第一話
Y・Hさん、おめでとうございます。
事情で祝いの機会が少ないのですが、それでも精いっぱい貴方を祝福したいと思います。この作品は自分でも、貴方の素晴らしい個性や、強さを表現しているとは思いませんし、作品自体の出来も誇る事はできません。もし祝福の場を濁すような真似をしていたら、申し訳ございません。
最後にもう一言、おめでとうございます。
若い時の苦労は買ってでもせよ、という諺がある。それについて悩みの多い少女、Y・Hはどう思うだろうか。
Y・Hは幼き頃からあがり症を患っていた。とくに最近は、それの影響か、それとも複雑な思春期に当然と起こるものにそれが拍車をかけただけなのか、失敗を人食い虎か何かの如く恐れ、小石に躓きそうになっただけでネガティブを起こし、まるで精神はアウシュビッツ収容所の荒み具合だった。
まさか彼女自身、幼年期からの付き合いであるそれに何も思わない訳ではない。彼女は一般的な若者に比べ、不自由が多いことだろう。
「う……うーん……」
今日も彼女は、自室で一人唸っていた。辛酸をなめる様な事態はいつものことだが、決してそれを美味に思う事も、慣れることもありえなかった。だから悩んでいるのだから。
「次の発表会……茶道部はいいとしても……」
Y・Hは二つの部活動に所属していた。
今回の悩みの種は、茶道部でないもう一つの部活に関係していた。それは活動の関係上、どうしても目立った役回りが多い。彼女は自分を変える為、そこに入部を決定したが、もしかしたら、自ら悩みの植物園に迷い込んだだけなのかもしれない。
とくに周囲に支えられて、本番を目指していたY・Hには、どうしても失敗は許されなかった。まだ当日に至るまでは時間の余裕があったが、しかしそんなものは些細なものでしかない。彼女は緊張や不安感などとは、友人たちよりも付き合いが長いのだから。
そんなY・Hだからこそ、カエル殿は目を付けたのかもしれない。
カエル殿は彼女の方へ飛びかかると、近くにある筆箱の中へと消えた。




