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第二話

Y・Hは授業の復讐でもしようかしら、と筆箱を開けた矢先であった。赤のインクが意思を持って飛び出してきた。


「きゃっ!?」


 Y・Hは何かの事故で、ボールペンのインクが噴射されてたのかと錯覚するが、どうもそうでないらしい。というもの、彼女の常識では考えられないが、そのインクは二足歩行をするカエルを描いたまま、机を机の上を起立していたのだから。


「えっええ!?」


 そのカエルは主に赤いインクで構成されていた。といっても、それには奥行きがない平面であり、まるで絵本に出て来るようなカエルのようだった。


「あ、あなたは、だぁれ?」


 おどおどしつつも、Y・Hがそう尋ねるが、カエルには日本語の理解があまりないらしい。質問の要点について察するほどの知能はあるが、それを発言をして答える事は出来ない様子だ。


 しかしカエルは、イギリスの名誉ある血筋の生まれなのか、ジェントルマンさながらに頭を下げるジェスチャーをした。Y・Hも女の子であるので、そういったヨーロッパ風情に対しては弱く、白馬の王子様がやってきたような夢心地に、赤いインクで出来たカエルが現れたことなど、どうでもよくなってしまった。


「かっこいいカエルさん……。何か欲しいものはある?」


 Y・Hがそういういと、カエルは筆箱の中からシャープペンシルの芯を取り出した。


「えっ? そんなもの? いいけど……」


 カエルはお辞儀をすると、そこから一本取り出し、むしゃむしゃとそれを咀嚼した。


「わっ! わぁあ!」


 するとカエルの体は少しつづ大きくなり、そして赤いインクでできていた彼の体に、黒鉛が混じった。


 もしかして、とY・Hが筆箱の中を漁ると、やはり赤いボールペンの中のインクは空だった。


「もしかしてこの子は、色を食べて成長するのかな?」


 カエルが幸せそうに黒を食べている顔が、Y・Hの目に映る。もちろん、カエルの味覚というのはどんな感覚なのだろう、とかそんな事を考えている訳ではない。いまY・Hが危惧にしていることは、黒を食べ過ぎると、カエルは真黒になる事だった。


そう、っと彼女はカエルのそばにあるシャープペンシルの容器をとりあげた。元々、ボールペンの中の赤インクの量が乏しかったらしい。カエルの体の三割くらいが黒になってしまった。


Y・Hはカエルの頭をなでると、カエルは優しく微笑んだ。そして彼女も、緊張などをすっかりと忘れ、カエルと共にほほ笑むのだ

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