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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
222/250

ツユクサの影 ※未完

お題:平和とデマ 制限時間:30分 文字数:993字


うっすらとレンズの曇っているゴーグルをかけていても、その巨大な建造物は気になった。私は自転車のペダルを漕いでいた足を地面につけて立ち止まり、ゴーグルを首元へ外す。途端に飛び込んでくる眩しい光に目をぱちぱちとさせた後、建造物を観察する。


それは確か、この街で有名なタワーのはずだった。タワーといっても特別な意匠を凝らしたわけでなく、外観はそこいらのビルと同様にほぼ長方形、壁の色は目立たないグレー、唯一窓だけが六角形と珍しい形だった。ハニカムタワーと呼ばれたそのタワーは街のシンボルとして何かと話題になった。街で一番高い建物で、展望台からの見晴らしは良かった。


もっとも現在、ハニカムタワーは無惨にも真ん中の辺りでぼっきりと折れてしまっている。大きな怪獣に上半分だけぱっくりと食べられたかのような有り様だ。

ハニカムタワーがこの様子ならば、タワーの足元や周辺の街も例の被害は免れていないだろう。


「はぁ」


溜め息が溢れたのはここまで自転車を漕ぎ続けていた疲れからだけではない。

私は自転車の荷台にくくりつけている荷物から水筒を取り出して水を飲んだ。水筒をしまって再びゴーグルを装着すると自転車のペダルにぐっと力を入れて先へ進む。

ひとまずは、ハニカムタワーを目指してみようと決めて。


街に入っても人は一人も見かけなかった。街は混乱した時のまま保存されているのかと錯覚するほど、何も手をつけられていなかった。ビルは崩壊していて、事故を起こした車はひしゃげたまま、木々は根本から倒れ、ひびの入った道路は砂や瓦礫やガラスが散らばっている。風が吹くと色んなものが舞い上がって視界が悪くなる。

私は帽子を深く被りなおし、マスクで鼻と口が覆われていることを確認し、息苦しくならないよう自転車をゆっくりと漕いだ。ここへ至るまでに散々見てきた光景だからか面白味がないと思ってしまって、それが自分の胸をひどく重たくさせた。

結局、ハニカムタワーに辿り着くまで誰にも会わなかった。


ハニカムタワーは窓ガラスが砕けていて、正しく廃墟と言っていい姿だった。

一階の外壁にはべたべたと紙が貼られていた。崩壊の危険とか立ち入り禁止とか人探しとか避難所の案内とか。それらをざっと目で追っていると一枚違った内容のものを見つけた。


「身元不明の少女保護」


私はテープで留められていたその紙を剥ぎ取った。


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