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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
229/250

ティータイム ※未完

お題:失敗の怒り 制限時間:30分 文字数:1106字


部屋の扉がノックされ、書棚にはたきをかけていた手を止める。この時間帯には来訪客の予定はなかったはずだよな、と考えながら「はあい」と返事をしたら、なんだか間抜けな響きになってしまった。扉を開けて現れたのはマロニだった。


「こんにちは、パルン。今、お邪魔しても大丈夫かい?」

「やあやあ!君ならいつでも大歓迎だよ!」


僕が両手を広げるとマロニはにこにこして室内に入ってきた。小麦のような色合いのくせっ毛はぴょんぴょんと跳ね、いつも着ている堅苦しいスーツではなく、あたたかそうなニットとぴったりしたズボンを身につけていた。

マロニは片手に提げていた茶色い紙袋を僕にすっと差し出す。


「これ、良かったら食べて」

「開けてもいい?」

「もちろん」


マロニから紙袋を受けとり、机に置き、中に入っていたのは長方形の箱を取り出して蓋を開ける。


「わ、ロールケーキ!」

「サテンからの差し入れだよ。本人は首都から急な呼び出しをくらっちゃって、こっちに来られなくなっちゃったから代わりに僕が。パルンに会えなくなってとても残念そうにしていたよ」

「首都からというと、またぞろ師匠からの呼び出しかい? 」

「恐らくね」


僕がお茶を淹れている間に、マロニはロールケーキを二人分切り分けてくれて、ソファに向かい合って座る。マロニと会うのは実に一週間ぶりで積もる話はたくさんあったし、そうでなくとも学生時代からの友人との会話は簡単に途切れない。

和やかな歓談を続けていたら隣室からパリンと割れる音が聞こえてきて、臆病なマロニはびくりと肩を震わせた。


「だ、大丈夫かな?」

「あれはたぶん、思うような結果が出なくてビーカーなり試験管なりを床に投げつけたんだと思うよ」

「なんか、パルンは慣れてるね?前にもそんなことが?」

「しょっちゅうさ。今日はこれで五回目。最初の三日ぐらいはものすごく気になったんだけどね、慣れてくると『博士は今日も元気だな』とか『今日は回数が少ないから夜まで実験してそうだな』ぐらいにしか思わないよ」


はあ、とマロニは呆れたような頷いたような息を吐いた。

さらに、荒々しく隣室の扉が開閉する音が聞こえたかと思うと、今度は僕の部屋の扉が二回ノックされ、僕がどうぞと返事をする前に扉が開けられた。


「パルン、少し話が…。すまん、来客か」


眉をつり上げて不機嫌さを隠そうともしていない博士は、しかし僕の向かいに座っているマロニのびっくりした顔を見るとそのまま扉を閉めようとした。


「ああ、いや、大丈夫だよ。マロニは友人だから。休憩がてらロールケーキでも食べるかい?サテンの手作りだよ」

「それはご相伴に」


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