夜の電話
お題:蓋然性のある運命 制限時間:15分 文字数:472字
「あのさあ、俺、ユリちゃんが好き、なんだよね」
電話ごしの沈黙を破った言葉はどことなく湿っていて重みがあった。感づいているのだ。彼は私の思いをきっと感づいていて、牽制球を投げてきた。
「えー?もう、早く言ってくれたら良かったのに。色々協力するよー?」
「マジで?」
「マジマジ」
茶化して答えると彼はあからさまにホッとしていた。そう言われたらそう答えるしかないというのに、彼はやっぱりちょっと抜けている。
勢いで私の思いを伝えたらどうなっていたのかなんて、考えたくないけど考えてしまう。きっと彼は困ったように笑って、私を傷つけないように断るだろう。わかる。何年も一緒にいるからわかる。笑っている彼が目に浮かぶ。
私とユリちゃんとじゃ、全然違うもんね。
「あ、ごめん。そろそろ風呂入れって言われてるから」
「うん。遅くまでありがと」
「じゃあ、おやすみー。また明日」
「また明日!バイバイ」
心の中で3秒数えて切る。彼は自分から電話を切ろうとしないのを知っている。スマホをベッドに放り投げてクッションをぎゅっと抱きしめた。
「ばーか」




