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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
212/250

傷 ※未完

お題:傷だらけの窓 制限時間:30分 文字数:996字


彼女はじっと僕を睨み付けた。


「あいつらの話してることは全部嘘だ。わかってんだろ」


彼女にしてはずいぶん乱暴な言葉だと驚いていたら、彼女は左目からつうっと涙をこぼした。

きっぱりと言い切った言葉、ピンと伸びた背筋、握りしめた手、真っ直ぐに前を見据えた瞳。どれもこれもが眩しくて力強いのに、彼女の頬をつたって顎から制服の胸元へ落ちた滴だけがこの場に相応しくなかった。


僕は常々彼女を意思の強い人だと思っていた。同級生の誰からも見向きされず、そこに居ても居なくても代わり映えのない扱いをされていながら、彼女は少しも自分を曲げなかった。教室では多数の意見が優先されるというのに、クラスメイトたちが正しいと思えなかったのは、彼女が折れずに堂々としていたからだ。

クラスに馴染めずとも凛としていられる彼女は僕より強いと思っていた。少なくとも彼女と泣くことがイコールで結ばれるなんて想像だにしなかった。


彼女は制服の袖で濡れた頬をぐいっと拭った。そこには、さして親しくもない同級生の前で泣いてしまった恥ずかしさなんて一ミリも含まれていなかった。


「私、あんたは違うと思ってた」


違うって何が、と尋ねた僕の声はいつもより上ずっていた。彼女はそんなことを気にも止めず、涙を流したばかりの目で真っ直ぐに僕を見つめながら話す。瞳はもう、少しも潤んでいない。


「あんたは人から聞いた話を本人に確かめもせずに話すことはなかった。誰かを褒める言葉でも誰かを貶す言葉でも、あんたは自分が目撃していなかったら口にはしなかった」


彼女はよく人のことを見ているんだ、と初めて気づいた。クラスメイトが彼女を無視するのだから、きっと彼女もクラスメイトを無視しているのだろうとばかり思っていた。

一介の、今までほとんど話したことがないクラスメイトである僕が何を信条にして話しているかなんて、そんなの僕と仲の良いやつらでさえ知らないだろうに。

感心している僕をよそに彼女は、だから、とそこで言葉を詰まらせた。僕は彼女の言葉を待たず先に答えを言ってしまった。


「僕はクラスメイトたちとは君を見る目が違うってこと、か」

「そうだよ。そう思ってた。ついさっきまで」


彼女はどんどん語気を荒げてほとんど僕を詰っていた。心外だった。


「誤解だよ」

「誤解じゃない。少なくともさっき、あんたが軽はずみに言った言葉は、」


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