勇者選定の儀 ※未完
お題:ダイナミックな「うりゃぁ!」 制限時間:30分 文字数:1020字
勇者選定の儀は実に単純明快なものとなっている。宮廷魔術師により王都の北に位置する希望の丘に突き立てられた勇者の剣を引き抜けた者こそが名誉ある勇者として選ばれ、魔王討伐の旅へと送り出される。
この一年に一回行なわれる勇者選定の儀には世界中から我こそはという意気軒昂な者たちがわらわらと集まってきて、毎度お祭り騒ぎのような様相で儀式が執り行われる。見届け人は王宮から派遣される魔族防衛部の兵士たちと、剣を突き立てた張本人である宮廷魔術師、それから王都の住人や観光客などの野次馬たちだ。
勇者選定の儀は立候補制であり、成人を迎えたばかりの若者が通過儀礼や試験として受けることが一般的になりつつあるが、毎年の風物詩として挑戦する者も少なくない。性別、年齢、出身はすべて不問。年によって勇者に選ばれる人数にばらつきはあるものの、何百人、何千人と挑んでも最終的に剣を抜いた者は片手で数えられるぐらいに落ち着く。
今年もまた勇者選定の日がやってきた。夜明け前の薄暗い希望の丘には既に人だかりができている。丘の頂上には剣の柄が飛び出ており、鍔のすぐ近くまで深々と刺さっていた。その側には宮廷魔術師である男性がゆったりとしたローブの袖の下で固く腕を組み、しかめ面をして立っていた。宮廷魔術師の後ろに一人、それから丘をぐるりと囲むように数人の兵士たちが立ち並び、野次馬たちは兵士の後ろからざわざわと囁きながら儀式を見守っていた。
一番最初に儀式に挑んだのは若く凛々しい男だった。筋骨粒々としていて勇者よりも戦士のようないかつめしい男は静かに剣の前に立つと、屈んで右手を伸ばし、むんずと柄を掴んで力任せに引き抜こうとした。しかし、剣はびくともしなかった。男が柄を両手で握り、両足で地面を踏ん張っても剣はうんともすんとも言わなかった。男は肩を落として丘を去っていく。
これからこんな光景が一日中続くのを知っている野次馬たちは、誰が勇者として剣を引き抜けるのかを賭けの対象にしており、あちこちで「畜生」だの「次だ、次!」だのと悔しげな声と少額の金が飛び交っている。
男の次は、小さな女の子が現れた。まだ成人もしていないであろう、少女がきりりとした表情で剣を前に立っていた。少女は宮廷魔術師をぎろりと睨み付けたかと思うと両手を柄にかけた。
「うりゃぁ!」
いささか気の抜けてしまう掛け声とともに、彼女はめいっぱい力を込めた。するっと、剣が抜けて彼女は尻餅をついた




