はじめまして、僕は ※未完
お題:もしかして出会い 制限時間:1時間 文字数:1637字
「着いたよ」
ミドリさんは駐車場に車を停めて言った。僕はシートベルトを外して車を降りる。
すぐ目の前には緑色の屋根と白い壁が鮮やかな洋風の建物があった。三階建てで横に長く、外観はちょっとおしゃれなホテルにも見える。
「きれいでしょ。外は数年前に新しく塗り直してるんだよ。中に入ったらびっくりするかもね。ボロいから」
運転席から降りたミドリさんは大きく伸びをして言った。休憩を挟まずに二時間ばかり運転しつづけていたわけだけれど、ミドリさんは運転中もよく喋ったし今だって少しも疲れを感じさせない。トランクを開けて僕の大きなボストンバックと重たいスーツケースを取り出した。
僕がボストンバックの持ち手を肩にかけるとミドリさんは当然のようにスーツケースの柄を持った。
「行こうか」
がらがらとミドリさんがスーツケースを引きずる音がやけに響いて聞こえる。
建物の玄関まで行くとミドリさんはインターホンを鳴らした。ピンポンと間抜けな音が鳴って、少し待ったものの応答がない。「あれ?」とミドリさんが首を傾げてもう一度インターホンを鳴らすと、今度は数秒ほどで応答があった。
「はーい」
女の子の声。
「こんにちは、ミドリです」
「ああ、ミドリさん。おつかれさまです。すぐに玄関開けますね」
「よろしく」
インターホンがぷつりと切れる。ミドリさんとは違っておっとりした話し方をする人だった。
「ちょっと時間がかかるよ。ここは玄関までが遠いから」
そうミドリさんが言ったとおり、木製の扉につけられた鍵が内側から開かれるのには時間がかかった。
「お待たせしました、ミドリさん」
そう言いながら扉を押しあけて現れたのはショートヘアーの女の子だった。胸ポケットに林檎の絵が描かれたTシャツと側面にストライプが二本入った短パンというラフな姿だ。インターホンに出てくれた人とは違って彼女はハキハキと話す。
「いやいや。お出迎えありがとね。カイリさんは?」
「今ちょっと出かけてて。すぐに帰ってくるので中で待ってもらえますか」
「うん、大丈夫。今日は他に用事ないからね」
「良かった。どうぞあがってください」
「じゃ、遠慮なく」
女の子に続いてスーツケースを持ち上げたミドリさんが玄関に入り、その後に僕も続く。
玄関の床は四角いタイルが敷き詰められていて、その上にたくさんの靴が列をなして並べられていた。一番多いのは靴紐のあるスニーカーだったけれどメーカーやデザインは様々だ。他にも女性もののパンプスや、泥のついた長靴、ブーツなどが混ざっている。
ミドリさんが靴を脱いで揃えた隣に、僕は履いていた紺色のスニーカーを脱いだ。
「ごめんな。ここスリッパとかないんだ」
「あ、いえ」
ショートヘアーの彼女は申し訳なさそうに僕に言うと先へ歩いていく。
玄関からは真っ直ぐに長い廊下が続いていて、僕らはホテルのように絨毯の敷かれた廊下を歩いた。左右にはたくさんの扉が並び、扉にはそれぞれ四角いネームプレートが下げられていた。ひらがなやカタカナで表記されているのは何故か食べ物や色の名前などだった。
右側の廊下の途中に階段があったけれどショートヘアーの彼女は素通りし、結局突き当たりの両開きの扉まで歩いた。この扉にもまたネームプレートが下げられていて「広間」と書かれていた。
ショートヘアーの彼女が扉を開けてミドリさんと僕も室内に入る。
中には大きなテーブルとテーブルを囲むように椅子がずらりと並んでいた。
「いらっしゃい」
そこで出迎えてくれたのはおっとりした喋り方の女の子で、おそらく彼女が先ほどインターホンに出てくれた人なのだろうと分かった。髪は肩に届かないぐらいの茶色で、袖のふんわりしたブラウスとロングスカートを着ていて、まったく僕が想像したとおりの人だった。
「二人とも座って座って」
おっとりした彼女に促されて、僕とミドリさんは近くの椅子に座った。




