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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
243/250

うわさのひと ※未完

お題:初めての修道女 制限時間:30分 文字数:1191字


町外れの古びて今は誰もいない修道院に修道女がやって来た。

そんな話を教えてくれたのは大人たちの噂話が大好きなマーちゃんだった。マーちゃんからそんな話を聞かされたのは、水曜日の学校の帰り道だった。


今回もマーちゃんは井戸端で大人たちの交わす世間話を聞き齧ったらしい。

家が井戸の近くにあると聞きたくなくても人の声が耳に入ってくる、とマーちゃんは言うけれど、明らかにマーちゃんは盗み聞きを楽しんでいる。何故って、誰かの話していた話をほとんど毎日僕に話して聞かせるからだ。


マーちゃんが実際に見たわけじゃないけれどマーちゃんの話によると、大人たちのうち何人かは確かに、修道服を着た女性が修道院を出入りするところを見たそうだ。

修道女は俯きがちで早足で通りすぎてしまうため、顔はよくわからないが、若い人には違いないのだとか。挨拶をしても返事がないし、ここら辺の人ではなさそうだとか。


町外れの修道院というのは何十年も前に建てられていて、僕らからすれば古びたデザインだけれど、大人たちからすれば芸術的で伝統的らしい。

やはり何十年も前には立派な修道士がたくさんいたそうだけれど、時代が過ぎるにつれて町は変わり、修道士は皆どこかへ行ってしまい、建物だけが取り残されてしまった。

修道院から歩いて数分のところにかつてあったという教会なんて、今じゃただの空き地だ。放課後の僕らの遊び場になっている。


「ねえ、修道士さんを見に行きましょうよ!」


マーちゃんは鼻息荒く言った。


「一人で行けば?」

「悪い人だったらどうするのよ!」


興味のない僕の答えにマーちゃんは苛立っていた。

修道服を着て悪さをするような人なんていないと思うよ、目立つし。という言葉は飲み込んだ。

修道院は僕の家と反対方向にあって、正直そこまで行って帰るのが心底面倒くさい。

しかし、マーちゃんの中では僕が修道院に行くことは既に決まっていて、うんとも言っていない僕の手を掴むと、修道院の方へ歩き始めた。こうなったマーちゃんには何を言っても無駄なので、僕は大人しくマーちゃんに手を引かれて歩いた。


修道院の前までやって来るとマーちゃんはぴたりと足を止めて、ようやく僕の手を離してくれた。


「すみませーん!」


マーちゃんは閉ざされた修道院の扉に向けて大きな声を出した。修道院にはインターホンらしきものが見当たらなかったので、声を張り上げるしかなかったのだ。


「どなたかいませんかー!」


しんと辺りが静まり返って風が吹き抜ける。修道院からは物音一つしない。


「留守なのかな」

「どこか出掛けてるのかもね。それか、修道女がいるなんて話自体が嘘」

「嘘じゃないよ」


その時。


「あのー」


僕らの後ろから声が聞こえた。


「何かご用ですか?」


振り向くとそこには修道女が右手に鎌を持って立っていた。っていた。


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