照れ屋さんな恋人
長編を書いている途中の息抜き作品。
初めて僕が彼女と出逢ったのは僕が小学生のころだったと思う。
正直に言うと、初めて彼女と出逢った時、僕は彼女が嫌いだった。
何をする時も彼女は自分を主張してくる。
口酸っぱく、色濃く自らの真っ赤な頬を染めていた。
なんて図々しい女なのだろうと。僕は彼女に対し、少しでも慎ましくあってほしいと願ったぐらいだ。
だけど。
彼女との日々を積み重ねていくうちにそれが誤解などと知った。
彼女はちっとも図々しくなんてない。
むしろ甲斐甲斐しいのだ。
僕が食欲のない日には彼女は態度を変えない。いつ、どんな時でも僕のお腹を優しく満たしてくれて、寝不足でふらふらになっている日も瑞々しい態度で僕の心までも満たしてくれたのだ。
これをどう図々しいと言うのだろうか。
そんな彼女のことを知った僕は、当然のように恋をした。
デートもたくさんした。
パスタ屋さん。
中華料理屋さん。
ピザ屋さん。
彼女はいつも綺麗だった。
色んな服を着て、自らを着飾り、色々な顔を僕に見せてくれたのだ。そして、そんな色々な顔を見せてくれる彼女はどれだけ着飾っても、自らの信念は曲げない強い意志までも持っていたのだ。
確かに彼女は口酸っぱく、時には邪魔になる可能性を秘めている。
それでも。
それは彼女の優しさなのだと知っているから。僕はもうキミのことを嫌いになんてならない。この酸っぱさはキミの優しさで、真っ赤な顔は、ただの照れ屋さんなのだと、僕は知っている。
ふふ。
自然に笑みが零れてしまう。
僕は毎朝、彼女と寝起きの顔を合わせる。
僕が「おはよう」と言うと彼女は顔を真っ赤にして、それでも甲斐甲斐しく僕に応えてくれる。
それがとても誇りだった。
僕だけが知っている彼女の顔。
どんな男だってこんなに可愛い彼女は知らない。
そう思うだけで毎日が幸せだ。
毎日、彼女の可愛らしく瑞々しい態度で僕を迎えてくれる彼女との日々が僕の幸せ。
この幸せを分けてあげたい。
そんなことを思いつつ、僕は今日も彼女に声をかける。
「おはよう…………僕の、トマトちゃん」
トマトが美味しい季節ですね。
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