放課後 ※未完
お題:平和とダイエット 制限時間:1時間 文字数:1986字
「約束は守られるためにあるんじゃなくて、破られるためにあるんだよ。約束、って言われた瞬間からそれはもう約束でも何でもない。さようならって言われるのと一緒だ」
そんなことを言った友人はその時まだ小学三年生だった。友人と同じく小学一年生だった僕にはもちろん、と言ってはなんだけれど、そんな言葉を到底理解できるはずもなかった。父親や母親のみならず、周囲にいる人間たちは約束を破ったら僕を叱ったし、守ったら褒めてくれた。
約束とさようならが同じ、だなんて考え方は小学生の僕にはよくわからなかったけれど、はっきりしていることはあった。
「どんな時でも約束は守らなきゃいけないだろ。僕だってたまに約束を破っちゃうけどさ、こうしてお前と遊ぶっていう約束は守っているじゃん」
とか、たぶんその時はむきになってそんな風に言い返したと思う。幼い頭では約束の大切さについて適当な理屈を並べることもできない。もっとも、十年近く時が経てば当時の記憶なんてあやふやになってしまうけれど。
でも、そうだ。僕はあの時確かに、友人の言葉を聞いて怒りを覚えたはずだった。自分の中にある当たり前の決まりを覆そうとする友人に対して、かっと頭に血が上って憤ったはずだった。
そして、僕の言葉を聞いた友人は驚いたように目をみはって、それから。
「 」
何かをぽつりと呟いた。
***
「きりーつ、れーい」
日直のやや間延びした合図で「さようなら」と口々に呟く。ホームルームが終わったら掃除のために椅子を机の上にあげて、教室の後方まで下げる。
それが済むと、やれ掃除当番やれ部活やれ居残り勉強の友人たちに「じゃあな」と声をかけて、俺はリュックを背負って教室を出る。
家から近くて、偏差値にも無理がない公立高校を受験した最大の理由は部活が強制参加じゃないことだ。
駐輪場に向かい、自分の自転車の前かごに背負っていたリュックをのせる。ポケットから自転車の鍵を取り出し、後輪のロックを外そうとしたら「牧瀬ー!」と名前を呼ばれた。手を止めて振り向くと、漕いでいた自転車を停めて知原が片手を挙げた。
「今帰り?」
「おう」
「俺、これからバッセン行くけどお前はどう?」
知原はハンドルから手を離すとバットを振る真似をしてみせる。
知原は小さい頃から野球が好きだけど野球部には入ったことがないらしい。
小学校の頃から野球好きな父親と一緒にプロ野球中継を家でよく見ていて、顔を合わせるとどのチームが強いだのあの選手が調子いいだのといった話をしてくる。
本人は地元の少年野球チームに所属したこともないし、野球に関して経験したことと言ったらせいぜいキャッチボールやバッティングセンターぐらいだという。
俺は野球にあんまり詳しくないし打率がどうのペナントレースがどうのといった話を聞かされてもちんぷんかんぷんだけど、知原が楽しそうだから好きに話させている。俺が野球の話を嫌がらないからか、はたまた俺が帰宅部で時間に融通があると思っているからか、知原はよくキャッチボールやバッティングセンターに俺を誘ってくれる。
「いや、用事あるから帰るわ」
「お前いっつもそれだよなー」
そして、知原の誘いを断るのもこれで何度目になるのかわからない。一度目はともかく、二度目、三度目ともなればさすがに誘いづらくなって止めるだろうと思っていた当ては外れた。
今日も俺があっさりと断ると「じゃあ、また今度やろうな!」と言って知原は自転車を濃いで去っていった。
自転車のロックを外し、駐輪場から出して、校門を出る。
十月に入ってもまだまだ日差しは衰え知らずで、秋なんて見る影もなく夏が居座り続けている。平坦な道でも自転車を濃いでいると、むき出しになった頭や腕をじりじりと太陽が焦がす。額から汗がだらだらと落ちてくる。風もあたたかいし、熱を吸収した黒いズボンも熱い。
できるだけ街路樹や建物の日影を選んで走るようにしても、信号待ちをしている時などは上からの直射日光と下からの照り返しがきつい。
高校から家までは自転車で三十分ちょっとかかるけど、俺が今向かっている場所へは家からさらに十分ほど離れている。初めの頃は一旦家に帰って荷物を置いたり着替えたりしていたけれど、最近じゃ面倒になって学校から直接行っている。
同じような一戸建てがずらりと並んでいる住宅街の真ん中らへんにある市立図書館は、平日の午後でもそれなりに利用者がいる。お年寄りとか、俺よりもさらに年下の学生たちの溜まり場になっていて、駐輪場にも学校名の記されたシールが貼られている自転車が停まっている。
俺の用事があるのは図書館ではなく、図書館の二階にあるホールだ。階段を上ってホールに着くと、休憩スペースとしていくつかのテーブルや椅子が並び、俺の目的である人物が




