起こしたら怒るんだろうな ※未完
お題:来年の会話 制限時間:15分 文字数:551字
「さて、あと10分ぐらいで年を越す訳ですけれども」
「…」
「なんであなたはこういう大切なときに限って寝てしまうんですかね」
こたつに伏せって寝ている彼女の返事はない。23時頃まではちゃんと起きていた。年越し蕎麦を食べ終わってお腹いっぱいで眠くなってきたと言ったけれど、たった数分で寝てしまうとは思わなかった。年越しの瞬間は絶対起きているから!と意気込んでいたのはどこへやら。あまりにも気持ち良さそうに寝ているから起こすのが可哀想になって背中に毛布を被せた。それでも彼女は起きる気配がなく、僕は一人でテレビをぼーっと見続けた。そうして年越しまで10分を切った。
彼女はここぞという瞬間を逃してしまう人だ。二人で新幹線に乗ったときは富士山に差し掛かったところで彼女はぐっすり寝ていたし、テレビの野球中継で選手がサヨナラホームランを打ったときはトイレに行っていたりする。
「あと数分で年越しですよー」
何度か声をかけてみるものの彼女は、ううんと唸って身動ぎするだけだ。彼女は一度寝てしまうとちょっとやそっとじゃ起きない。
「だからコーヒーでも飲んどきゃ良かったのに」
テレビでは年越しのカウントダウンがスタート。
ご、よん、さん、に、いち、ぜろ。
「あけおめ」
僕の言葉は部屋に静かに響いた。




