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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
205/250

アトリエ ※未完

お題:殺された美術館 制限時間:1時間 文字数:904字


「誰がやったのよ!」


ちょうど向かっていたアトリエからつんざくような叫びが聞こえた。隣を歩いていたミナイが僕のほうを向いて、すわ何事だろうかと首を傾げる。聞こえた声はフレルさんのものだった。

フレルさんは変人ばかりが揃うアトリエの中でももっとも常識的かつ温和な人で、いつもニコニコとしている。感情的になって怒った姿は一度も見たことがない。そんな彼女が廊下にまで聞こえるほどヒステリックに叫んだとあらば、ただ事ではない。


僕とミナイは困惑しながらも「どうしたんですか?」とアトリエの扉を開けた。部屋の中央に集まっていたフレルさん、オキさん、ネムさん、アルクさんが僕らを見た。フレルさんの顔は青ざめ、オキさんは困った様子で腕を組み、ネムさんは不安そうに眉を下げ、アルクさんは口をへの字に曲げていた。彼らが浮かない顔をしている原因はフレルさんの隣にある絵のせいだとすぐに分かった。

フレルさんの隣にはイーゼルが置かれ、その上にフレルさんが昨日まで描いていたキャンバスが立てかけられていた。青くほの暗い海の中で一匹のクラゲが悠々と泳いでいる絵で、昨日と違うところが一ヶ所。キャンバスがずたずたに引き裂かれていた。


「ミナイ、チル。おはよう」

「おはようございます」


ピリピリした空気に構わず僕らに声をかけてくれたのはオキさんだった。オキさんの隣へ行くと、オキさんは顔を寄せて小さな声で状況を説明してくれた。


「フレルは昨日、この絵を描き上げて帰った。そうして今朝来たら絵がこの有り様でここに置かれていたの」

「誰が、一体」

「それが分からないから私は怒ってるのよ」


フレルさんがじろりとミナイを睨み、ミナイは肩をすくめた。普段怒らない人が怒るとめちゃくちゃ怖い。


「アトリエに出入りする人は決まってる。この中の誰かがやったことは間違いないわ」


フレルさんが怒りや悲しみを押し殺し、冷静に話そうとしているのは震える声で分かった。


「何か鋭いもので切られてる感じですね」

「ああ、それはたぶん」


言いながらオキさんが指差したのは僕らが作業でよく使うテーブルだった。その上にカッターが置かれている。


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