんだけど、本当に外に出たら駄目?」
昼の話し合いの時にも手伝うと言ったがチェイスだけでなくジェイとザックにまで即却下された。
「駄目」
「うーん、港作るの私の我儘みたいなもんだから何もしないのは気がひけるんだけど…」
「危ない」
チェイスに媚びるように見上げながらお願いしたが、例の鋭い瞳に縫い付けられて終わった。…チェイスがこれだけ駄目と言ったら中々覆らない。それに危険もあるが、なにより大した役に立たないだろうと思い直し早々に諦めることにした。ただ提案が一つ、一度下の物置に行き大きなバッグからある物を取り出した。
「チェイス、せめてこれ使えないかしら」
「これは?」
私が差し出した布の中身は一個が手のひらサイズの玉が3つ入っている。
「改良した秘密道具3よ」
「…あぁ、あの臭いのひどい」
初めて密猟者に出会い捕まえる為に使った秘密道具2。あれは主に野営する時に獣避けに使うもので非常にひどい臭いのするものだ。だけどこれは秘密道具3。
「あれは臭くて目にしみるやつだったんだけど、近くで使うと自滅しちゃうから…これは煙が出るようになってるの。目眩しくらいにはなるんじゃ無いかしら」
問題は火を付ける必要があること。離れた場所で火をつけて投げ込めば夜に出る霧のように視界が悪くなる。…ちょっとだけ煙が目にしみるのも問題かもしれない。
「なるほど、それなら使えそうだ」
一つ手に取り頷くチェイスを見て私は一気に嬉しくなった。
「良かった!!兄弟を狩った密猟者を捕まえる時に作ったの!日の目を見ることがなかったんだけど役に立てるなら嬉しいわ!」
詳しい説明と注意点だけ伝えて袋ごと渡す。チェイスはそれを受け取ると腰布に結びつけた。
「…もう行く?」
「ああ、そろそろ」
「気をつけて、無事に戻って来て」
「(コクン)」
もう日は暮れた。私には無事に事が済み、彼らが傷付かないよう祈るしか出来ない。




