白い花束を ※未完
お題:清い葬式 制限時間:15分 文字数:516字
全く君はずるい。
ある日を境に急に音信不通になり、家に行ってみたらもぬけの殻で、手当たり次第友人に聞いたけれど誰も知らなかった。君が無事かどうか不安で、ろくに寝られず食べられず憔悴していく僕を見かねた安西が吐かなければわからなかった。
それも君がこの世からいなくなってしまった後で。
念願叶って再会した彼女は小さな石の下に眠っているらしい。僕より背が小さい君だったけれどしゃがまなければ目も合わなくなってしまった。
海の見える場所という指定は、教室の窓から飽きもせず毎日海を眺めていた君らしい。持ってきた花束を置き、目を閉じて手を合わせる。
とても会いたかったよ。
隣に腰かけてぼーっと海を見る。君も見ているんだろう。
僕とケンカしたあの日、君の様子がずっとおかしかったのは、僕とさっさと別れるためだったらしい。売り言葉に買い言葉、短絡的な僕をよくわかっている君らしい。
誰にも気付かれないよう独り暮らしの家を引き払って、親しいやつらにだけ厳重に口止めして、携帯電話を解約して、次の日にはあの丘の上の大きな病院にいたなんて信じられない。
どうして何も言ってくれなかったんだよ、と呟いても答えは返ってこないで風に乗って消える。




