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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
220/250

ひらりひらり ※未完

お題:斬新な妹 制限時間:30分 文字数:1070字


「他人の心を開きたくば、まず己の心を開くべし。自分の話をした後で相手の話を聞くべきなのでしょう。不躾に詮索ばかりする人間は好まれませんが、自分語りをしない人間もまた不信感を伴いますからね。まずは自分のありのままを打ち明けたあなたの行為は正しいと言えるでしょう」


そう言った、はーちゃんは、地面に積もっている落ち葉を素手でかき分けていく。黄色に染まったイチョウ、真っ赤なモミジぐらいなら僕でも知っているけれど、虫食いのある細長い葉や茶色っぽく枯れた葉の名前はわからない。

一面に広がっている落ち葉の中から、はーちゃんは特に赤々としたモミジを一枚手にとって、茎の部分を親指と人指し指で摘まんだ。


「と言ったところで、私は、あなたと仲良くなりたいとは思っていません。ですから私は私自身の話をしません。しかし、あなたと仲が悪くなりたいとも思っていません。長く同じ時間を過ごすことになる人とはそれなりの距離感を保っていたいのです」


はーちゃんは茎を摘まんでいる指をこすり合わせてくるくるとモミジを回転させている。

「距離感」と口の中で繰り返した僕は、落ち葉の中から目についた一枚を拾う。丸くてつやつやしていて黄色く染まっている葉っぱを目の高さまで掲げてみた。葉脈が端から端へとまっすぐに走っている。


「そう、距離感。私はキルシュさんのように初対面の人とすぐに打ち解けられるようなタイプではありません。かといって、真夜中さんのように他人を完全に拒絶するタイプでもありません」


はーちゃんはさくさくと落ち葉を踏み鳴らして僕のほうへと歩いてくる。僕の前までやってくると、はーちゃんはぴたりと足を止めた。


「他人に全てをさらけ出すには勇気が必要ですが、それ以上に必要なものがあります。何だかわかりますか?」


はーちゃんはモミジを僕に突きつけた。モミジは散っているというのに端までピンとしていて、赤を通り越した紅色に近いほど濃く染まっていた。しかし、中央には虫食いの痕があって、全てを台無しにしているようにも見えた。


「何だろう。勇気以外に何が必要?」


僕が手を伸ばすと、はーちゃんは僕の手にモミジを乗せた。


「信頼です」


「信頼」と口の中で繰り返して、僕は先ほど拾った黄色葉っぱと、はーちゃんから貰ったモミジを並べてみる。同じ落ち葉なのに、大きさも形も色も何一つとして同じじゃない。

はーちゃんは「信頼です」ともう一度言って、くるりと僕に背を向けた。


「打ち明ける人、受け止める人、両方に信頼がなければ真実なんて到底語れません」


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