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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
235/250

絶望への入り口 ※未完

お題:地獄の王子 制限時間:30分 文字数:935字


目前で横たわる彼女は様変わりしていた。

淡いピンク色のふんわりとしたドレスはあちこちが破けて泥水を吸ったために萎んで汚れていた。丁寧に編み込まれていた髪は掴まれ振り乱されたせいでぼさぼさになり、被っていたティアラはどこかに消えてしまっていた。彼女の右足からは華奢なヒールの靴が脱げ、左足のヒールは無惨に折れていた。

顔からは血の気が引き、瞳孔は開ききり、頬には涙の跡が残り、唇は真っ青だった。

呼吸や脈を確かめるまでもなく、彼女は息絶えていた。世界で一番美しいとうたわれた姫は手の施しようもなく死んでいた。民衆から人形のように愛らしいと評されたプリンセスは骸に変わり果てた。


僕の、あと一歩が届かなかったせいで。


「さて、王子」


呆然と座り込んでいる僕の頭上から重苦しい声が降ってきて、はっと我に返った。いつの間にかこの災厄を生み出した彼が側まで近づいていたことに気付かないほど僕は大きなショックを受けていたようだ。

彼が僕の隣に立つと体格差は歴然だった。身長は二メートルを越えていて、甲冑などには収まるべくもない太さの腕や足は、おそらく姫の腰回りぐらいはあるだろう。

彼はぎょろぎょろと視線の定まらない大きな五つの目を僕の顔に近付けた。白目が血走っていて、瞳の色は揺らめくようにして虹色に光る。


「本来ならば君はここで終わりを迎えるはずだが」


彼の耳元まで裂けている大きな口が開く。骨すら噛み砕いてしまえそうな鋭い牙が生え揃っているのが見えて、だらりと涎がこぼれる。


「幸福にも、君には選択肢が与えられた」


彼は右手に持っていた剣を僕の前に突き立てた。王家では聖剣と呼ばれ、あらゆる魔物をうち払い、魔王を葬るただ一つの武器だと言われ、先祖代々受け継がれてきた宝だった。柄に嵌められた赤い石こそが魔王の力を削ぐと聞いていたが、その石は先ほど粉々に砕けてしまっていて今は窪みを残すだけだった。


「さて、君は死を選ぶか」


彼の瞳から目を離せない。魔法などかけられてもいないのに、悠長に喋っている今ならその瞳を貫くこともできるのに、後ろに飛び退いて距離をとることだってできるはずなのに、僕は動けない。

この魔王からどうしても逃れられない。


「それとも、」


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