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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
215/250

レイニー ※未完

お題:求めていたのはオチ 制限時間:1時間 文字数:1385字


AM7:26


家を出てすぐの道路のど真ん中に蛙がいた。昨夜から降り続いている雨のせいで生息地から離れたのだろう、緑の少ない住宅街で蛙を見つけたのは何年ぶりかだった。蛙は私のことなどお構いなく呑気にゲコゲコと鳴いている。梅雨らしいと言えばらしい光景だ。しかし、このまま道路の真ん中にい続ければいつかは車に引かれてしまうかもしれない。

私は蛙が逃げないようにその場でそっとしゃがみ、肩と顔とで傘の柄を挟んで固定した。自由になった両手で蛙を捕まえた。てっきり跳び跳ねて逃げまわるかと思いきや、蛙はあっさりと私の両手の空間におさまった。小学生の頃はもっと捕まえるのに苦労したはずだったような。

立ち上がって道路脇に咲いている紫陽花の株の近くで閉じていた両手を開く。すぐに飛び出すかと思ったけれど、蛙は大人しかった。蛙は小さな足をぺたぺたと動かして、私の方に向き直った。真ん丸の黒い目が私を見ていた。

と、次の瞬間には蛙は勢いよく私の手からジャンプして近くの紫陽花の葉に着地した。そのままピョンピョンと跳び跳ねて紫陽花の葉を揺らし、どこかへと姿を消した。

私はそれから通学路を歩きはじめた。


AM8:24


「え、あんた何でずぶ濡れなの?」

その素っ頓狂な舞呉さんの声はやけに教室に響き、室内にいる生徒みんなが舞呉さんの方へ向いたと思う。舞呉さんがいた教室後方の入り口には全身ずぶ濡れの帳くんが立っていた。肌に張り付いた髪からは滴がしたたり落ち、制服もすっかり色が変わっていた。しかし彼はこんな時でもトレードマークのマスクをしていた。もちろんマスクも濡れている。

「朝から雨だったし、傘は当然さしてきて…壊れた?ちょっと待って、タオル貸すから。あ、ぐちゃぐちゃのままで教室に入らないで」

舞呉さんは帳くんのために自分のロッカーを開けた。帳くんの元へ岐路くんが行く。

「お前、体操服とかロッカーに置いてる?」

ぶんぶんと左右に首を振った帳くんに対し、「だよなあ」と岐路くんは呆れた声を出した。

「俺の貸してやるからトイレかどっかで着替えてこい」

岐路くんもまた自分のロッカーへと向かい、彼と入れ替わりに舞呉さんが手に持ったタオルを帳くんに渡した。帳くんはそれで頭をごしごし拭く。そして岐路くんが自分のジャージを帳くんに手渡した。

「先生には言っとくから」

胸元に“岐路”と記されたジャージ姿の帳くんがびしょ濡れの制服片手に教室へ戻ってきたのはHRが終わる直前だった。


AM12:07


昼休みに入り、私は自分の席でお弁当箱を開けた。お箸を持って、さあ今日は何から食べようかなと逡巡したその時、「鍵屋さん」と声をかけられた。クラスメイトの猫柳さんが目の前に立っていた。

失礼だけれど率直に何の用だろうと思った。猫柳さんはクラスメイトとは言っても私は彼女とまともに話したことがない。

猫柳さんは「あの」と少し言い淀みながら、右手のひらを差し出した。

「これ、鍵屋さんの、じゃないかな」

彼女の手のひらにはメンダコのストラップがあった。それは私がスマホにつけていたけれど、昨日無くしてしまったものだった。

「あ、本当だ。どこで拾ったの?」

「昨日、教室の掃除をしてた時、たまたま」

「ありがとう。私のだってよく分かったね」

「うん、ずっと変わったストラップだなって思ってたから」


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