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同化する海
お題:赤い海 制限時間:15分 文字数:320字
ぷかぷか、ゆらゆら、ちゃぷちゃぷ。近くにハジメがいるけれど脱力しきった体は自由気ままに波に揺られ、どこへ行くかわからない。しかし、それが心地良かった。体の周りを波が跳ね、風が頬を撫で、太陽がぽかぽかと照らす。もこもこした雲とどこまでも青い空を眺めていると次第に心が空っぽになっていく。
今だけ全てを海に投げ出している。
「ツヅキー、生きてる?」
「生きてるよ、失敬な」
「だってツヅキったら死んだみたいに動かないんだもん」
浮き輪にばた足で寄ってきたハジメが私の顔をのぞきこんだ。あまりにも動かない私を心配したらしい。私は浮くのをやめてハジメの浮き輪の紐を掴む。
「引っ張ってあげる」
「やった」
泳げないハジメは嬉しそうに笑った。




