アリーの道 ※未完
お題:昼の勇者 制限時間:30分 文字数:799字
真っ昼間から公園のベンチに座ってぼーっと空を見上げていると、私ってば何してんだろなーなんて急に全てがバカバカしくなってくる。鞄から地図を取り出してベンチに寝転がり、王都への道のりを確認する。
幼い頃に両親が事故で亡くなり、私は叔母のユエさんに引き取られた。ユエさんは村でも有名な働き者で、女手ひとつで私を育ててくれた。しかし、ユエさんは病に犯された。効果的な薬はなく、空気の綺麗な田舎で療養することが決まった。ユエさんは一緒においでと言ってくれたが、私は田舎の親戚に嫌われていることを知っていたし、ユエさんにこれ以上迷惑をかけられないと思ったので、一人で暮らしていくと告げた。ユエさんは最初こそ反対だったが王都でバイトをしながら生活していくつもりであること、住む場所の見当はつけていることを告げると最終的には受け入れてくれた。
その日から二人で暮らしてきた小さな家の荷物を整理し、大きな荷物は馬車で頼み、必要最低限の荷物だけ持ったユエさんを駅まで見送った。
「体には気を付けて」
「ユエさんも、田舎でゆっくりして、早く元気になってね」
「落ち着いたら手紙を寄越してよ」
「ええ、もちろん」
「アリー」
涙目のユエさんが私をぎゅっと抱きしめた。ハキハキとしてあまり感情的にはならないユエさんには珍しいことで戸惑ったけれど、私もぎゅっと抱きしめた。ユエさんは姿が見えなくなるまでずっと汽車の窓から手を振ってくれていた。
帰り道、なんとなく公園によってベンチに座った。
そして、頭を抱えた。これからどうしようと。
バイトも住む場所も決まっていない。全てはユエさんを送り出すための嘘だったのだ。家は明日には引きはらわなければならない。つまり、明日の夜からは寝る場所を探さなければ必然的に野宿だ。
地図を見ると、王都までの距離は数十kmあるようだ。仮に馬車に乗ったとしても一日ではたどり着けないだろう。




